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北陸文化

【美術】滞在して制作 人つなぐ 金沢在住「塩の芸術家」山本基さん

今秋、3会場で展示

造り酒屋の建物の2階に展開する作品「たゆたう庭」=滋賀県近江八幡市で(いずれも山本基さん提供)

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 「塩の芸術家」として世界に活躍の場を広げている金沢市在住の山本基(もとい)さん(50)がこの秋、国内各地であるアート・プロジェクトのうち三会場で作品を制作、展示する。滋賀県近江八幡市の「国際芸術祭BIWAKOビエンナーレ」(開催中、十一月六日まで)では造り酒屋跡の二階で、瀬戸内国際芸術祭(十月八日〜十一月六日)では香川県高見島の使われなくなった古い邸宅での制作。今月末は東京で「六本木アートナイト」にも出展する。 (松岡等)

BIWAKOビエンナーレ(開催中−11月6日)

瀬戸内国際芸術祭(8日−11月6日)

六本木アートナイト(21日−23日)

 「(美術館のような)白い箱の中よりもやっていておもしろい」。BIWAKOと瀬戸内ではともに遺物となった建物を会場に、塩で泡のような小さな輪を無数に描き、星雲を思わせる巨大な渦をつくる「たゆたう庭」のシリーズを展示する。清めや浄化に使われ、死のイメージと結び付く塩を素材に、再生や永遠のシンボルでもある渦を描くスタイルは変わらない。

 約二十年にわたり「亡くなった妹の思い出に出会うため」に作品を作り続けてきた。「制作は忘れてしまいそうな過去を覚えておくための仕掛け」。会場となっている歴史を背負った場所では「自分が過去に思いをはせるために、懐かしい風景が助けになった」と話す。

邸宅に残された遺物を生かした展示=香川県多度津町の高見島で

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 高見島は偶然にも、岡山、香川両県の西部に位置する塩飽(しわく)諸島にある。出身の広島県尾道市に近く、島々が浮かび、ゆったりと流れる時間は「海辺にあった実家から見る風景と同じ」。小道で出会うハンミョウが少年時代を思い出させたという。

 会場は、高見島の出身でかつて米・シアトルで事業に成功した人物が建てた邸宅の二階。そこに残っていた古い家具やトランク、昭和初期のレコード、ワイングラス、住民のシアトル時代の色あせた写真などを塩の泡が取り囲み、「まるでそこにスポットが当たるよう」に演出。見る人はそれぞれに自分の過去を静かによみがえらせるのではないか。

 各地でビエンナーレ、トリエンナーレが開かれ、「アートを通じた町おこし」がブーム。「アートの社会貢献」なども語られることが多い。だが山本さんは「『社会のために』ということは一切考えていない。自分のためにやっている」と言い切る。

作品を制作する山本基さん=滋賀県近江八幡市で

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 それでも制作に日数を要する山本さんの作品づくりは常に「アーティスト・イン・レジデンス」だとも言える。近江八幡市には七日間の滞在。準備にかかわるスタッフやボランティア、観客との交流で「一生の友ができる。人と人との関係が自分の作品を通してできることがうれしい」。

 作品の塩は、最終日に「海に還(かえ)るプロジェクト」として集まった人によって海に戻される。「スタイルを変えようという気持ちはない。変えたくなる時は自然に来るだろうから。期間が来たら無くなってしまうという体験があるからこそ、僕自身はやりたいことに近づけている」と語る。

 六本木では二十一日〜二十三日、商業ビルの一角に「迷路」のシリーズを出現させる。BIWAKOや瀬戸内とは異なり、多くの人が行き交う都心で、山本さんの作品がどう受け止められるかも楽しみだ。

 

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