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北陸文化

【映画】「野火」塚本晋也監督 「この時代にぶつけたかった」

「この時代にぶつけたかった」と語る塚本晋也監督=富山市のフォルツァ総曲輪で

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富山、金沢 25日から上映

 太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台に戦争の極限状況をテーマにした塚本晋也監督(55)の映画「野火」が25日公開される。不条理な軍隊から熱帯の大自然に放り出され、激しい戦闘と人肉を口にするほどの壮絶な飢えで人間性を失っていく兵士たちの悲惨。戦後70年の節目に安保法制が議論される中、塚本監督は作品を「この時代にぶつけたかった」と語る。

 10代で大岡昇平さんの原作を読み「いつか映画化したいと思い続けてきた」。当初は「30代から『都市と人間』『テクノロジーと人間』をテーマにしてきた。『野火』は、原作の圧倒的な自然描写から『大自然の中の人間』を自分では求めていた」という。

 日本を代表するような俳優陣での大作を目指し、アニメーションによる映画化も模索したが、結果的に「ほとんど自主映画」になり、父親の残した遺産をつぎ込んだ。そう背中を押したのは、「戦争が間近に迫る雰囲気が感じられ、もしかしたらもう、こうした戦争映画が撮れなくなるんではないか」という危機感からだ。

 かつて共演し親交のあるリリー・フランキーさんや、自らの映画で起用して俳優としても飛躍したドラマー中村達也さん(富山市出身)ら一部を除けば、ほとんどがボランティア。肺を病んで部隊から放り出された一等兵を自ら演じ、その目が見る、泥にまみれ、銃弾を受けて血が噴き出し、うじが湧き、腐り、骨となっていく兵士たちをこれでもかと描いた。

 2005年にフィリピンの戦争体験者にインタビューし、遺骨収集に同行。「話を聞いて感じたのは人は死ぬとただの物になるという現実感。写真も見せていただいたが、そこには、ある種の映画やドラマにある『死ぬことの美学』は全くなかった」

 ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品されるなど海外の映画祭での上映での評価は「賛否両論。暴力的なシーンにトゥー・マッチ(やり過ぎ)という声はあった」。自らは「過剰さによるエンターテインメントは『あり』だと思っている。今回はその過剰さで戦争を描いた」という。

 「作品として政治的テーマも、押しつけるような思想もないが、これを作らなきゃいけなかったのは、政治が露骨に戦争へ向かおうとしてるから」

 戦場は美化するような場所ではない。そして、その現実から目を背けてはならない。作品はそんな強烈なメッセージを発している。 (松岡等)

 金沢市のシネモンド、富山市のフォルツァ総曲輪で25日から上映。

 

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