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線の勢い 息をのむ(2017年10月13日 中日新聞朝刊)

和歌山県無量寺の部屋を再現し展示された虎図襖(左)と龍図襖

和歌山県無量寺の部屋を再現し展示された虎図襖(左)と龍図襖

「白象黒牛図屏風」の迫力にびっくり

「白象黒牛図屏風」の迫力にびっくり

 ふわふわの丸っこい子犬がじゃれ合う「薔薇蝶狗子図(ばらちょうくしず)」。ああ、かわいい。「山姥(やまんば)図」の前では、髪を振り乱した山姥にギョロリとにらまれる。こわい! 画面からはみ出すほど大きく牛が描かれた「牛図」には、ぎょっとさせられる。

 名古屋・栄の愛知県美術館で開催中の「長沢芦雪(ろせつ)展 京(みやこ)のエンターテイナー」(中日新聞社など主催)では、さまざまな感情を揺さぶられる。芦雪って一体、どんな人だったのだろう。

 残念ながら、詳しくは分からない。江戸時代の半ば1754年に生まれ、京で円山応挙に入門。46歳で急死したが、その個性と画力は1000人を超えたという応挙門下でも抜きんでている。

 
作品に顔を近づける親子連れ

作品に顔を近づける親子連れ

 本州最南端の地・和歌山県串本町の無量寺に残る代表作が「龍図襖(りゅうずふすま)」と「虎図襖」。応挙の下で実力をつけた33歳の芦雪が南紀を1人で訪れ、思いのままに描いた巨大な虎と龍。勢いある線の一本一本に開放感や充実感、師をも超える絵師になろうという決意を感じる。

 まだまだ謎が多い絵師だが、会場に並ぶ約80点の絵ににじむ豊かな喜怒哀楽を味わううち、芦雪その人と対面しているような不思議な気持ちになってくる。

 11月19日まで。月曜休館。1般1400円、高校・大学生1100円、中学生以下は無料。問い合わせは愛知県美術館=電052(971)5511=へ。

 写真・北村彰 文・川原田喜子

芦雪のあでやかな美人図など個性的な絵に見入る来場者も=いずれも愛知県美術館で

芦雪のあでやかな美人図など個性的な絵に見入る来場者も=いずれも愛知県美術館で