クロード・モネ≪睡蓮≫(部分)1906年、油彩・カンヴァス、吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)

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<2>ヴァランジュヴィルの風景 吸い込まれて分かる真価

2018年5月18日 中日新聞朝刊
1882年、油彩・キャンバス、ポーラ美術館蔵

1882年、油彩・キャンバス、ポーラ美術館蔵

 「妙に頼りない『木の間越し』の構図」。それが、この絵の最初の印象だった。並木越しに富士山を描いたりする北斎流浮世絵に影響を受けた作品で、ならばこんなひょろひょろの木々を配さなくても、と思ったのだ。

 しかし、眺めているうちに、モネの狙いが北斎的な意匠の面白さではなく、夏の避暑地の光や風、海の香りをありありと感じさせることにあるのだと気づき、そうなると絵に吸い込まれ、美しい海岸の断崖に立っているような気分にさせられた。モネの絵は、やはり吸い込まれてみないと真価が分からない、とあらためて思ったのである。(大岡玲=東京経済大教授・作家)

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