クロード・モネ≪睡蓮≫(部分)1906年、油彩・カンヴァス、吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)

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睡蓮から生まれる永遠

2018年4月15日 中日新聞朝刊

 印象派の巨匠として知られるクロード・モネが後世の芸術家たちに与えた影響を探る「モネ それからの100年」展(中日新聞社など主催)が25日、名古屋・伏見の市美術館で開幕する。初期の風景画から晩年を代表するモチーフである睡蓮(すいれん)を描いた作品など、モネの絵画26点に、関連性が認められる現代美術作品を加えた計89点を展示。地域や時代を超えて愛され続けるモネの魅力を検証する。モネに関する展覧会を手がけるのは今回が4度目となる、深谷克典・同館副館長に展覧会の趣旨を紹介してもらった。

クロード・モネ 「睡蓮」 1906年、油彩・キャンバス、吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)

クロード・モネ 「睡蓮」 1906年、油彩・キャンバス、吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)


福田美蘭 「モネの睡蓮」

 本歌取りは、オリジナルへの敬意と理解があって初めて価値を持つ。大原美術館所蔵の「睡蓮」に美術館の建物が映り込むこの作品は、モネと美術館双方への作者の敬意が重ねられている。
福田美蘭 「モネの睡蓮」 2002年、アクリル・パネルに貼ったキャンバス・額縁(既製品)、大原美術館


クロード・モネ 「ヴィレの風景」(日本初公開)

クロード・モネ 「ヴィレの風景」(日本初公開) 1883年、油彩・キャンバス、個人蔵
©Christie's Images / Bridgeman Images

丸山直文 「puddle in the woods 5」

 淡く広がる美しい色彩は、布に絵の具を染み込ませて生まれたもの。一見抽象的だが、「森の中の水たまり」という題名がモネとの親和をうかがわせる。
丸山直文 「puddle in the woods 5」 2010年、アクリル・綿布、作家蔵 ©Naofumi Maruyama,Courtesy of ShugoArts


常に新しく 常に力強く 名古屋市美術館副館長 深谷克典

クロード・モネ 「霧の中の太陽」 1904年、油彩・キャンバス、個人蔵

クロード・モネ 「霧の中の太陽」 1904年、油彩・キャンバス、個人蔵

 モネといえば印象派である。後に第一回印象派展と呼ばれることになる1874年の展覧会に、グループの名称の由来となる「印象、日の出」を出品したことにより、モネの名前は印象派の代名詞となった。そして19世紀の美術史にその名を深く刻んだ。しかし、モネは20世紀の画家でもある。1926年、86歳でこの世を去った彼は、実はピカソ、マティス、カンディンスキーらと同じ時代を生きた画家でもある。

 それだけではない。モネの作品、とりわけ晩年の作品は後世の画家たちに少なからぬ影響を及ぼし、その影響力の強さと幅の広さは、あるいはピカソやカンディンスキーをしのぐかもしれない。モネは印象派の巨匠であるだけでなく、現代美術の創始者でもあるのだ。

クロード・モネ 「ジヴェルニーの積みわら、夕日」 1888−89年、油彩・キャンバス、埼玉県立近代美術館

クロード・モネ 「ジヴェルニーの積みわら、夕日」 1888−89年、油彩・キャンバス、埼玉県立近代美術館

 睡蓮(すいれん)の画家が、なぜ現代美術の生みの親になるのか、その理由を詳述する余裕はないが、モネの晩年作が当時厳しい批判を浴びていたことは確かである。どの時代でもそうだが、あまりに先鋭的な試みは理解や共感よりも反発と怒りを生む。

 モネの真意にようやく時代が追いつくのは、第二次世界大戦後のことである。破壊と混乱の中から立ち上がったアメリカやヨーロッパの若い芸術家たちが、モネの作品に新たな造形性と深い精神性を認め、自らの指針とした。そして、そのモネの教えは現在もなお多くの芸術家たちに受け継がれている。

 画家が晩年の全精力を注いだ、オランジュリー美術館の睡蓮の壁画に取り組んでからほぼ100年。自然との真摯(しんし)な対話から生み出されたモネの芸術は、常に新しく、常に力強く、私たちの心に語りかけてくる。


モーリス・ルイス 「ワイン」

 何層にも重ねられた絵の具の層。濁り、くすむはずの色彩が、なぜか光り輝く。神秘的ともいえるそのたたずまいは、色彩のベールが織りなすモネの世界そのものだ。
モーリス・ルイス 「ワイン」 1958年、アクリル・キャンバス、広島市現代美術館

出品作家

クロード・モネ、アルフレッド・スティーグリッツ、エドワード・スタイケン、マーク・ロスコ、ウィレム・デ・クーニング、モーリス・ルイス、サム・フランシス、ロイ・リキテンスタイン、ジャン=ポール・リオペル、ジョアン・ミッチェル、アンディ・ウォーホル、ゲルハルト・リヒター、ルイ・カーヌ、堂本尚郎、中西夏之、松本陽子、平松礼二、根岸芳郎、岡崎乾二郎、児玉靖枝、鈴木理策、福田美蘭、丸山直文、湯浅克俊、小野耕石、児玉麻緒、水野勝規

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