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中日新聞×NHK名古屋 災害死ゼロは可能か?

 災害大国・日本。ハード、ソフトの両面で教訓に基づく備えを進めていながら、自然災害の悲劇は毎年のように繰り返されている。10年、50年、100年。時間はかかっても、いつかは犠牲者をなくしたい。「災害死ゼロ」の未来を記者たちが探る。

被災者に見立てた人形を持ち上げるドローン=愛知県豊田市で

被災者に見立てた人形を持ち上げるドローン=愛知県豊田市で

 小型無人機(ドローン)の製造技術が目覚ましい発展を遂げている。将来は津波に襲われた際、タケコプターのようにドローンを体に取り付けて飛んで逃げられるようになるかもしれない。

 名古屋市中区にある「プロドローン」は、産業用ドローンメーカーとして世界のトップを走る企業。中日新聞とNHKの依頼を受け、6月23日、被災者に見立てた人形を持ち上げる実験を愛知県豊田市で実施した。

 実験では、最初に6つのプロペラを持った産業用ドローンが重さ30キロの人形を7メートルまで持ち上げた。次に用意されたのはアームが取り付けられたドローン。重さ10キロの人形をアームでつかんだまま上空15メートルまで難なく浮上した。

 プロドローンの社長河野雅一さん(59)は「日本の企業として、津波の際に5分でも10分でも飛んで内陸に逃げられるようなドローン開発をするべきだと思っている」と語る。

 プロドローンは、運びたい物に取り付けて飛ばす形のドローン開発も進める。もちろん、技術的、法的に今すぐに人を飛ばすことはできないが、それはまさに「タケコプター」と同じ発想だ。

三浦勝美さん。常にライフジャケットを車に積んでいる=宮城県南三陸町で

三浦勝美さん。常にライフジャケットを車に積んでいる=宮城県南三陸町で

 車には、いつもライフジャケットを積んでいる。「タケコプターがあったら、みんな助かったのに」。宮城県南三陸町の職員三浦勝美さん(55)は、家族と今もそんな話をする。

 2万人近くの命が失われた2011年3月11日、激しい揺れの後、三浦さんが逃げたのは防災庁舎の屋上だった。津波は陸に入り込み、周りは一面の海水に。止まる気配のない水が屋上に向かって上がってくる。

 「何かにすがれ」。同僚の声が聞こえた。三浦さんはアンテナの根元につかまった。足元がぬれて冷たくなった。水しぶきが降り掛かってきたかと思うと、体が水に沈んだ。

 「まるで自分がこいのぼりになったみたいに、海水に体を持っていかれそうになった後、指がアンテナの根元から離れた」

 津波にのまれると、上下も分からなくなった。海面に上がろうともがいたが、無駄だった。「ダメだ」と諦めそうになった時、目の前に材木を見つけてつかまった。助かるには不十分だと思い、漂っていた畳に乗った。「絶対死なねぇ」。その上で何度も叫んだ。

 防災庁舎の屋上からは30人以上が流されたが、生き残ったのは三浦さんだけだ。

 東日本大震災後、自分だけが助かったとの意識に苦しめられた。一人で車を運転している時には、津波を思い出し何度も涙を流した。パチンコで大当たりしたら、泣けてきた。「あいつらも、やりたかったべな」

ドローンの実験を取材する中村禎一郎記者(右から3人目)とNHK取材班(左から4人)=愛知県豊田市で

ドローンの実験を取材する中村禎一郎記者(右から3人目)とNHK取材班(左から4人)=愛知県豊田市で

 三浦さんにとって、「この先どう生きていくか」が人生のテーマとなった。「みんな、十分に悲しい思いをした。この先はできるだけ笑って暮らしていく」

 自らの経験を語る際には、「死ねば家族が一番悲しむ。家族のために助かろう」と訴えることにしている。「ライフジャケットが、タケコプターがあれば、こんな苦しい思いをしなくて済んだ」

 (社会部・中村禎一郎)

中日新聞とNHKがコラボ

 中日新聞とNHK名古屋放送局は、防災コラボキャンペーン「災害死ゼロは可能か? 記者が探る未来図」を始めます。自然災害の犠牲者を減らす取り組みをテーマに取材し、それぞれの紙面と番組(放映は愛知、岐阜、三重)で、随時掲載、放映していきます。


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