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オリンピックニュース

氷上の方程式:フィギュアスケートの採点法

 バンクーバー五輪では、3回転アクセル(3回転半)を跳んだ浅田真央が、跳ばなかった金妍児(キム・ヨナ、韓国)に敗れた。その後、ルールが改正され、高難度のジャンプの基礎点が上がり、回転不足の判定も緩やかになった。浅田はソチ五輪でも3回転アクセルに挑む。採点ルールは彼女の信念に報いるだろうか。

計算可能な技術点

 フィギュアスケートは、ジャンプやスピンなどの要素を評価する「技術点」、全体的なつながりや表現力を評価する「演技構成点」、転倒や時間超過などの規定違反を反映する「ディダクション(減点)」の3つの要素の合計で順位が決まる。

要素の基礎点と出来映え点(GOE)係数(一部)
要素基礎点略記号GOE係数
2回転トーループ1.42T0.2
2回転ループ1.82Lo0.3
2回転アクセル3.32A0.5
3回転トーループ4.13T0.7
3回転サルコー4.23S0.7
3回転ループ5.13Lo0.7
3回転ルッツ6.03Lz0.7
3回転アクセル8.53A1.0
4回転サルコー10.54S1.0
スピンコンビネーション3.0CoSp40.5/0.3
ステップシーケンス3.9StSq40.7
コレオシーケンス2.0ChSq0.7/0.5

 技術点の審査では、技術専門員がジャンプの要件(回転数、踏み切り)やスピンのレベル(軸足や姿勢の転換の回数や難易度)を決定し、審判がそれぞれの「出来映え」を−3から3までの7段階で評価する。各要素には「基礎点」や「出来映えの係数」があらかじめ決まっており、自動的に総技術点が計算される。

 2013年NHK杯フリーを例にとると、浅田真央の3本目のジャンプは、3回転ルッツ(エッジ違反)と認定され、9人の審判によって出来映えが-2、-1、-1、0、-1、-1、-1、0、-1と判断された。3回転ルッツの基礎点は6.0。9人の出来映え評価のうち、両端を除いた7人分の平均をとり(-0.85)、係数の0.7を掛けた-0.6が「出来映え点」となり、最終的な技術点は5.4点になった。

 演技構成点の審査では、演技全体を通しての、1)スケート技術、2)要素間のつながり、3)演技力、4)振り付け、5)音楽解釈の5要素について各10点満点で評価され、技術点と釣り合うように、男子フリーでは2倍、女子フリーでは1.6倍の重み付けがされる。フィギュアスケートの芸術的側面をカバーしている。

 前回五輪と比べると、3回転アクセル、3回転ループの基礎点が上がり、3回転フリップ、3回転サルコーが下がっている。一律で1回転少ないジャンプとみなされていた90度以上の回転不足にも、180度以下なら7割程度の基礎点が与えられることになった。また、必ず入れなければならないスピンが4から3に減るなど、演技の自由度が増している。

連動する出来映え点と構成点

 高難度のジャンプを組み込んで基礎点を積み上げても、それだけでは有利にならない。出来映え点と演技構成点が連動しているからだ。

出来映え点と演技構成点

 たとえば、ジャンプの出来映え採点ガイドラインには、着氷姿勢、入りから出までの流れ、音楽との一致などの観点があり、演技構成点の項目と重なっている。ジャンプ後に転倒した場合、出来映え評価が3段階下がるだけでなく、印象として演技構成点の評価に悪影響を与えたうえ、ディダクションとしてさらにマイナス1点になる。

 今季グランプリファイナルの全選手を対象に出来映え点と構成点の関係を見ると、確かに相関があり、ミスのない演技が決定的に重要だ。

 選手とコーチは、シーズンの各大会を通して、各要素の得点と失敗リスクを見極めている。だから、トリノで優勝した荒川静香のように、ライバル選手が直前の演技で失敗したことに対応してジャンプの種類を変更することができる。一方、国際スケート連盟は、選手側のこのような戦略、対応を前提として、スポーツ性と芸術性のバランスをとっている。バンクーバーで4回転を回避したライサチェク(米国)が4回転を決めたプルシェンコ(ロシア)に勝って物議をかもしたが、当時の審判員は「要素のつながりも見ると言っているのに、そんなものは無視すると公言する選手をどう採点するのか」と言っている。

出来映えで加点する金妍児・ソトニコワ

 総得点を争うスケーターが、技術点のために構成点を犠牲にするような選択をすることはないが、おのずと、その比重に個性が表れている。浅田、鈴木明子とメダルを争う有力選手の得点傾向をグラフに描いてみよう。

 主要大会最高スコア(フリースケーティング、金妍児は韓国選手権)の内訳を比べると、総基礎点が高いのは浅田、リプニツカヤ(ロシア)、鈴木だった。ところが、出来映え点を加えた実際の要素点になると、リプニツカヤ、金妍児、浅田、ソトニコワ(ロシア)になる。

出来映え点と演技構成点

 浅田、鈴木、ゴールド(米国)は、最高スコアの演技でも回転不足のジャンプがあり、技術点に上積みの可能性がある。しかし、それは、ベスト演技ですら消すことができないリスクなのかもしれない。

 他方、リプニツカヤ、ソトニコワは、踏み切りのエッジ違いが1回ずつあるだけで、他のすべての演技要素で出来映えで加点している。金妍児は、地元の韓国選手権の結果とはいえ、ノーミスで全要素で高い出来映え点を得ている。

 トップレベルの選手は五輪にピークを合わせるために大会を使っている。ライバルとの情報戦でもあり、連覇を狙う金妍児は主要大会には一度も出ていない。だから、今季の結果を並べても五輪の結果を占うことはできないが、グラフには選手の特徴がはっきり表れている。