箱根山の警戒レベル1に

噴火の危険低下 立ち入り規制は継続

2015/11/20

 気象庁は20日、神奈川県の箱根山・大涌谷について、噴火の危険性が低下したとして火口周辺警報を解除し、噴火警戒レベルを最低の1(活火山であることに留意)に引き下げた。

 箱根山がレベル1に戻るのは約半年ぶり。深刻な影響を受けた観光業の復活に向け、大きな足掛かりとなりそうだ。

 一方で、大涌谷周辺では現在も噴気や火山ガスが出ているため、気象庁は注意を呼び掛けている。箱根町は20日、ガスの濃度が下がり安全性が確認されるまで、大涌谷周辺の半径440~530メートルの警戒区域を維持し、立ち入り規制を続けると明らかにした。

 大涌谷では4月下旬ごろから火山性地震が増加。蒸気の噴出も目立ち、5月6日にレベル2(火口周辺規制)に引き上げられた。火山性地震は5~6月に約3000回発生。6~7月には噴火が確認され、レベル3(入山規制)に上がった。

 その後、活動は低下し8月下旬には山の膨張を示す地殻変動が停止、9月にレベル2となった。火山性地震も10月には10回に減少していた。

立ち入り規制は継続 火山ガス専門部会準備会

2015/11/20 東京新聞朝刊

火山ガス専門部会準備会

火山ガス専門部会準備会の会合=小田原市で

 箱根山・大涌谷(箱根町)の火山ガス安全対策専門部会準備会は19日、小田原市内で初会合を開き、火口付近で高濃度の火山ガスが観測され「長期的監視と立ち入り規制継続が必要」とする見解で一致した。

 出席した専門家は「濃度が国の基準値を大幅に超えており、規制を解除できない」としており、気象庁が噴火警戒レベルを現在の2(火口周辺規制)から1(活火山に留意)に下げても、立ち入り規制(半径440~530メートルの楕円エリア)は当面続く見通しとなった。

 県などによると、9~17日に24時間体制で火口周辺6地点の火山ガス濃度を測定。火口から200メートルの1カ所で12日夕から13日朝と14日夜、16日午後に、国の安全基準(0.1ppm)を上回る10ppm前後の二酸化硫黄を検知した。

 野上健治東工大教授は会合後、「数年以上の観測の蓄積とシミュレーションを基に、観光客を入れたり入れなかったりする阿蘇山のような火山ガスの監視を、箱根も始めるべきだ」と語った。

 準備会には専門家と県などの担当者らが出席。今後、県や町、関係機関でつくる箱根火山防災協議会に監視体制の整備などを提言する。

 箱根山は山体膨張が8月末に止まるなど火山活動自体は沈静化。10月末には運休していた「箱根ロープウェイ」の運転が一部で再開されている。

(西岡聖雄)

箱根山、レベル2に

2015/9/12 東京新聞朝刊

 気象庁は11日、神奈川県の箱根山・大涌谷の噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げた。火山活動が低下し、大涌谷の外に噴石を飛ばすような噴火の恐れはなくなったと判断した。

 気象庁によると、噴火は約2カ月間起こらず、マグマや熱水の移動を示すとされる火山性微動は6月29日を最後に観測されていない。山の膨張も停止。火山性地震は7月が234回、8月は70回、9月は11日午後3時までに4回と減少が続いている。一方、活発な噴気などは継続。大涌谷の半径約500メートルでは小規模な噴火が発生する可能性が残るという。

 箱根山は4月下旬から火山性地震が増加し、5月に火口周辺警報が発表され警戒レベルが2に上がった。6月末にはごく小規模な噴火が起こり、レベル3になっていた。

箱根火山レベル引き下げ

 箱根町は11日、噴火警戒レベル3で設定されている半径1.14~1.23キロの楕円形の立ち入り規制区域をレベル引き下げに伴い、内側に各0.7キロ縮小する準備を始めた。有毒ガスや地滑りの危険性を確認した上で、週明け早々に通行規制を解除したいとしている。

 規制区域内にあり、営業を休止している姥子温泉の日帰り入浴施設「秀明館」の職員は、「再開時期の問い合わせが多く、引き下げを待ち望んでいた」と声を弾ませた。規制区域外の小涌谷にある「岡田美術館」の学芸員近森愛花さん(25)も「シルバーウイークに向けレベル引き下げをPRしたい」と力を込めた。

黒岩知事「ほっとした」

 箱根火山の噴火警戒レベルが「2」に引き下げられたことを受け、黒岩祐治知事は報道陣の取材に「ほっとしている。いつまでも続いていると、箱根経済にどれだけ影響が出るかと心配していた」と述べた。

 県はこの日、職員6人を先遣隊として派遣し、規制区域内の県道の状況確認や火山ガスの調査に着手したという。知事は「特別なことがない限り、月曜(14日)にレベル3の規制は解除できるだろう」との見通しを示し、「一日も早く元に戻れるよう見守っていきたい」と語った。

レベル4、5対応の避難計画骨子を策定

2015/8/27 東京新聞朝刊神奈川版

 箱根火山の噴火警戒レベル引き上げに備えた避難計画の骨子を策定した箱根町の山口昇士町長は26日、「万一の事態にも対応できる。正直ほっとした」と述べた。避難指示区域は強羅、仙石原、湖尻の3地区の一部に広がり、90の宿泊施設、美術館など五つの集客施設も含まれる。策定を受け、各施設や自治会も、具体的な避難誘導マニュアルを個別に整備していくという。

 骨子は水蒸気噴火を想定。噴火警戒レベルが現在の3(入山規制)のときの避難指示区域は火口のある大涌谷の半径1キロ圏だが、4(避難準備)や5(避難)に上がると、同2.1キロ圏になる。避難対象は住民が450人、宿泊客が満室で6286人、集客施設利用者が8500人の計約1万5200人。

 避難の原則は(1)頑丈な建物に入る(2)強羅、仙石原、湖尻に一カ所ずつ設けた二次避難所にマイカーなど車で移動(3)町が用意するバスで住民は火口から8キロ離れた箱根湯本駅付近の三次避難所や近隣市町に移動、観光客は主要駅に運ぶ―の三段階。住民は三次避難所で避難生活を送る。

 住民のうち140人いる高齢者ら要援護者の避難方法は、福祉部局と自治会などで詰め、優先的に避難させる。自治会や宿泊・集客施設が避難誘導マニュアルを整備しやすいよう、町は作成用の手引書もつくる。山口町長は「自治会、施設ごとに詳細な避難誘導マニュアルをつくってもらい、時期をみて避難訓練も行いたい。安心して観光に来てもらうため、地域を挙げて取り組む」と話す。

 骨子は同日、小田原市で開かれた関係機関でつくる箱根火山防災協議会で了承された。町は町内全世帯に周知する。町と県のホームページでも公開している。

 骨子はマグマ噴火した場合にも触れ、避難指示区域を半径4キロ圏と想定した。しかし、マグマ噴火は過去3000年間起きておらず、現在、兆候もないことから、4キロ圏の避難対象住民や観光客数、避難方法の詳細は今後検討していく。

 町は26日、7月の観光への影響調査結果も発表した。町内の宿泊客は前年比35%減、飲食業の売り上げは41%減、土産物など物産業の売り上げは44%減、美術館など観光施設の入場者数は42%減、交通機関利用者も35%減。久しぶりに渋滞が起きたお盆過ぎから、客は戻り始めたという。

(西岡聖雄)

一部別荘や保養所の立ち入り可能に

2015/8/25 東京新聞朝刊

 箱根火山噴火により大涌谷の半径1キロ圏を立ち入り規制している箱根町は24日、一部区域の規制を解除した。対象は強羅地区の早雲郷別荘地の幅80メートル、長さ500メートルの範囲。別荘や企業の保養所を中心に28棟あり、旅館やホテル、従業員寮、一般民家1軒も含まれる。

(西岡聖雄)

 町はこれまで、午前中の2時間のみ立ち入りを認めてきたが、この日から終日出入りできるようになった。ある保養所の管理人の男性(60)は「一時立ち入りだけだと建物に湿気がこもる。空気の入れ替えができてよかった。温泉が出るのか心配だが、規制解除は一歩前進。営業再開に備えたい」と声を弾ませた。

 1キロ圏の線上に近い早雲郷別荘地は一部しか規制区域にかからなかったが、進入道路が規制区域にあったため事実上、立ち入りできない状態だった。町の小林泰彦防災対策室長は「火山活動の沈静化が続けば、今後も少しずつ規制範囲を縮小したい」と話す。

 火口から250メートルの箱根ロープウェイ大涌谷駅も保守作業の立ち入りを認められたが、24日は霧が深く作業を見送った。今後週3回、機器を整備し、営業再開に備える。

 県温泉地学研究所の竹中潤研究課長は「地震の減少は火山活動の低下と考えている。7月から鈍化している山体膨張は8月に入ってさらに低下し、約10カ所の衛星利用測位システム(GPS)の多くは膨張を示していない。一部のGPSは誤差のばらつきでまだ判別できず、山体膨張が止まったと判断するにはもう少し時間がかかる」と説明している。

箱根山のドローン調査映像公開

2015/8/1 東京新聞朝刊

ドローン画像

新たな火口上空からドローンが撮影した画像=29日午前10時33分、箱根町で(県産業技術センター提供)

 県産業技術センターは31日、噴火警戒レベル3(入山規制)の状態が続く箱根・大涌谷の立ち入り規制区域で29日に実施した、小型無人機ドローンによる調査映像を公開した。

 6月末以降に新たな4つの火口と15の噴気孔が確認されており、このうち一部を中心に撮影。県温泉地学研究所によると、蒸気が噴き出している火口部分で湯だまりが見つかった。蒸気は透明に見えることから、100度以上の高温で噴出していることが確認できた。依然として火山活動が盛んであることが分かるという。

 また、地上からは見えない火口付近の沢が、約130メートルにわたって泥流で埋まった様子を確認した。噴火活動の激しかったことを示しているという。温地研は「ドローンによる撮影は有効。継続的な調査が望ましい」としている。

 同センターは今後、火山ガスによる腐食に強いドローンの開発などを検討するという。映像は県のウェブサイトで公開する。

 (原昌志)

入山規制一か月 箱根町が独自対策

2015/7/30 東京新聞朝刊神奈川版

 箱根町の大涌谷が小規模噴火し、噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられてから30日で1カ月。町は8月末を目標に、レベル4(避難準備)や5(避難)を想定した新マニュアルを作成中だが、完成までの空白を埋めようと、独自に対策を練る学校や高齢者施設なども出ている。

 大涌谷から3キロ離れ、小中高生377人が学ぶ強羅地区の函嶺白百合学園は、レベル4や5が発令された場合の簡易マニュアルを作成済みだ。卒業までに全員が心肺蘇生法を習得するなど、安全教育に定評がある。

 噴火警戒レベルが4や5になれば休校とし、箱根登山鉄道の電車が動く状態ならヘルメットやゴーグル、防じんマスクで生徒を下校させる。外に出るのが危険な場合は校内で待機。生徒全員分の3日分の非常食や水、寝袋を備蓄している。

 生徒が校門を通ると各家庭へメール配信されるシステムを通じて保護者に情報を伝え、小田原駅の近くに一時待機所も確保。東海道線の上りや下りなど九地域に分け、保護者の有志数十人が役割分担して生徒を確実に自宅に送り届ける。これら各種災害訓練を2カ月に一度行い、噴石対策の訓練も6月に実施した。

 夏休み中も、部活動や補習で通学する生徒の人数を活動ごとに把握。長期休校する事態にも備え、町外で授業を継続できる施設の確保を検討している。中学高校の吉見仁志教頭(60)は「レベル4や5の町のマニュアルができれば、それに合わせて学校のマニュアルも改定していく」と話す。

 高齢者施設では、入居者の受け入れ先を独自に探す動きがある。町の避難所では、必要な介助設備がない場合も想定されるからだ。大涌谷周辺地域のある老人ホームは、1週間分の食料を備蓄。長期避難となる場合は、町外の福祉施設に職員が車で入居者を運ぶ手はずにしている。

 責任者は「まずは人命第一だが、介護職員一人当たりの入居高齢者が増えると、施設に入る介護保険料が減る問題も出てくる。入居者を他施設へ転居させるには、行政のサポートが必要になる」と課題を挙げた。

 (西岡聖雄)

物産、飲食の売り上げ4割減 箱根町

2015/7/23 東京新聞朝刊神奈川版

 神奈川県箱根町は22日、大涌谷の火山活動の観光への影響調査で、物産、飲食など4業種の6月の売り上げや利用者が前年同月比で約40%減ったと発表した。

 町によると、前年同月比で、土産物など物産業の売り上げが59.2%、飲食業の売り上げが61.2%、ホテル・旅館の宿泊者数が62.6%、美術館・博物館の来客数が63.4%。交通業の利用客は75.0%だった。

 ホテル・旅館の7月の宿泊予約は前年同月比62.9%で、観光最盛期の8月の予約も53.7%(7月1日現在)にとどまっている。

 調査対象は256施設・事業者で、6割が回答。噴火警戒レベルが3(入山規制)に上がった翌日の7月1日以降の影響は反映されていない。

箱根山で火山灰を観測 気象庁「噴火ではない」

2015/7/22 東京新聞朝刊

火山灰

21日正午ごろに大涌谷で観測された、噴煙に火山灰が混じる現象の画像=神奈川県箱根町(気象庁提供)

 気象庁は21日、神奈川県の箱根山・大涌谷で同日午後0時1分ごろ、約10秒間にわたり、噴煙に火山灰が混じる現象を観測したと発表した。

 灰が飛んだのは火口周辺の狭い範囲で、同庁は「ごく小規模な現象で噴火とは記録しない」と説明、噴火警戒レベルは3(入山規制)を維持している。

 気象庁によると、6月の噴火で新たにできた火口から、灰白色の噴煙が高さ約50メートルまで上がった。大涌谷に設置したカメラや現地にいた職員が確認した。

 空気の揺れを測定する空振計や、地震計に変化はなかった。

震災漁網受け入れ謝辞と箱根激励 岩手の町長ら

2015/7/18 東京新聞朝刊神奈川版

水上町長

黒岩知事(右)に箱根町応援の考えを語る岩手県洋野町の水上町長=17日午後2時26分、県庁で

 噴火警戒レベル3が続く箱根町を励まそうと、東日本大震災被災地の岩手県洋野町の水上信宏町長と岡本正善議長らが17日、横浜市中区の県庁を訪問。黒岩祐治知事に、震災で出た漁網ごみの受け入れへの感謝の意と、箱根観光などを応援する考えを伝えた。

 洋野町は北三陸に位置し、震災で発生した漁網ごみを箱根町と南足柄市が受け入れた。水上町長は、調整に当たった県に礼を述べ、「町は復興に向けて頑張っています。箱根もぜひ元気になってもらいたい」と話した。町職員の新婚旅行や町議会の研修などで、積極的に箱根を訪れてもらう方法を検討しているという。

 一行はその後、箱根町役場を訪れて山口昇士町長とも面談し、感謝と応援の思いを語った。

 (原昌志)

箱根で研修、会議を 商議所が呼び掛け

2015/7/14 東京新聞朝刊神奈川版

 箱根町大涌谷の火山活動の活発化で観光客が減っているため、小田原箱根商工会議所は、静岡、山梨県を含む関東一円の各商工会議所に、研修や会議を箱根で開いてもらえるよう呼び掛けることを決めた。関係会議などで要請し、箱根への独自の誘客企画も考えていく。

 会議所は毎年主催する小田原箱根大博覧会(産業まつり)で今年初めて、オープニングイベントを催す。8月2日に箱根町元箱根の富士芦ノ湖パノラマパークで開き、飲食、物販ブースやステージの内容を詰めている。博覧会は10月24日まで。期間中、人気の箱根芸者への変身、からくり箱制作をはじめ90種類の職業体験コースを小田原市と箱根町の各所に用意。初登場の「山のホテル・ティーセミナー」など、箱根町でのコースも多い。

 8月7日には、箱根町仙石原でゴルフコンペを計画。県外の商工関係者を含め、40人程度が参加する。小田原市や南足柄市で行ってきた部内会議も極力、箱根開催にシフトする。

 樋口正人専務理事(61)は「ゴルフコンペや研修誘致のほか、各種職業体験ツアーなど箱根誘客の独自企画を次々打ち出し。口コミの集客を図る」と話す。

 会議所が今月14日に箱根町役場で予定する業界向けの接客セミナーの申込数は昨年の3倍、63人に上る。池谷正美中小企業相談部長(59)は「客が少ない今こそ、従業員に研修をという要望が多い。外国人客は減っておらず、今回は英語の接客マナー向上を後押しする」という。

 会議所は売り上げが減った中小事業者へのサポートも本格化させる。箱根町の箱根湿生花園で7月15日、国の雇用調整助成金と県や町の融資支援制度を紹介する説明会を行う。定員は40人だが、13日現在の申込数は56人。続いて7月28~30日、小田原市で雇用調整助成金の個別相談会も開き、必要書類や手続き方法を説明する。制度説明と個別相談の二段階のサポートは初の取り組みという。

 箱根町は、湖水まつり(7月31日)や箱根大文字焼(8月16日)をはじめ、夏の箱根のイベントはすべて予定通り行う方針。県は職員研修や旅行を箱根でしてもらうことを県内の各団体、企業に要請する。キャンセルが相次ぐ箱根での林間学校などの開催も関係団体に求めていく。

 県は箱根への思いや画像を投稿してもらうツイッター受け付けも始めた。県のホームページから案内している。

 (西岡聖雄)

箱根で入山規制、小規模噴火も

2015/6/30 東京新聞夕刊

 気象庁は30日、火山活動が活発化していた箱根山(神奈川県箱根町)の噴火警戒レベルを、これまでの2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。噴気が続いていた大涌谷でごく小規模な噴火が発生したとみられ、今後、大涌谷周辺の想定火口域から700メートル程度の範囲内に噴石を飛ばすような小規模な噴火を起こす可能性があるとして、警戒を呼び掛けた。

小規模な噴火が発生したとみられる大涌谷=30日午前、本社ヘリから

 気象庁によると、大涌谷で29日に新たに確認された噴気孔の周囲で、30日になって火山灰などが積もって盛り上がっている様子を確認した。ロープウエーの大涌谷駅付近でも火山灰が降ったという。

 箱根山では4月下旬から火山性地震が増加。今月29日には、地下のマグマや熱水などの動きと関連あるとされる火山性微動も初めて観測された。周辺で灰のような細かい粒が降ったことも確認されたが、気象庁は29日夜の段階では「噴火ではない」との見方を示していた。

 30日朝から昼にかけては、震度1~3を観測する有感地震も続発していた。

今後は「未知の段階」

2015/7/1 東京新聞朝刊核心

 噴火発生に伴って警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられた箱根山(神奈川県箱根町)。ごく小規模とはいえ、箱根山の噴火は観測史上初めてだ。今後は「未知の段階」と専門家は指摘する。予断を許さない状況だが、いつ噴火したかが確定できないなど、気象庁の監視態勢の課題も浮かびあがる。

通行止め

通行止めになった県道で警戒する警察官ら=30日午後4時29分、神奈川県箱根町仙石原で

盛り上がり

 「噴火の発生日時は今のところ特定できていない」。気象庁の北川貞之・火山課長は30日の記者会見で、こう説明した。監視カメラは噴気などで視界が悪く、地震計や傾斜計に噴火を示すデータはなかった。空気の振動をとらえる空振計のデータは29日午後4時ごろから断続的に変化していたが、決め手にならなかったという。

 噴火と認めるまで時間もかかった。29日には大涌谷の北1.2キロの地点に灰のような粒が降った。前後して火山性地震も増加し、地下のマグマや熱水の動きと関連があるとされる火山性微動も初めて観測された。しかし、気象庁は、新たな噴気孔から噴き上げられた土砂の可能性が高く「噴火ではない」との見解を示していた。

 30日になって噴火と認めたのは、大涌谷で新たに確認された噴気孔の盛り上がりだ。火山灰などが積もって野球の「マウンド」状になっていた。前日の現地調査が終わった29日午後6時の段階ではマウンドは見つからず、30日朝にかけて噴火が起こったと推測する。

 気象庁の対応について静岡大の小山真人教授(火山学)は「火山性微動、地震の増加、降下物が広い範囲で降る―-という三つの現象が同時に起こっており、29日の時点で噴火と判断すべきだった」と指摘。「今回は負傷者などが出なかったが、結果オーライともいえる。噴火の認定は防災上からも迅速な判断が求められる」と、監視態勢や判断能力に疑問を呈する。

過去と将来

 箱根山で確認されている最後の噴火は、12世紀後半から13世紀に起きた。発生場所は、今回新たに噴気孔が確認された大涌谷近くで、熱水が岩石を吹き飛ばす「水蒸気噴火」と呼ばれるタイプだった。

 箱根山の水蒸気噴火はこの3000年間で、少なくとも5回起きているという。いずれも小規模で、1キロ離れた場所で火山灰が数センチ積もる程度だった。

 箱根山の火山活動に詳しい日本大の高橋正樹教授(火山地質学)は「火山灰が地層に残らないような小さな噴火は、もっとたくさん起こっていたはず」と推測する。

 今回はごく小規模で、水蒸気噴火とみられる。「この程度で終息すれば、火山灰などは地層に残らない。箱根山がちょっと『せき』をした程度」(高橋教授)。ただ、このまま終わるかどうかは分からない。水蒸気噴火より大規模になりやすい「マグマ噴火」への移行に注意が必要だという。

 直近のマグマ噴火は、3200年前。山体崩壊が起きて川をせき止め、今の芦ノ湖ができた。5700年前には、溶岩ドームができて火砕流を出す噴火が起きている。

 詳しい記録が残っている江戸時代以降は、群発地震を繰り返すものの、噴火には至っていなかった。防災科学技術研究所の棚田俊收・副ユニット長は「これまでは過去の群発地震のデータが、今後の推移を予測する上で参考になった。噴火で新たなステージに入り、これからは参考のデータがない。レベル4(避難準備)への引き上げも想定し、住民避難への対応などの準備を進めていくべきだ」と話した。

知事「人的被害ゼロに全力」

2015/7/1 東京新聞朝刊神奈川版

 箱根・大涌谷の噴火警戒レベルが「3」に引き上げられた30日、箱根町や県の担当者らは対応に追われた。前夜の「噴火ではない」との気象庁の発表から一転、住民避難も迫られる事態に。火山活動が落ち着いてきたとみられていただけに、関係者の間には観光への影響と安全確保に複雑な思いが交錯した。

 県は午後3時半前、県庁で緊急対策会議を開いて状況と対応方針を確認。黒岩祐治知事は会議後、報道陣に「人的被害ゼロは何としても続けていく」と強調し、箱根町と連携して住民避難や周辺の警戒にあたることをあらためて示した。内閣府や国土交通省から県と町に計9人が派遣されたことも説明した。

 一方で知事が「悩ましいところ」と語ったのは観光誘客。県は7月3日から発売する、国の地方創生交付金を使った旅行券での箱根観光PRに期待していた。「反転攻勢に出ようかと思っていたが、こういう事態になった。立ち入り禁止区域外はそれほど恐れることはないが、まずは人的被害ゼロに全力を注ぎたい」「しばらく様子を見ないと先のことは考えられない」と複雑な心情をうかがわせた。

 箱根火山防災協議会を終えた箱根町の山口昇士町長は午後5時、小田原市内で記者会見し「大きな混乱もなく人命を守れた」とひとまず胸をなで下ろしながら、「(夏場は)箱根にとって観光のトップシーズン。レベル3への引き上げは残念。観光客が遠のくことを危惧している」と不安な様子。例年よりも予約状況が低迷しているとし、「これまで以上に規制区域外は平常通りだと強く訴えていきたい」と語った。

 町では大涌谷の温泉供給施設の維持管理への影響も心配される。勝俣正志総務部長は「状況に応じて、立ち入りできるものならばしたいと考えているが、人命が第一。レベル3では難しいと思っている」と厳しい見通しを明かした。

 (原昌志、猪飼なつみ)

避難計画急ぐ 神奈川県方針

2015/7/2 東京新聞朝刊神奈川版

 噴火警戒レベルが「3」に引き上げられた箱根山について、県は1日の県議会防災警察委員会で、さらにレベルが上がった場合に備えた避難計画の作成を急ぐ方針を示した。9月までには、避難対象エリアなどを定めた計画を固め、運用できるようにする。現状の規制範囲を大幅に上回る見込みだ。

 計画の策定主体は箱根町だが、県と連携して作業を進めている。

 委員会で杉原英和災害対策課長は「レベル3への引き上げ前から避難計画作成に着手してきたが、迅速化を図りたい」と述べ、当初9~10月ごろに予定していた計画骨子の公表を前倒しするとした。

 その上で「住民の命を守ることを最優先にした避難対象地域の設定を考えている」とし、段階的に避難が必要となる場合や、突発的に対応が必要となる場合など、さまざまな状況を想定していると説明した。

 対象エリアについては「県温泉地学研究所の知見をベースにできるだけ早くまとめたい」としつつ、「かなり今の円よりも広くなる」と語った。現在は、大涌谷火口域から半径約1キロが立ち入り規制範囲になっている。

 気象庁が公表している「箱根山の噴火警戒レベル」では、レベル5(居住地域に重大な被害を及ぼす噴火の発生・切迫)の想定現象として「小規模噴火が発生し、火口から約2キロ以内に大きな噴石飛散」などとされている。避難が必要な範囲は、最低でもこれを基本に検討するという。

 半径約2キロには芦ノ湖付近や、宿泊施設が集まる強羅地区も含まれる。住民のほか、宿泊客の避難誘導などについても計画に反映させる方針。

 (原昌志)

新たに噴気孔3カ所確認

2015/7/3 東京新聞朝刊

噴気孔

 気象庁は2日、噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられた神奈川県の箱根山・大涌谷で現地調査を行い、新たに三つの噴気孔を確認したと発表した。大涌谷でできた噴気孔は四つになった。警戒レベルは3を維持するが、噴石が1キロ以上飛んだ場合は引き上げを検討する。

 今回の噴火では、噴石が約50メートル離れた場所まで飛んでおり、気象庁は大きな噴石への注意を呼び掛けている。

 気象庁によると、新たな噴気孔は温泉井戸の近くにあり、白い噴気を出していた。大きさは不明だが、これまであった直径約20メートルの噴気孔よりは小さいという。大きな噴気孔は、この温泉井戸の南側100メートル付近にあることも確認した。

 水蒸気の勢いは依然活発という。噴火した6月29、30両日に回数が急増した火山性地震は1日に急減し、2日はさらに減った。

 噴火警戒レベルをさらに引き上げる事態について、調査した宮下誠火山防災官は「噴石が1キロ以上飛び、居住地域に落ちるような規模の噴火」と説明した。

 箱根町には警戒レベルを4(避難準備)や5(避難)に引き上げた場合のマニュアルがないため、今秋をめどに作り、万一の事態にも迅速に対応できるようにする。

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