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宮川の鉄橋を渡り、伊勢市駅方面(奥)へ向かう近鉄特急。窓明かりが光跡を残し走り抜けた=三重県伊勢市で

 名古屋発の近鉄特急は、三重県伊勢市内に入ると間もなく、宮川を渡る。伊勢神宮への参拝客らしい乗客も車窓を気にする様子はないが、その昔、宮川は「聖」と「俗」を隔てた。

 「聖」とは神宮領のこと。16世紀の土地調査「太閤(たいこう)検地」で、宮川の東は聖なる地とされた。神宮参拝が流行した江戸時代、人々は船で宮川を渡る前、川の水を浴びて「禊(みそぎ)」をした。

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 「俗世間のあかを落とし、いよいよお伊勢参りだと胸いっぱいだったでしょう」と、地元の郷土史家辻村修一さん(80)は思いをはせる。

 明治期に神宮領は縮小し、歩いて渡る橋もできた。かつてのような禊の風習は消えたが、この地にたどり着いた参拝客の高揚感は今も変わらないようだ。

 伊勢市駅に夫と降り立った名古屋市の主婦(52)は、3年ぶりの参拝。車内では宮川に気づかなかったが「改札を出て、『着いたぞ』と思った」と言う。「今日までの無事を感謝したい」と語ると、外宮に向けて歩き始めた。

 文 ・大島康介
 写真・榎戸直紀

近鉄山田線・鳥羽線・志摩線 山田線は伊勢中川−宇治山田間、鳥羽線は宇治山田−鳥羽間、志摩線は鳥羽−賢島間。計33駅で66キロ。山田線の前身は1930(昭和5)年に部分開通した参宮急行電鉄、志摩線の前身は29年開通の志摩電気鉄道。鳥羽線は70年に全線開通した。

観光資源の豊富な沿線 近鉄山田・鳥羽・志摩線(動画)

 

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