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【南海トラフ地震 被害想定】

想定死者最大32万人 南海トラフ地震M9新推計

内閣府公表 津波犠牲が7割

被害が最大となる場合の都府県別死者数

 駿河湾から四国沖に延びる海溝「南海トラフ」沿いで、東日本大震災と同じマグニチュード(M)9級の地震が発生した場合、三十都府県で最大三十二万三千人が死亡するとの想定を、内閣府中央防災会議の有識者会議が公表した。津波の死者が七割。静岡県の十万九千人が最多で、三重県はそれに次ぐ四万三千人。愛知県は二万三千人で建物倒壊の死者が一万五千人に上る。

 住民の七割が十分以内に避難を始め、津波避難ビルが有効に機能するなど最大限の対策が達成されれば、死者は二割未満に減らすことができるとしている。

 新想定の地震発生確率は極めて低いが、東日本大震災が想定を大きく超えた教訓から、考えられる最大の被害を推計。「冬の深夜、駿河湾の陸地寄りの震源域で地震発生。風速八メートル。直後に避難する人は二割にとどまる」という想定で被害が最大となった。負傷者は全国で六十二万三千人。各地の水門が機能しない場合、死者はさらに二万三千人増える。

 また、各市町村への津波の到達時間や浸水域、液状化の範囲も公表。三月に公表した各市町村への津波高も精査し、あらためて発表した。静岡市清水区や焼津市は地震発生から二分、三重県尾鷲市や熊野市は四分で津波が到達する恐れがある。津波高の最大は静岡県下田市の三三メートル。三重、愛知県にも二〇メートルを超える地域がある。

中部地方の最大死者数の内訳

 津波による浸水域は最大千十五平方キロで、東日本大震災の一・八倍。津波に巻き込まれた場合ほぼ死亡するとされる一メートル以上の浸水域は三重県百十二平方キロ、静岡県百平方キロ、愛知県三十二平方キロに広がる。愛知県は三十万六千棟が全壊すると考えられ、全国で最多。このうち二万三千棟は液状化現象で全壊する。

 内閣府は二〇一一年八月から巨大地震の発生想定や被害、対策など分野別に有識者会議を設置。想定作業を進めている。今秋ごろまでに経済被害を算定し、冬ごろに全体の対策をまとめる。

 中川正春防災担当相は二十九日会見し、巨大地震対策を進める特別措置法の検討を表明。「大規模地震の発生頻度は数千年から数万年に一度だが、切迫感を持ってあらゆる施策をまとめる」と述べた。

 有識者会議は東京大の阿部勝征名誉教授(自然災害科学)と関西大の河田恵昭教授(災害情報)を中心に、東北大の今村文彦教授、名古屋大の福和伸夫教授、山岡耕春教授ら延べ三十一人が委員を務める。

 

正しく恐れる必要

名古屋大減災連携研究センターの鷺谷(さぎや)威教授(地震学)の話

 この規模の地震が発生する恐れは頭に入れておくべきだ。ただ、地震の科学的知識は一般の人が思うほど多くないのが実情。今ある知識を総動員し、最大を推定した。実際の地震はもっと小規模な可能性が高い。避難をあきらめるなど過度に恐れるのではなく、耐震化や食料確保などできることをして「正しく恐れる」必要がある。日本は多くの地震を経験してきた防災先進国。これだけ大規模な地震に襲われたとしても、日本ならば被害を最低限に減らせるということを世界に示したい。


南海トラフ被害想定の骨子

【解説】対策徹底で被害大幅減

 今回の被害想定は研究者でつくる有識者会議が、政府から「想定外のない想定を」と要請され、現段階で考え得るあらゆる可能性を取り入れた。

 中央防災会議は二〇〇三年、同じ南海トラフ沿いでM8・7の東海・東南海・南海の三連動地震が起きた場合、最大死者数を二万四千人(うち津波は八千人)と推計した。今回は死者数が十三倍もはね上がったが、九年間で南海トラフの構造が新たに分かったわけでも、地震学の研究が大きく進んだわけでもない。「想定外」をなくすため地震の規模をM9級に高め、震源域を二倍に拡大。さらに季節や時間帯など最悪の条件を重ね合わせた結果、死者三十二万人となった。

 南海トラフで次に発生する地震は、想定より小さいかもしれない。ただ、東日本大震災を大きく上回る日本史上空前の災害が起きる可能性を、今回の推計は示した。

 西日本全域が壊滅する震災を国や県、自治体だけの力で防ぐのは不可能だ。有識者会議は「市民の避難が早く、津波避難ビルなどが有効に機能すれば、被害は大幅に減らせる」と指摘している。

 わずか数分で津波が到達する恐れのある地域では、民間企業が施設を避難ビルに提供し、行政と市民が合同で避難路を整備したり、現実に即した避難訓練も進んでいる。

 いつか必ず来る震災までにこうした取り組みをどこまで広げられるか。日本の社会全体の力が試されている。(社会部・中村禎一郎)

 

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