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【芸能・社会】

小川絵梨子、三島由紀夫作品に初挑戦 翻訳劇の名手が日本近代劇演出

2018年9月12日 紙面から

候補作に三島作品をあげられ、「劇場に背中を押していただき、ありがたい」と話す小川絵梨子=東京・三軒茶屋で

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 9月1日付で史上最年少で新国立劇場の演劇部門芸術監督に就任した小川絵梨子(39)が、来年2〜3月に東京・世田谷パブリックシアターで三島由紀夫の戯曲「熱帯樹」を演出する。翻訳劇で切れ味鋭い手腕を発揮してきた小川が、日本の近代劇を手掛けるのは、田中千禾夫原作「マリアの首−幻に長崎を想う曲−」(2017年5月)以来。官能美や日本語の美しさが際立つ三島作品が、どのように立体化されるのか注目される。

 莫大(ばくだい)な資産をねらって息子に夫殺害をそそのかす妻、その計画を知って、愛する兄に母を殺させようとする病弱な妹、地位や名誉を手に入れながらも息子と対立し妻の不貞を疑わぬ父。ねじれた家族の崩壊、人間の持つ性(さが)などがサスペンスフルかつエロチックに描かれる。

 フランスで実際に起こった殺人事件がモチーフで、ギリシャ悲劇の要素も。登場人物の妹には、三島の亡くなった妹(美津子)が投影されていると言われる。

 劇場サイドが挙げた候補作の中から小川自身がセレクトした。「私の能力では理解できなかったり、日本語の美しさだったり、(三島作品を演出するのは)まだかなぁと思っていたので、背中を押して下さって、すごくうれしかった」という。

 母と息子、兄と妹の禁断の愛まで行き着く異常な家族の物語。「家族だけどめちゃくちゃ孤独で、だけど一人一人はものすごく粘り強い生命力がある。彼らは苦しんでいるし、どうしても必要な執着があったりする。本人たちはポジティブにはとっていないと思うけど、寂しさとずうずうしいたくましさと両方あるのが面白い」。重いテーマだが、喜劇的な側面も見つけられたら、という。

 キーマンになる息子には、昨年の「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」で組んだ林遣都(27)、妹には岡本玲(27)、母に中嶋朋子(47)、父に鶴見辰吾(53)、同居する叔母に栗田桃子(44)が決まった。

 日本の近代劇への取り組みは大きなチャレンジ。「日本語の美しさをどうあやつるかを含めて未知の世界がいっぱい。発音や言葉の区切り方などは、皆さんに聞いたりしながらきちっとやりたい」という。

 実は、昨年亡くなった父・忠克さんは大手出版社で三島担当の編集者だった。その父が大好きだったという三島作品。「私は『三島由紀夫レター教室』とか軟派ものが好きだったので、他の三島作品をちゃんと読もうと思います」

 60年に杉村春子らの文学座が初演後、何度か上演されたが、近年では珍しい上演。来年上半期の話題作になりそうだ。(本庄雅之)

◆林「共演者の皆さんと濃密に」

 出演者の中で、唯一、小川と2度目の顔合わせとなる林は、小川が「優柔不断でいいなぁ」という息子の勇を演じる。「日本の歴史に残る素晴らしい作家である三島由紀夫さんの戯曲を演じることは恐ろしくもありますが、それ以上に大きな学びがあると思っています。人間の業(ごう)や狂気に振り回されながら、共演者の皆さんと濃密な時間を過ごしたいと思っております」とのコメントを寄せた。

<小川絵梨子(おがわ・えりこ)> 1978(昭和53)年10月2日生まれ、東京都出身。聖心女子大卒後、ニューヨークのアクターズ・スタジオ大学院演出部卒。「今は亡きヘンリー・モス」(10年)の翻訳・演出で一躍注目を浴び、小田島雄志・翻訳戯曲賞受賞。「12人〜奇跡の物語〜」など3作で12年読売演劇大賞・杉村春子賞受賞。ネットの「オカルト・クロニクル」、Netflixのドキュメンタリーにはまっている。

 

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