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豪雨避難 地域ぐるみで 一人では決断困難「まだ大丈夫」が命取りに

大雨による増水で約100メートルにわたって破損した神通川の堤防=7月6日、富山市葛原で

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 西日本に甚大な被害をもたらした七月の豪雨。富山県内も大雨となり、六市町村で「避難準備・高齢者等避難開始」情報が発令された。すぐ避難所へ逃げた人がいた一方で自宅にとどまった人も。本紙の調べでは避難者は計二百七十七人だった。過去の教訓から早めの行動が求められる中、防災の専門家は「みんなで逃げる」をキーワードにした地域ぐるみの対応へ移行する段階だと指摘する。(山中正義)

 「まだ水位は余裕があると思ったけど、年いってるから大事を取って」。富山市の山間部にある山田地域の無職女性(82)は、情報が出た七月五日午後八時ごろ、貴重品を持って同居する娘(49)と地元の公民館へ急いだ。ほかの六人と過ごし、雨が収まった午後十時ごろ家に帰った。

 過去にも自宅近くの山田川の水位が上がったことがあったが、避難は初めて。「民生委員も電話で声を掛けてくれたから」。防災行政無線は聞いたが、民生委員の声掛けが後押しになった。「やっぱり怖かった。安心できるところに逃げるのが当然」と感じた。

意識の差はっきり

 この日は河川氾濫や土砂災害の危険から、富山市をはじめ魚津と滑川市、上市と立山町、舟橋村が計二十四地区に避難準備・開始の情報を発令した。

 富山市は七地区で計二十六カ所の避難所を開設し、計八十四世帯の百三十五人が身を寄せた。市防災対策課の担当者は「意識の変化を感じる。災害が増え、不安を感じている住民も多いのでは」と振り返る。

 舟橋村では、計七十二人が二カ所の避難所へ。村の担当者は「これだけ多くの人が避難したことはない」と話した。高岡市は情報を発令しなかったが、市内八カ所に避難所を開設し、高齢者夫婦二人が訪れた。

大雨で河川の水位が上昇したため開設された避難所=7月5日、富山県舟橋村の舟橋小学校で(同村提供)

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 一方、立山町の栃津川流域の住宅地に住む主婦(66)は自宅から動かなかった。「二階に上がれば大丈夫と思った。災害はあまりピンとこない」と話す。

 町は避難所を一カ所設けたが、訪れたのは二人だけ。情報の発令は午後六時すぎで、町の担当者は「夜間で移動しにくい面もあったと思う。発令のタイミングはもう少し早めることができたのでは」。そう語り、住民にとって避難所が必ずしも近いわけでなく高齢者の避難方法を考える必要性も課題に挙げた。

 富山県内は今月十六日にも大雨に見舞われ、黒部市宇奈月では八月としては過去最多の雨量を記録。各地で土砂災害警戒情報が発令された。

どう行動に移すか

 東京大総合防災情報研究センターの片田敏孝特任教授(災害社会工学)は、災害が起きるたびに行政の対応が真っ先に問題視される状況を挙げ、「情報の出し方より、われわれがどう受け止めて行動に移すか。受け取り側の議論に移らないといけない」と強調する。

 犠牲者のいない地域に共通するのは、地域みんなで対応している点だとして、「一人で避難の決断をするのは難しい。地域が協力、支援し、思い合うコミュニティーだと防災はうまくいく」と呼び掛ける。

 富山県内の7月の大雨 4日から8日にかけて本州近くに前線が停滞し、富山市猪谷で5日間の降水量が400ミリを超えるなど激しい雨が降った。人的被害はなかったが、交通機関が乱れるなどした。ピークの5日は上市町の一日の降水量は225・5ミリに達し過去最多を記録。富山市内でも猪谷222・5ミリ、大山211・5ミリなど4地点で最多記録を更新した。神通川水系の坪野川(富山市)が氾濫危険水位に達し、神通川など8河川はその前段階の避難判断水位まで上昇した。

 

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