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特報とやま

増える県内の映画ロケ 都市部にない田園風景 評価

経済効果は把握困難

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 富山県がロケ地になった映画の公開が相次いでいる。邦画大手では二〇一六年に「人生の約束」「カノン」、一七年に「追憶」「ナラタージュ」が公開され、今年は「羊の木」「となりの怪物くん」が封切られた。なぜこれほど、富山で撮影されるのか。流行する「聖地巡礼」の波には、乗れているのか−。(山本真士)

 高岡市のラーメン店「まるなかや」。一六年三月、富山県や石川県が舞台の映画「追憶」の一シーンが撮影された。カウンターには、主演を務めた人気グループメンバー岡田准一さんの写真が飾られている。

 映画撮影は初めての出来事。「こんな機会はめったにない」。店主の北川豊市さん(64)は営業休止の補償を断り、スタッフやエキストラにラーメンを提供。自身も食事客役で出演した。

(上)店内に飾られている「追憶」撮影時の写真=富山県高岡市のまるなかやで(下)「おおかみこどもの雨と雪」の舞台となった古民家=富山県上市町で(いずれも山本真士撮影)

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 公開直後からファンが県外から訪れるように。北川さんは「ブームが落ち着いた今も、お客さんとのコミュニケーションの助けになっている」と笑顔で話す。

 ひと昔前は県内で撮影された映画は少なく、黒部ダムの建設を描いた「黒部の太陽」(一九六八年公開)以外、ほぼ知られていなかった。二〇〇〇年代に入っても、興行で好成績を挙げたのは「釣りバカ日誌13」(〇二年)くらいだった。

 転機は、立山連峰が舞台の「劔岳 点の記」(〇九年)のヒット。観光誘客や地域のイメージアップへの期待から、県内各地の自治体や観光協会、商工会が、撮影を支援する非営利組織「フィルムコミッション」(FC)を設立した。これまでに県内のFCや自治体が支援した映画は五十本を超える。一年当たりの公開本数も増加傾向にある。

 上市町の古民家などが描かれたアニメ「おおかみこどもの雨と雪」(一二年)は興行収入が四十億円を超え、近年の富山ロケ作品では突出した人気作に。古民家はNPO法人が公開している。封切りから五年が過ぎた今も、作品の世界を追体験しようと、国内外からファンが訪ねて来ている。

 富山がロケ地に選ばれる要因として、立山連峰をはじめとする豊かな自然や、田園風景に代表される昔懐かしい暮らしの風景など、首都圏で撮影できない光景の存在が指摘されている。県観光振興室で撮影を支援している田崎博勝さん(47)は「受け入れ側の協力的な姿勢が、映画業界で口コミで広がっているようだ」と分析する。一五年の北陸新幹線開業も「東京からの移動時間を縮め、多忙な俳優の出演作でロケの抵抗感を減らした」と指摘する。

 ただ、映画の撮影が常に地域のイメージアップにつながるとは限らない。県内で撮影され、一三年に公開された「脳男」は、殺人や爆破など暴力的なシーンが多く、富山のPR効果に懐疑的な見方も強かった。

 誘客の効果の測定も難しい。県観光振興室は、これまでにロケ地となった一部の施設で集客が増えたことを確認している。しかし、映画の直接的な影響や地域全体に与えた経済効果は捉えづらいのが現状という。

 映画会社との目的意識の違いから、宣伝に支障が出る場合もある。FCは地域のPRを目指すが、映画会社は興行成績の最大化が目標。芸能の権利関係の問題もあり、ポスターやチラシの校正は一筋縄にいかない場合が多い。スタッフは落ち着いた環境での撮影を望むため、ロケを一般公開で行うこともほぼ不可能だ。

 そうした課題がある中でも撮影を支援する意義について、田崎さんは地域のPRや誘客にとどまらないと指摘する。「映画には地域への愛着を醸成する力がある。住民が撮影に協力したり、スクリーンに映る町を見たりすることで、地域の魅力を再認識できます」

予算減ロケ志向に

 全国組織ジャパン・フィルムコミッション(東京都)の関根留理子事務局長の話 邦画の製作本数は増加傾向にあり、昨年は一千本以上と考えられる。しかし、全体の製作費は増えていない。同じ映像作品であるテレビドラマの制作本数も依然として多く、インターネット配信のコンテンツも増えている。予算、時間、人手が不足する中、二〇〇〇年代に全国的に急増した地域FCの役割が大きくなってきた。スタジオでセットを造るより、ロケで既存施設を借りる方が割安だ。撮影の準備もFCに任せられる。現在の実写の邦画の九割近くは、FCや自治体が支援しているとみられる。

 

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