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「宣伝の恐れ」母校困惑 五輪競技PV 公開禁止

スノーボード女子スロープスタイルに出場した広野あさみのPV。競技団体主催のためメディアに公開できた=12日、富山市水橋辻ケ堂で(柘原由紀撮影)

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 平昌(ピョンチャン)五輪・パラリンピックの応援を巡り、出場選手の母校への規制が波紋を広げている。日本オリンピック委員会(JOC)はスポンサーの権利保護のため、スポンサー以外の団体の露出を規制。北陸でも学校が開く壮行会、パブリックビューイング(PV)のメディアへの公開や、ホームページ、横断幕の掲示が禁じられ、戸惑いが広がる。(柘原由紀、山本真士、山内晴信)

 「企業の宣伝とは違う。公開してはいけないというのは納得できない」。龍谷富山高校(富山市)の藤岳博昭校長が語気を強めた。同校は十二日、卒業生の大江光(22)が出場したスノーボード女子ハーフパイプ予選のPVを校内で開催。マスコミの取材も受ける予定だったが、一週間前に非公開を決めた。

 公立、私立を問わず、学校主催のPVの公開をJOCなどが認めていないと知ったためだ。藤岳校長は「マスコミに囲まれて卒業生を応援する機会は、在校生にとって『こんな学校にいるんだ』と励みになる。彼女が成長したのは、学校や地元の応援があったから。認められないのは残念」と無念さをにじませた。

 JOCや東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は「五輪を連想させる宣伝はスポンサーの権利。メディアへの公開に宣伝の意図がないとは言えない」と規制の意図を説明する。非営利を含め、五輪に便乗した無断の宣伝を禁じる国際オリンピック委員会(IOC)の憲章を根拠としており、競技団体や自治体主催の壮行会やPVの公開は認めている。

 規制は以前からあるが認知度は低かった。平昌から一部緩和されるのに伴い、JOCが全体のルールを周知したところ、意図をくんだ学校側が公開を取りやめる事例が全国で相次いだ。

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 JOCの担当者は「違反した場合は大会期間中の宣伝を禁じた選手の参加条件に抵触する可能性がある」と処分を示唆。「大会の運営だけでなく、選手の育成やスポーツの振興にはスポンサーの資金が必要だ」と理解を求める。

 それでも富山県内ではホームページや横断幕でメッセージを掲げる選手の出身校と、そうでない学校があり、対応は分かれている。

 石川県内ではアルペンスキー女子大回転に出場した石川晴菜(23)の所属先、木島病院(金沢市)がこの規制に苦慮。事務担当者によると昨秋JOCから、石川の名前を使った五輪を想起されるイベントを開催したり、垂れ幕の掲示をしたりすれば、本人が失格になる可能性があるとの説明を受けた。

 石川の五輪出場が決まった際には、マスコミから石川本人のコメントを求められたが、拒否した経緯がある。「JOCの許可なくコメントを出すのが怖かった。彼女に迷惑を掛けられない」と事情を説明した。

東京五輪へ線引き示せ

 関西大の黒田勇教授(メディアスポーツ論)は「JOCは東京五輪・パラリンピックのために全国の大学・学校に選手育成や施設提供で協力を求めている。にもかかわらず、便乗商法として規制をするのは、あまりにスポンサー偏重だ」と違和感を語る。「PVに限れば、IOCと交渉し、少なくとも企業・営利団体以外の主催は認めるべきだ」と提案する。

 早稲田大の原田宗彦教授(スポーツマネジメント)は「こうした取り決めは『業界ルール』。法的な罰則はなく、業界に属さない大学・学校や企業は従わなくてもいい」と突き放す。一方で「選手は業界にいる。人質に取られれば、困ってしまう」と同情する。東京に向けては「日本選手は平昌より圧倒的に多く、影響はさらに大きい。JOCは落としどころを探り、可否の線引きを明示すべきだ」と話す。

 

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