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少部数誌「ジン」じわり SNS全盛の時代に脚光

「ジン」の魅力を語る小林麻衣さん(左)と本居淳一さん=富山県射水市戸破の「ひらすま書房」で(山本拓海撮影)

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 エッセー、詩集にイラストも−。ジン(ZINE)と呼ばれる小冊子が人気を広げている。個人やグループが作る少部数の発行誌で、内容は多彩。スマートフォンの普及で活字離れが進む中、逆らうように各地で輪が生まれ、北陸でも富山県射水市や金沢市などのグループが活動する。その魅力とは−。(山本拓海)

射水のグループ

展示会などで魅力発信

 「内容は何でもいいんです。自由なのがジンだから」

 射水市戸破の古書店「ひらすま書房」で、店主の本居淳一さん(40)が野宿を題材にしたお気に入りの一冊を手に語る。市内のデザイン会社に勤める小林麻衣さん(34)と一年前にグループ「zineと、」を結成し、ジンの展示会や制作体験会を開いている。

 思いを書きつづってインターネットで公開する「ブログ」が定着し、考えを気軽に発信できる会員制交流サイト(SNS)も全盛期を迎える現代。電子書籍も流通する中、あえて冊子の形を選ぶ理由は何か。富山県黒部市の古書店店主、天野陽史さん(33)は「アートやデザインなどの作家のジンは、それ自体が作品。紙質、印刷、製本までこだわっていて、冊子にすることに意味がある」と、少部数ならではの良さについて語る。

 金沢美術工芸大(金沢市)では二〇一二年から毎年、学生有志が冊子を作って販売する「ジン・プロジェクト」を続ける。昨年の展示会では、撮りためたラーメンの写真にコラムを添えた「ラーメン100」、焼き肉に使う肉の部位を短歌で覚える「肉」などユニークな二十二種類が登場した。一般の書籍にはなりづらい個人的な興味や、独自の視点で書かれた内容が読者を引きつけ、外国人観光客からも人気を集める。長い時間をかけて大作を仕上げる美大生にとって、ジンは気軽に作って発表する制作物として最適という。

 作り方にも決まりはない。手書きした数枚の紙を束ねたものから、きれいに製本したものまで幅広く、無料配布か独立系の書店などで低価格で販売される。簡単な冊子なら数時間で仕上げられる。「伝えたい、表現したい気持ちが込められていればジンになる」と小林さん。本居さんは手軽さを生かし「お客さんに作ってもらい、店で展示販売できるくらいになれば」と思いを膨らませている。

目的で使い分けるツール

 甲南大文学部の西川麦子教授(文化人類学)の話 ジンはSNSと対照的ではなく、ともに目的によって使い分けられるコミュニケーションツール。一般の流通に乗らないジンは読み手に届けるまでの方法を考える必要があるのも特徴で、作り手との対話の場ができるのが良さ。無理に定義しないことが可能性や裾野を広げていく。

 ジン 文章や絵、写真を印刷した紙を束ね、とじ具や糸でとめた手作りの小冊子。1930年代ごろに米国で生まれ、SF好きや音楽好きの間で発達したとされる。ミニコミ誌や同人誌に近い。東京都目黒区でジン専門店を営む「MOUNT ZINE(マウント・ジン)」によると、日本ではこの10年でジンと呼ばれるようになった。ファンジン(ファン+マガジン)が由来とされる。

 

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