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「代理報復」匿名で過熱か 「はれのひ」店名被害を考える

被害を受けた「ハレノヒ・ジョワ富山店」=富山市内で(向川原悠吾撮影)

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中傷の電話鳴りやまず

 ある日突然、耳目を集める事件・事故の関係者と間違われ、無言や中傷の電話が殺到する。そんな災難が誰の身にも降りかかる時代かもしれない。成人式用の振り袖が届かないトラブルが相次いだ「はれのひ問題」で、店名が似た富山市内の同業他社が被害を受けた。背景に何があり、どう対処すればよいのか。(向川原悠吾、山本真士)

 成人の日の八日昼前。富山駅前にあるハレノヒ・ジョワ富山店で、五台ある電話の呼び出し音が一斉に鳴りだした。テレビやインターネットで「はれのひ問題」が報じられた直後だった。顧客からの問い合わせのほか無言電話も。「おまえ以外に誰がやったんだ」と一方的に怒鳴り、説明を聞いてもらえない人もいた。全従業員五人が対応に追われ、業務はしばらく滞った。

 「やはり来たかと思いました」。本多智行店長(50)は“標的”になった当時の心境をそう振り返る。店の名前や業務が「はれのひ」と似ている上に、店のツイッターに「はれのひ」と同じロゴを載せていた。資本関係はないものの、「はれのひ」の社長の助言を受けて開業した経緯があり、ロゴはその名残だった。

 本多店長の脳裏をよぎったのは、神奈川県の東名高速道路でワゴン車が大型トラックに追突され、夫婦が死亡した事故。事故や容疑者とは無関係なのに、インターネット上に「容疑者の父」とのデマを流され、嫌がらせの電話が職場に殺到した福岡県の男性と、自分たちが重なった。問い合わせてきた顧客には事情を説明し、キャンセルは数件にとどまった。しかし、風評被害のせいか、例年に比べ客足が遠のいている。今月の売り上げは、昨年同期から八割の大幅減を見込む。

 同様の被害は他県でも。東京都の和装挙式の専門会社「晴レの日」には十日正午までに、無言や中傷の電話が約二百件寄せられた。現在も一日当たり数十件の無言電話がかかるという。広報担当者は「興味本位でかけてくるのではないか。新規顧客獲得への影響を心配している」と話す。

黒川・富山大准教授が指摘

 富山大人文学部の黒川光流准教授(社会心理学)は「被害者をかわいそうだと思い、被害者と関係ない人々に、代わりに仕返しする『代理報復』の心理が働いたのではないか」と分析する。

 「そうした人々は当事者ほど真剣に情報を吟味しない。最初に目にした情報が全てだと解釈しやすい」と誤解の背景を読み解く。

 電話という手段にも注目する。「人は匿名性が高くなると、自己規制を解除し、普段と異なる言葉や感情を出しやすくなる。相手の状況を目にしなければ、迷惑を掛けても責任を感じにくく、行動はエスカレートしやすい」と指摘する。

 そうした事態に巻き込まれた場合には、反発や不信感を招きやすい真っ向否定は避け、「よく間違えられるんです」などと相手の言い分をいったん受け止める対応が沈静化に有効という。代理報復を考える人に対しては「相手が加害者だとしても、制裁を加えることが正しいのか。トラブルに遭った新成人を助けたり、成人式の再開催を考えたりする人のように、被害者のための行動を考えるべきだ」と諭す。

 

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