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富山型デイサービス「にぎやか」(7) 心に「おたがいさま」

にぎやかを支えていこうと決めた家族3人=富山市のにぎやかで

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 毎朝、誰よりも早く来てにぎやかの一日が気持ちよく過ごせるようにと玄関掃除、花の水やり、寒い日には、まきストーブに火をいれるなど準備する。その人は、にぎやか利用者の父親だ。今年仕事を引退し、「ボランティア」をライフスタイルに取り入れた。

 三十七年前の五六豪雪の時。雪を捨てるために開かれていたマンホールに小さな女の子が落ちたことで景色が一変する。小さな住宅街に大きな人だかりができていた。母親は近所の人から「あんたとこの娘だよ」と声をかけられ、意識がなく、唇は真っ青の娘の姿を目の当たりにする。救急車に運ばれ、一命は取り留めたものの意識不明のまま三カ月が過ぎた。

 当時の医療スタッフの懸命な対応で奇跡的に回復。当時五歳で翌年、小学校にあがるはずだった娘には重度の身体と知的の障害が残った。にぎやかと出会ったのは開所したばかりの二十一年前。それからほぼ毎日のように娘を通わせた。

 孫ができた時も、急に用事ができた時も、自身が体調を壊した時も「お願い!」と言えば、にぎやかが対応してくれた。おかげで障がいの娘を持ちながらも、何不自由なく生活が送ってこれた。

 それが昨年、にぎやかの休業宣言。父親とともに他のデイサービスを探し始めた。すぐに見つかると思っていたが、「障がいが重いという理由で断られたり、日曜日預かってくれるところがみつからない」と途方に暮れた。

 にぎやかの存在の大きさを改めて感じ、長年の付き合いで「やってもらって当たり前」という気持ちがあったことに気づかされた。家族三人穏やかに暮らしていくためにも、親亡き後の娘のためにもにぎやかが必要。だからこそ、家族は預けるだけでなく、にぎやかを支えていこうと決めた。

 一度はやめてしまいたいと思ったにぎやかだったが、「必要とされている」ことが再開の大きな動機づけになった。そして、何より利用者の喜ぶ顔、利用者家族の応援から大きな勇気をもらっている。

 介護保険制度が始まって十八年。介護サービスが充足する中、サービスを売る、買うといった需要と供給の経済の渦中にのまれていった。いつの間にか、利用者さんはお客さま権利意識が高くなり、一方で介護の仕事はどんどん息苦しくなっていった。

 より良い介護は「心ありき」だからだ。決して物を売っているわけじゃない。介護に従事する人の心が満たされない限り、いくら介護ロボットが開発されても介護に未来はない。介護事業の根底である相互扶助「おたがいさま」の感謝の気持ちを大切にしていきたい。 (理事長 阪井由佳子)

 

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