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NPO通信

富山型デイサービス「にぎやか」(6) 弱者 決めつけないで

生まれたての赤ちゃんを抱く彼女=富山市で

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 四月二十二日正午すぎ、十時間の陣痛に耐え、無事に二二六〇グラムの元気な男の赤ちゃんが生まれました。

 経験したことのない痛みにこらえきれず目からあふれ出す涙。それでも泣き言一つ口にせず、声を押し殺し、一生懸命その痛みに耐える姿は立派だった。恥ずかしながら、見ている私の方が泣きっぱなしで情けない状態だった。

 母子ともに問題なく、予定どおり五日目には退院。真っ白のおくるみにくるまれた天使とともに、彼女はにぎやかに帰ってきた。これまで一緒に過ごしてきたデイサービスの利用者さん、スタッフ、ボランティアが待ち受け、「おかえり〜」「おめでとう」とそれぞれの思いを口にして歓迎した。大きな声を出すと、赤ちゃんがビックリするからと、小さなささやき声で。優しさと思いやりにあふれたあたたかい空間だった。

 小学三年生の時に受けたいじめがきっかけで、不登校、摂食障害、リストカット、不眠、自殺企図。彼女はれっきとした「精神障がい者」だった。これまでさまざまな問題を起こすたびに対応し、支援してきた私も彼女を一人の女性として尊重しつつ、どこかで「弱い人」として見ていたことは否めない。

 だからこそ、今の彼女の立派な姿に驚きを隠せない。夜泣きする赤ちゃんをどうしてあげたらいいのかと、一緒に泣きながらも優しく腕に包み込む。寝不足で迎えた朝、「おはよう」とほほ笑む彼女は、日々成長していくようだ。どこをとっても今の彼女は「弱者」でも「障がい者」でもない。

 昨今、新聞をにぎわせている「旧優生保護法」。当時、障がい者施設に入所していた女性が職員から「生理の始末が自分でもできないのだから」と不妊手術をさせられたとのこと。信じがたい事実だが、これは決して過去の話ではなく、優生思想も専門職による管理主義も形を変えて、今も存在すると思う。

 「障がい者」という肩書はさまざまな福祉サービスや専門的な支援を受けるために必要なレッテルではあるが、障がい者だからという理由で、彼女らを弱者とみなし生き方に制限をかけるようであってはならない。障がいによって不自由な事があっても、当たり前の生き方、希望、夢をもって生きられる社会にしたい。そして、そのために私たちのような専門職があるのだ。 (理事長 阪井由佳子)

 

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