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富山型デイサービス「にぎやか」(4) 家族の心も支えたい

家族そろって行った宇奈月温泉旅行=黒部市で

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 「お父さんや息子の食べたい物ばっかり買っちゃうのよ。女ってうぞいもんよね…」。九十六歳の認知症の夫、六十八歳の精神障がい者の息子と暮らす女性は八十八歳。にぎやかに通う三人家族だ。

 女性の息子は幼いころ、デパートの遊園地で遊具から落下。頭部を強く打撲したことが原因で、てんかん発作を起こすようになり、十三歳で精神科に入院した。信じがたいことだが、五十年もそれが続いた。

 当の本人を見れば、そこまでの入院治療が必要あったとは考えにくい。精神障がいへの偏見の強かった時代背景や、どちらかといえば本人を取りまく家族の事情による「社会的入院」の要素が強かったように思う。

 女性が八十三歳のとき「家族三人で暮らせるのもこれが最後になるから」と乗り気でない夫を説得し、息子を退院させることを決めた。それから五年の月日が流れ、最初は息子だけがにぎやかに通っていたが、夫は認知症に、女性も病気になり、今は全員がにぎやかに通っている。

 老いていく日々のなか、毎日が綱渡り。障がいがある息子のふがいなさが許せない父は、終始息子の行動をにらみつけ注意する。それに対し、認知症が進む高齢の父親をばかにするような態度で激しく口答えする息子。そんな二人を涙ほろりで、悲しみにふせる母。

 朝、お迎えに行くと、そんな家族のいざこざに巻き込まれることが日常茶飯事。「どうしたがいね〜!(笑)」。にぎやかなスタッフの声が聞こえた途端、女性の心は安らぐ。

 障がいのある人や認知症の人を支援していくとき、その本人の問題点やニーズに着目し、個の支援になりがちだ。たとえ息子がデイサービスを利用し、ひとときの安堵(あんど)を得ても、死ぬまで親としての責任は重くのしかかる。

 在宅生活を支えるとは、家族を支えること。日々の暮らしのなかで、家族の心の隙間を埋める第三者の存在となるのがケアマネジャーやデイサービス、ホームヘルパーなど在宅三本柱を担うスタッフ一人一人だ。

 しかし、人材不足が深刻になる世の中、そこまで求めるのは夢のまた夢のような話かもしれない。突き進む高齢化に、誰が私の老いを支えてくれるのだろう。とても心配になる。 (理事長 阪井由佳子)

 

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