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NPO通信

富山型デイサービス「にぎやか」(3)

老いも若きも笑う門には福来る!=富山市のにぎやかで

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認知症 寄り添う心を

 「娘が私のお金全部取っていった」。そう訴える女性は八十一歳。四十五年間会社勤めをしながら娘二人を育てた立派な母親だ。しかし、夫をなくし一人暮らしになってから徐々に認知症が進んでいった。

 「物取られ妄想」には、否定せず、その都度本人が納得するまで一緒になって捜してあげることが認知症ケアの基本となる。しかし、この女性は一向に良くならなかった。真剣に向き合い丁寧に説明すればするほど妄想が広がり、険しい顔つきになった。しまいには家に閉じこもりがちになり、部屋中に「泥棒くるな!」と書いた張り紙が。

 こうなると、実の娘は自分のせいで症状が悪化するのではと、できるだけ刺激を与えないように遠ざかる。腫れ物にふれるように、おそるおそる接するようになり、どうして良いかわからず相談にやってきた。

 女性は認知症とはいえ、見た目は年齢よりずっと若く、自立した生き方を貫いてきたことがうかがえた。認知症のおばあちゃんというより人生の大先輩だ。あくまでも尊敬の念を持って接しつつも、荒業かもしれないが、私は彼女の言うことにうそ偽りなく接することにした。それが彼女への敬意でもあり、症状を緩和する方法だと、これまでの経験から感じていたからだ。

 彼女が「なくなった」と言えば「あんたの勘違いだわ」。「盗まれた」には「盗むほどのお金持っとったんけよ!」と憎まれ口にも近い返答に、彼女は「勘違いなんかせんちゃよ。ぼけとらんもんに」と言い返す。すかさず私が「なんだちゃ、だいぶぼけとるわ!」と言うと「ぼけはあんただねか!」と二人で大笑い。そして「あーれ! 久しぶりに笑ったわ」と彼女は言うのだ。私という口げんか友達ができたからか、症状は次第におさまっていった。

 認知症に一番戸惑っているのはきっと本人であり、介護が必要となったことに大きな後ろめたさを抱え、現実を認めたくないと苦しんでいるのも本人であろう。認知症による問題行動は理由なく生じることはなく、本人の心の葛藤やそれまでの人間関係から起因することが多いという。

 薬物投与で問題行動を抑える方法もあるが、実は薬よりも人間同士の関係性の構築で改善できることもある。どんなにぼけても心は病んではいない。本人の心に寄り添い孤独にさせないことが大切だ。 (理事長 阪井由佳子)

 

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