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「#MeToo」の先へ(下)

◆労働ジャーナリスト・金子雅臣さん

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 「#MeToo」の広がりを国内外で比べると“日本らしさ”が見えてくる。労働ジャーナリストの金子雅臣さん(74)は「(日本では)加害者への追及が十分にされず、議論がストップする」と指摘。社会にはびこる性差別や人権意識の遅れが根底にあると分析する。

 社会が何をセクハラと捉えるか、三つの段階があります。

 第一段階は、下品さや性的な意味合いの強さ。この段階は日本もクリアできていて、だから前財務次官のケースでも「あれはひどい」となった。

 第二段階は、被害を受けたと感じた人を基準にセクハラを捉えられるかどうか。人権の問題です。みんなが「被害者に聞くなんてとんでもない」と思うならこの段階もクリアできますが、日本は今ここを行ったり来たり。本来は加害者を追及しなきゃいけないのに、被害者にも落ち度があったんじゃないのか、と責めるような構造がある。

 そして第三段階は、加害者と被害者の間に相手がノーと言えない力関係があればそれはセクハラ、人権侵害だと判断できるかどうか。ここはまだまだです。つまり、セクハラかどうかは被害者意識の有無と力関係で判断する。これをはっきりさせればいいんです。

 世界の「#MeToo」はどうか。米国や韓国では、追及されるのは告発を受けた相手側です。説明できなければ職を辞す。

 セクハラの加害者がどんな言い訳をしても、ラッキョウの皮をはぐように問い詰めていくと、立場の優位さ、力関係を利用していることが分かってくる。しかし、日本は男社会であり、男女差別が構造的に強い。人権尊重の意識が遅れていて、男性が加害者の場合、説明責任を果たさずに逃げることが許されてしまう。

 前財務次官のセクハラ問題では政治家の発言にも「たかが言葉のセクハラ」「こんなことで有能な人間を首にできない」といった本音がにじんでいた。かなりの男性が「その通り」と思っていたのでは。

 五輪を控え、日本への(人権意識改善の)国際的な圧力が強まってくるはず。国際労働機関(ILO)はセクハラ禁止条約の制定に向けて動いていますが、日本は「保留」です。

 次の段階に行くために日本が自ら「性差別禁止法」をつくるべきです。被害者の主張を尊重し、加害者をきちんと追及するシステムを明文化する。

 「#MeToo」自体は評価されるべきだ。ただし「女性が勇気をもって声を上げるべきだ」というだけでは女性問題で終わってしまう。告発して犠牲を強いられる女性を増やしてはいけない。男社会を切り崩さないと。「#MeToo」の先へ進めるかどうか、社会の差別構造や人権意識の低さを変えられるかどうか、日本そのものが問われている。(談)

 一般社団法人「職場のハラスメント研究所」(東京)代表理事。東京都職員として30年近く、労政事務所(当時)で労働相談に携わった。労働ジャーナリストとして執筆や講演などを多く手がける。主な著書に「壊れる男たち セクハラはなぜ繰り返されるのか」「部下を壊す上司たち」など。

 

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