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「#MeToo」の先へ(中)

◆メディアは変われるか

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 日本の「#MeToo」運動の行方に世界の注目が集まる契機となった元財務次官の女性記者へのセクハラ問題では、セクハラを看過しているなどとして、メディア業界への批判も高まった。元毎日新聞記者で、弁護士として性被害事件を数多く扱う上谷さくらさんは、メディアの体質に「内側に目を向けない」という日本社会の問題点が凝縮されているとみる。

 性犯罪被害当事者と報道関係者でつくる「性暴力と報道対話の会」が次官の問題後に行ったアンケートによると、加害者は取材先などが40%でしたが、上司(24%)や先輩(19%)も目立った。メディア自身が、セクハラを人権問題と考えられない人を抱えています。

 もしも社内で被害に遭った女性が声を上げて、加害上司が配置換えになったとします。「君は悪くない。ずっと仕事を続けて」と言われても、「あの女のせいで誰々が飛ばされた」と陰口を言われ続ける現実がある。そういう話をマスコミの幹部にしても「絶対にうちはない」「耳に入ってこない」と自己防衛に走る。

 財務次官の問題を受けて、各社、何らかの対応はしています。ただ、女性記者が被害に遭っても「かわいそうだけどしょうがない」「うまくかわしとけよ」という空気はまだまん延してると思う。

◆男性も当事者意識を

 人権感覚がないわけじゃないんですよ。外でそういうことがあれば、ものすごい敏感に反応して、追及するので。ただし、内側にアンテナが向いていない。セクハラは男性が当事者意識を持たないと絶対になくならない。では、どうすれば当事者意識を持ってもらえるか。まず、メディアの問題を考えることは意義があります。

 もともと記者は、取材相手にひたすら「お願いします」と言う一方的な関係をつくられやすい。「相手をうまく利用してネタを取るのが取材スキル」とされてきたし、昔から出産などで「女は面倒くさい」と言われて、被害を相談すれば周りの女性記者の迷惑になるという気持ちも生まれます。

 だから「もう考えるのが面倒」「事故にでも遭ったものと思って忘れよう」となる。意思表示がないと、相手は勘違いしてエスカレートする。被害事実にふたをしたまま、ヘラヘラして「もう、やめてくださいよ」くらいしか言えない。負の連鎖です。メディアが典型例ですが、男性社会ではこうした現実がある。

 「セクハラ」と聞けば、「女の人は大変ね、頑張って」と人ごとみたいになるけど、そうじゃない。同僚が被害に遭った時に自分がどう感じるか。「それでネタ取れてるからいいじゃん」と傍観するのか、「うちの会社や記者がバカにされている」って怒るのか。今は傍観する方が大勢だと思う。「やっぱり、おかしい」「みっともない」。まずはあなた自身がそう感じてくれるといいな。

(談)

<弁護士・上谷さくらさん> 毎日新聞記者を経て、2007年に弁護士登録。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長、青山学院大法科大学院の実務家教員などを務める。保護司。

 

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