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朝夕刊

「#MeToo」の先へ(上)

◆ブロガー はあちゅうさんの場合

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 性被害を告発する欧米発の運動「#MeToo(私も)」。日本でも今年春の前財務次官の女性記者へのセクハラ問題などで注目されたが、その後の広がりは鈍い。「私も」の声は途絶えてしまうのか。それとも「私たち」の問題として定着できるのか−。日本での運動をよく知る三人に語ってもらった。まずは、電通時代の被害を公表したブロガー・作家のはあちゅうさん(32)から。

 電通に入社した二〇〇九年から退職した一一年まで、先輩からのハラスメントが続きました。夜中でも電話がかかって自宅に呼び出され、性的な言動を繰り返されました。「広告業界では生きていけなくなるぞ」と脅されもしました。

 部署によっては体育会の気質が強く、下積み期間を乗り越えた人が偉いというような風潮がありました。私よりひどい目に遭っている人もいる中で、「ちゃんと受け流せるのが社会人」「自分はこらえ性がないんじゃないか」という気持ちになりました。

 すぐ上には優しい先輩がいましたが、ハラスメントの当事者の先輩は会社を代表する有名クリエーターだったので「大変だな」と同情はされましたが、解決には至りませんでした。

 その後、フリーになり、一七年十二月にウェブメディアで被害を公表しました。当事者の先輩に憧れた弱い立場の学生たちが第二、第三の被害者になると不安になったんです。当事者からは、退職後も嫌がらせを受けており、仕事上でも支障がありました。

 公表するまでは、他のセクハラ被害者のニュースを見ても「私は我慢したのに…」と思ってしまうこともありました。でも、セクハラは個人じゃなく、社会の問題です。何もアクションを取らないことは、その社会を後押ししていることと同じ。「こういう社会でいいんですか」と問題提起のつもりだったんです。

 黙っているのも地獄でしたが、公表しても地獄でした。ネット上のバッシングはかなりひどく、一時期、生きる気力を無くしていました。威勢よく意見を言うキャラクターでメディアに出ていたので「訴える資格ない」「女を使って仕事をしていたくせに、被害者ヅラですか」と。味方なんていないという気持ちになりました。

 メディアでの報道も正確でない部分があったし、業界からの反応は驚くほど薄かったです。みんな触れられたくない部分なんだな、ずっと一人で戦わなきゃいけないんだな、何年たっても「私」の問題なんだなって。だけど、だからこそ構造的に変えていかなきゃいけないと思います。

 やはり、必要なのは男性の意識改革。圧倒的に男性が多い会社では、意を決して男性に相談しても、まともに取り合ってもらえず、一笑に付されることがある。海外はトラブルがあっても転職しやすい環境があります。

 日本では不用意に女性を助けて不利益を被ると、出世できないように思ってしまう。そこを変えないと社会も変わらない。訴えを真摯(しんし)に聞いて、自分の身内に起きたことと思って対応をしてほしい。そういう人がいるだけで全然違います。 (談)

(聞き手・松本浩司)

 <#MeToo> 2017年10月、米映画界の大物プロデューサーによるセクハラが報じられたのを機に、会員制交流サイト(SNS)のツイッターなどで「#MeToo」と目印を付けて性的被害を訴える投稿が世界中に広がった。

 欧米を中心に多くの加害者が公職を追われる一方、加害者側に弁明の機会を与えずに断罪するなど、運動の行きすぎを指摘する声も出ている。

 

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