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就活指針廃止表明、県内にも波紋

◆「地方、中小不利に」「実情に合っている」

会社説明会の解禁日に開かれた就活イベントに集まった大勢の学生たち。こうした光景は過去のものになるのだろうか=3月1日、浜松市内で

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 経団連の中西宏明会長が就職活動の解禁時期などを定めた指針を2021年卒業の学生から廃止すべきだとした発言が、県内経済界にも波紋を広げている。「実情に合う」と理解を示す声も聞かれたが、大手の人材獲得競争のさらなる激化に伴い地方や中小が不利になるとの懸念や「一定のルールは必要」との注文が相次いだ。

■困惑

 「東京五輪で会場確保が困難になる問題もある。早く決めてもらいたい」。ヤマハ発動機の広報担当者は戸惑う。経団連の方針に沿って採用活動を進める予定だが、安倍晋三首相が廃止反対の意向を示すなど先行きは不透明で「スケジュールを立てたくても立てられない状況」。二一年入社の採用日程は未定という。

 「仮に大学一年生の頃から就職活動をするようになれば、『来年こそは』と大手企業に再チャレンジする人が増える」。こう見通すのは、学生らの地元就職を後押しする浜松商工会議所人材支援室の担当者。一方で「中小に目を向ける動きが減り、内定を出しても辞退されるケースが続出するのでは」とみる。

 運転手や介護といった採用が厳しい職種を多く抱える遠州鉄道(浜松市中区)の人事担当者も、同様の不安を抱く。経団連の会員企業による採用活動の前倒しや人材の囲い込みといった競争がさらに激化すると見込まれ「既に地方では優秀なUターン就職者の人材確保に苦慮している。学生への接触機会の減少も含め、少なからず影響が出るのでは」と気をもむ。

 経団連の指針より早い時期から採用活動を行う県内企業の関係者は「インターンシップ(就業体験)から実質的な採用活動を始める傾向が強まる」と推測。「一方である程度の目安は必要。何も縛りがないと大手以外が採用しにくい状況になる」と指摘する。

 県内のある金融機関の採用担当者も「一定のルールがないと、十月一日に内定式を開いても、その後に学生を引き抜き合うなど、何でもありになる。ある程度の指針はほしい」と注文する。

■現実

 経団連が現在打ち出す採用指針は会社説明会が「三月一日」、選考活動が「六月一日」の解禁だ。ところが就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京)の調査では、一九年三月卒業予定の大学生の就職内定率は今年六月一日時点で68・1%と前年比で6・2ポイント増。人手不足を背景に、優秀な人材を囲い込みたい企業が選考を前倒しし、指針が形骸化している現状が浮かぶ。

 経団連の地方組織である県経営者協会の役員は「近年は学生優位。六月に採用試験が解禁になっても、ほとんどの企業が採用枠を満たせず、秋にも採用を続けている」と指摘。「実質的に通年採用の流れになっており、そうした傾向の中での(中西氏の)発言は理解できる」との認識を示す。

 ヤマハの人事担当者は「就活ルールが廃止されると、採用活動の早期化・長期化が想定される。優秀な人材の獲得に向け、通年採用なども含め、柔軟に対応していく」とコメントした。

(山田晃史、久下悠一郎、伊東浩一)

 

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