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朝夕刊

スズキ、ヤマハ発不適切検査 ルール順守 浸透せず

◆「検査員の教育不十分」

 日本のものづくりを揺るがしている不正検査の問題が、スズキとヤマハ発動機でも発覚した。SUBARU(スバル)や日産自動車などとは異なり、ともにデータを改ざんするなどの悪意はなかったとするが、その姿勢から透けるのは、長年かけて築いたブランドや製品に対する認識の甘さだ。

 スズキは二〇一六年にも燃費データの不適切な測定が発覚。開発部門の効率追求が背景にあったとして、技術者の再教育やチェック機能の強化を進めた。しかし、同様の問題が今度は生産部門で起きた。前回の教訓を社内で共有できていなかったことは否めない。

 ヤマハ発動機も同じだ。社内で検査マニュアルをつくる際、規定の理解が不十分で検査後のチェック項目から抜け落ちていた。自動車だけでなく、国内を代表するメーカーで相次ぐ不祥事を他山の石とすることができなかった。

 たとえ車の性能に影響がなかったとしても、メーカーに対する信頼が損なわれれば、消費者がその車を見る目は厳しくなる。鈴木社長が会見で語ったように「トップ自らが現場の声を聞いて人員や設備面の増強を進め、不正の起きない体制を整える」ことが急務だ。

 日産自動車やSUBARU(スバル)に続き、スズキとヤマハ発動機でも発覚した新車の不適切検査。ともにデータの改ざんといった悪意はなく、車の性能にも影響はないとしたが、国が課したルールを順守する意識が社内に浸透しきっていないことが浮き彫りになった。

 「社内のチェック体制と検査員の教育が不十分だった」。東京都内で会見したスズキの鈴木俊宏社長は沈痛な面持ちで語り、頭を下げた。

 問題があったのは出荷前の新車の抜き取り検査。車両を一定のパターンで走らせる際、決められた速度や時間の範囲を超える「トレースエラー」が生じると、正確な燃費や排ガスの値が測定できないため検査を無効にしなければならない。しかし、マツダを含む三社はエラーを見落とし、有効なデータとしていた。

 中でも、スズキの不適切検査の比率は群を抜く。二〇一二年以降、四輪車を製造する湖西、相良、磐田の各工場で抜き取り検査をした一万二千八百十九台の実に49・9%、六千四百一台に上った。

 鈴木社長は「排ガスや燃費試験に詳しい管理職を配置しておらず、検査が工場任せになっていた」「全ての検査員が仕組みを正しく理解しているわけではなかった」と反省を重ねた。しかし、開発中の車両の燃費を国の規定と異なる方法で計測していた問題が発覚してまだ二年。舞台となった開発部門の社員研修やチェックを強化する組織改定に取り組み、再発防止を図ったはずだった。

 再び「仕組みの不理解」による問題が、今度は生産現場で起きたことに「取り組みを続けてきたが、広く深くは行き渡っていなかった」とうなだれた。会見では今月七日付で各工場の検査員を監督する管理職を配置したと説明した。

 一方、ヤマハ発動機は、磐田市の本社工場で生産した二輪車で不適切な検査が発覚。データの残る一六年一月以降、抜き取り検査をした三百三十五台のうち七台(2・1%)と比率は低いが、都内で会見した渡部克明副社長は「社内で抜き取り検査に関する基準を作る際、トレースエラーの項目が抜け落ちていた。現場の検査員も認識がなく、発見できなかった」と説明。ルールへの認識の乏しさが目立った。対策として、現場のリーダーや監督者による確認作業を始めたほか、エラーがあった場合に自動で測定を中止するシステムの開発を検討するとした。

(西山輝一)

◆チェック体制不備

不適切検査問題の記者会見で厳しい表情を見せるスズキの鈴木俊宏社長(中)=東京都千代田区で

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 スズキの鈴木俊宏社長の記者会見での一問一答は次の通り。

 「みなさまに多大なご迷惑をお掛けし、心よりおわび申し上げます。社内のチェック体制ができてなく、教育が不十分だった」

 −検査員は不正な処理だと認識していたのか。

 「判定基準があやふやに理解されていた。管理体制の強化と検査員の教育をしっかり進める」

 −検査設備に問題は。

 「設備の改修も進めていきたい」

 −業績への影響は。

 「顧客や販売店に心配を掛けるが、徹底的に説明し理解をもらいたい」

 −リコール(無料の回収・修理)の可能性は。

 「排ガスや燃費の数値は満足しており、考えていない」

 −二〇一六年にも燃費の不正測定が発覚した。

 「法令順守強化の取り組みが広く浅くとなり、教育が深く行き届かなかった」

 −SUBARU(スバル)が同様の不正を発表した今年六月に社内調査をしていたら、早期に対策ができた。

 「確かにその通りだ。チェック体制の不備で、この時期になった」

 −経営陣や管理職の処分は。

 「態勢の立て直しを優先した上で決める」

◆多角的検証が不足

会見で不適切検査について説明するヤマハ発動機の渡部克明副社長(右から2人目)=東京都港区で

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 ヤマハ発動機の渡部克明副社長の記者会見での一問一答は次の通り。

 「お客さまや取引先の皆さまに深くおわび申し上げる。早急に対策を打つ」

 −リコールの有無は。

 「法規的には十分適合しているので、リコールはしないと判断している」

 −不適切検査の原因は。

 「抜き取り検査の品質基準をつくるとき、項目が抜けてしまった。多角的な検証などが不足していたと反省している」

 −こうした検査が過去から続いていたかもしれない。

 「否定はできないと思う。基本的に同じ管理方法でやっている」

 −ブランドや販売への影響は。

 「お客さまに迷惑を掛ける品質ではないと自負している。ただ、こうした説明をしなければならない不備については、丁寧に説明する」

 −メーカーで不適切な検査が相次いだ。

 「弊社の場合は悪いことをしているという認識がなかった」

 −関係者の処分や、経営陣の責任の果たし方についてどう考えるか。

 「関係者の処分は考えていない。経営の問題と認識している。再発防止を徹底していきたい」

 

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