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外国籍生徒、支援が急務 語学指導に現場奔走

◆浜松市の小中校 過去最多

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 浜松市内の公立小中学校に在籍する外国籍の児童生徒が千七百二十七人(五月一日時点)となり、統計を取り始めた一九八九年から過去最多となった。市は全体の六割に当たる千八十五人に「日本語指導が必要」と判断しており、増え続ける外国人児童生徒に対し、官民の支援の充実が急務となっている。

 「次の式の値を求めよ」

 ある日の土曜日、中学校の数学の教科書を広げ、フィリピン国籍の少年が首をかしげた。数式が解けないのではない。「カンジがわかんない」のだ。

 少年のようにフィリピンから来日してまもなく、学校の日本語についていけない子ども二十〜三十人が、NPO「フィリピノナガイサ」が中区の市南部協働センターで開く支援教室に参加している。隣には同郷の高校生や年配の日本人ボランティアらが座り、漢字の読み書きを教える。

 来日八カ月の竜禅寺小六年和田夕奈さん(11)=中区=は、日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれた。五月下旬の支援教室では、小二で習う漢字を勉強。「会」「考」は分かるが、「野」「帰」が読めない。「北」を書こうとすると「比」と書いてしまう。

 和田さんが頼るのは、四年前にフィリピンから来日した浜松江之島高二年のアバス・マリさん(16)。昨年十月からナガイサでボランティアを続ける。「北はね、こう書くの」。自分がかつて使っていた漢字のプリントを見せながら、アバスさんは書き順を丁寧に教える。「自分も漢字の勉強がつらかった。だから、手助けしたい」と話す。

 学校現場も対応に奔走している。浜北区の浜名小では、フィリピンとブラジル出身の三十三人の外国籍の児童生徒が在籍する。タガログ語が話せる教員や外国人児童専門の教員がいるほか、NPOや市から職員を派遣してもらって対応。放課後には週二日、地域のボランティアが教えに来る。

 それでも、中村房巳(ふさみ)校長は「全体の児童数も年々増え、外国人児童を支援する教室が足りていない。教える側の人手も足りていない状況です」と現場の苦しい実態を語る。

 市は、外国人児童生徒の在籍数や学校からの要請に応じて、バイリンガルの就学支援者やNPO職員を各校に配置。別室で集中的に教える「取り出し授業」や、通常授業で生徒の横に付いてサポートする「入り込み授業」で学習支援しているが、追い付いていないのが現状だ。

 在日外国人問題に詳しい静岡県立大の高畑幸(さち)准教授は「市はNPOとも連携して対応しているが、外国人児童の増加のスピードは想定以上」とした上で、「サポートの継続性を高めたり、就学前の語学支援など充実を図る必要がある」と提言している。

 浜松市によると、市内の公立小中学校の外国籍児童生徒数は、二〇〇八年のリーマン・ショックの影響で一四年まで減少を続けていたが、近年、フィリピン人を中心に増加傾向にある。

 市教育委員会の外国人支援グループによると、市内百四十六の小中学校の83・6%に当たる百二十二校に外国人児童生徒が在籍している。国籍はブラジルが約五割を占め、フィリピンが二割弱、ペルーとベトナムがそれぞれ一割程度などとなっている。

 特にフィリピン国籍の児童生徒は、一一年の百四十四人から、今年までの七年間で二百九十三人と倍増した。高畑准教授は「フィリピン人は、日系人の家族移住や呼び寄せによる連鎖移動のほか、永住資格を取得した結婚移民の女性たちが、家族を呼び寄せている」と分析する。

 地域別では、浜北区はフィリピン、南区遠州浜や中区高丘地区にはベトナムやブラジルなど多国籍の子どもが多いとされる。

(篠塚辰徳)

 

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