トップ > 中日新聞しずおか > 朝夕刊 > 記事

ここから本文

朝夕刊

米朝首脳会談 県内識者らに聞く

◆半島の繁栄、歴史的一歩

朝鮮総連静岡県本部・李名裕委員長

写真

 史上初となった米朝首脳会談。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)県本部(静岡市)の李名裕(リミョンユ)委員長(67)=写真=は「ついにここまで来た。朝鮮半島はこれから、平和と繁栄、統一に向けて突き進む」と感慨にふけり、今後の進展に期待を寄せる。

 会談はインターネットニュースで見守った。「朝鮮に分断を生んだ張本人の米国と対等に膝を交えて会談できる日が来るとは思ってもみなかった。東アジアの平和に貢献する歴史的第一歩だ」と感激した様子で話した。

 「米国と肩を並べるため核兵器は持たざるを得なかった」。北朝鮮の核武装をこう説明するとともに、「非核化、軍縮は世界の流れ。どんどん進めないといけない」と非核化に向けた動きを歓迎した。

 今回は朝鮮戦争の終結には至らなかったが、平和協定の締結に、また一歩近づいた。「朝鮮半島は米国など大国に挟まれ、支配され、利用されてきた。そういう宿命だった。戦争で同じ民族が血を流し、これまで誰も終結できず、世界の火薬庫となってきた」と振り返り、「戦争が終われば核戦争の可能性も消える」と早期の終結を待ち望む。

 一方、日本とは拉致問題を巡り溝が残る。「日本には、北朝鮮への積もり積もった不信感がある。もちろん早く返さないといけない。朝鮮総連が関わったわけではないが、拉致はありえないと言ってきた責任がある。国と国との対話と交渉で解決していくべきだ」と考えている。

 李委員長の両親は朝鮮半島西南部の済州島出身。東京で生まれ育ち、小学校から大学までずっと朝鮮学校に通った。北朝鮮からの奨学金で大学進学した恩を感じ「国に貢献しよう」と総連に入った。

 「民族性を育み、日本と国際舞台で活躍する人材を育てたい」。情熱をたぎらせるも「なぜ北ばかり虐げられるのか」という思いを抱えてきた。米国の敵視政策、日本人の拉致問題で「敵国の民」と総連は非難を受け、会員らは銀行の融資を打ち切られたり、就職できなかったりした。ヘイトスピーチの集団からは「普通の国になれ」と言われた。

 米朝会談を機に、そうした偏見や差別が改善していくと期待している。「胸を張って、私は朝鮮人だと言える日が来るには時間がかかるでしょう。でも、会談はその一歩になる」と望みをつなぐ。

(篠塚辰徳)

◆日本抜きでない議論を

静岡県立大・小針進教授

 世界が注目した米朝首脳会談の評価と、拉致問題で膠着(こうちゃく)する日朝関係の今後の展望を、朝鮮半島地域研究が専門の小針進静岡県立大教授に聞いた。

 朝鮮戦争の休戦から六十五年、両国首脳は一度も向き合ったことがない。政治的イベントといえるかもしれないが、朝鮮半島の平和定着の転機になるかもしれず、歴史的重要性を過小評価はしない。ただ、非核化に向けた最低限の行程表が声明に書かれず、不安が残った。

 非核化について具体的に書かれず、北の体制保証は盛り込まれ、北が優位になった。書かれなかった点がどう議論されたかが気になる。会談は平和定着と北の非核化に向けたプロセスにすぎず、会談後が大切だ。最終的に北の核が廃棄されなければ何の意義もない。

 非核化には核の保有量の把握、解体、搬出などで時間がかかり、平和協定の締結や国交樹立にも時間がかかる。米国では、北を完全には信じず検証を粛々と行うべきだ、という声が高まるだろう。声明に実務会談を今後も続けると盛り込まれたことは一つの成果だ。

 拉致問題については、突っ込んだ議論はされなかっただろう。ただ、対日関係改善も体制保証に直結すると、金委員長は理解しているはずだ。トランプ大統領が会談で取り上げたことで、北が「拉致問題は解決済み」という立場を変える可能性もある。韓国も対日関係を重視せざるを得ない。安倍首相は関係国と歩調を合わせて、日本抜きでは進まないという議論をリードしていくべきだ。

(島将之)

 こはり・すすむ 千葉県生まれ。外務省専門調査員などを経て1999年から県立大助教授、2007年から現職。

◆「平和協定早く」県内の韓国人ら

 歴史的会談を県内の在日韓国人や拉致被害者の支援団体関係者らも見届けた。在日三世の在日本大韓民国民団(民団)県地方本部の李康成(リカンソン)副団長(62)は「これまでお互い疑心暗鬼だったが、ようやく両国に信頼が芽生えた」と胸をなで下ろし、「早く朝鮮戦争が終結され、平和協定を結んでほしい」と今後に希望を託した。

 浜松市中区で韓国料理店を経営する韓国人の金貴男さん(55)は、米朝関係の正常化が議論されたことを「北にも韓国にも良いこと。これからの米国の対応を見たい」と期待する。

 二十代の時に兵役で韓国海軍特殊部隊に所属。韓国軍、在韓米軍が北と向き合う最前線の非武装地帯の警備を担い「息ができない緊張感」を体験しただけに緊張緩和を願っている。「北も変わりたいんじゃないか。非核化は一度には難しいが、何度も会えばうまくいくと思う」と話した。

 拉致被害者の救出を目指す「浜松ブルーリボンの会」の石川博之代表(65)は「声明文に拉致問題は盛り込まれなかったが、トランプ大統領が提起した意味は大きい」と会談を評価し、「これまでも長い道のりだった。まだ諦めるわけにはいかない」と語った。

(篠塚辰徳、島将之)

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索