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検察の言い分を丸のみ 弁護士、元東京高裁判事が寄稿

木谷明さん

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 率直に言って信じられない決定だ。もっとも審理の経過から、裁判所が原決定に疑問を抱いていることはうかがわれた。「ひょっとすると」という一抹の不安はあったが、まさか検察の言い分を丸のみにして、逆転棄却決定をするとまでは考えていなかった。

 逆転決定は無いと考えた最大の理由は、即時抗告審段階で裁判所が本田克也・筑波大教授によるDNA型鑑定の信頼性の検証をするとして、新たな鑑定人の鈴木広一・大阪医科大教授に「検証鑑定」を命じたのに、鈴木鑑定人が裁判所の命じた方法で鑑定をしなかったことだ。そのような経緯があるためか、今回の決定にはほとんど鈴木鑑定が登場しない。再審開始決定を取り消す結論には必要なかったのかもしれないが、抗告審で鈴木鑑定のために費やした時間は一体何だったのか。

 着衣の色、ズボンの端切れの押収経過、その他弁護人が提起し原決定が認めた多くの疑問についても、決定は検察の言い分を丸のみしてすべて排斥している。新たに提出された録音テープによって過酷な取り調べ状況が明らかにされたが、決定は「供述の任意性及び信用性の確保の観点から疑問」とするだけで、それ以上の関心を示さない。しかし、録音テープは「何が何でも袴田さんを有罪に」という警察の捜査方針をうかがわせるものであり、証拠捏造(ねつぞう)の動機の認定と無関係ではないはずだ。

 決定は、ただでさえ細い再審の扉をますます高く細くしてしまった。強い疑問を感じる。 (寄稿)

 <きたに・あきら> 1937年12月、神奈川県平塚市生まれ。63年に判事補任官後、東京地裁、名古屋地裁判事、最高裁調査官、東京高裁部総括判事などを経て2000年5月に退官。現役中に30件を超す無罪判決を確定させた。04〜12年に法政大法科大学院教授。現在は弁護士。

 

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