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朝夕刊

浜岡停止7年 「今は安心」

 中部電力浜岡原発(御前崎市)の全面停止から十四日、七年を迎えた。東京電力福島第一原発の事故で原子力安全神話は崩れ、浜岡原発の全面停止につながった。原発立地は地方の財政や活力維持に貢献する一方で、膨大なリスクを伴う。止まっているからこそ、安心して日々を送れる人々がいる。

◆茶農家 風評被害、残る影響

茶園を見回る浅倉敏道さん=12日、牧之原市坂部で

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 牧之原市坂部で代々続く茶農家、浅倉敏道さん(60)は東日本大震災が発生した二〇一一年三月十一日、茶園整備をしていた。「その時は、ここにまで飛び火するとは想像できなかった。ましてや、お茶から放射性セシウムが検出されるなんて、夢にも思わなかった」

 間もなく、牧之原などの静岡県内の各茶産地の茶葉から原発事故による放射性セシウムが検出。国の暫定規制値は下回ったが、大打撃だった。「とにかく売れなかった。売るには安くしなきゃならなくて」。地元茶農協の会計として、風評被害で減った売り上げを東電に賠償請求し、一一年からの数年分を受け取り三十人余の組合員に渡した。

 今になっては、それが弊害を生んだとも思う。「賠償金をもらったことで、いいお茶を作って消費者に届ける努力を怠った。その後の茶価低下に拍車を掛けている」と、厳しさが続く茶業界に残した影響を語る。

 原発が危険だという認識はなかった。「ちゃんとした安全基準に基づいていると思っていた。核のごみ問題もどうにもならなかった。政策の失敗だ」と語る。

 茶園からは、十八キロほど南南西にある浜岡原発は見えない。「事故があれば、ここには住めないし、農業はやれない。この地区は壊滅する」

◆福祉施設 大勢での避難は困難

クリーニング業務を行っている就労支援事業所で洗濯物を手にする水野洋一理事長=13日、菊川市赤土の工房オアシスで

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 二十年来、精神障害者らの作業所を運営している社会福祉法人「Mネット東遠」の理事長、水野洋一さん(73)=御前崎市上朝比奈=にとって、原発事故は大いなる脅威だ。

 県職員として通算十二年間、保健所で精神障害者の福祉行政を担当した。当時、精神障害者のための施設は県内に数えるほどしかなかった。精神保健福祉士の資格を得て「自分がやろう」と五十四歳で早期退職し、掛川市に作業所をつくった。当初の給料は十万円で、退職金をすべて運営につぎ込んだ。現在は掛川、御前崎、菊川の三市で就労支援事業所など通所、入所の計十二施設を運営する。

 利用者は精神障害者を中心に百五十人余り。精神的に不安定で、対人関係や集団生活が苦手。原発事故時、一般の人と同じ避難所に身を寄せるのは困難だ。「大きな声を出したり、多動だったりする。白い目で見られ、保護者がそこにいられなくなる」と指摘する。

 自治体の広域避難計画では、自家用車での避難が困難な人はバスで逃げる想定だが「大勢の人と避難できない。弱い立場の人が支援を受けるのは最後。受けられるかもわからない」。障害者の避難にまで目配りできていない行政の現状を語る。「ならば事故がない方法を考えてほしい。危険の原因は、はっきりしている。取り除くのが行政の仕事ではないか」と訴える。

(河野貴子)

◆静岡市で住民らが廃炉署名活動

浜岡原発の廃炉を訴える林克さん=14日、静岡市葵区の青葉緑地で

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 浜岡原発の全面停止から七年の十四日、市民団体「浜岡原発廃炉・日本から原発をなくす静岡県連絡会」などは、静岡市葵区の青葉緑地で原発再稼働に反対する署名活動を行った。

 市民約二十人が「原発なくたって電気は足りている」などの廃炉を求めるプラカードや横断幕を掲げた。連絡会代表委員の林克さん(63)は、浜岡原発が東海地震の震源域の真上にあることや、敷地内を通る断層に活断層の可能性があることなどを主張。「浜岡は政府要請で唯一停止した原発。再稼働させず廃炉にすべきだ」と訴えた。

 一時間余りで集まった署名は四十筆足らず。林さん自身も県民意識の風化を認めるが、「原子力規制委員会の審査はどんどん進んでいる。声を出し続けなければいけない」と話した。

 連絡会は同日、中電静岡支店(葵区)を訪れ、浜岡原発の敷地内を走る断層の調査などを求める要請書を提出。県に対しても、浜岡原発から三十一キロ圏内の住民に安定ヨウ素剤を各戸配布し、再稼働の同意に関わる地元自治体の範囲選定などを求める要請書を提出した。

(松野穂波)

◆再稼働 規制委審査の壁

 浜岡原発を巡っては住民から理解を得ることにとどまらず、原子力規制委員会の審査もあり、再稼働の道のりは険しい。

 中電は、出力の大きい4号機の審査を二〇一四年二月に申請。これまでの審査会合で、最大加速度一二〇〇ガルとする基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)についておおむね了承された。ただ、敷地内外を東西に走る「H断層系」の活動性の議論は残る。活動性が認められると、基準地震動の引き上げを迫られるほか、再稼働できない恐れもある。

 中電は南海トラフ巨大地震の津波を考慮し、海抜二十二メートルの防潮堤を設置。3、5号機も含めた安全対策工事費に約四千億円を投じた。だが、すでに審査に適合した同じ沸騰水型炉の柏崎刈羽原発(新潟県)を踏まえ、原子炉を冷却する新たな装置の設置が必要となるなど、さらに費用は膨らむ見通しだ。

 全面停止から七年という歳月も重くのしかかる。勝野哲社長は四月の定例会見で「原発の運転を知らない人が保守管理をするかたちになってきている。レベルを戻していかなければ」と課題について語った。

(古根村進然)

 

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