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朝夕刊

女児土俵に上げず 静岡場所「ちびっこ相撲」

◆協会 直前に連絡「遠慮して」

2015年4月の大相撲富士山静岡場所の「ちびっこ相撲」で、土俵に上がって力士に稽古をつけてもらう女子児童(左)=静岡市駿河区の草薙総合運動場体育館で(県相撲連盟提供)

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 静岡市駿河区で八日にあった大相撲春巡業「富士山静岡場所」で、力士が土俵上で子どもに稽古を付ける「ちびっこ相撲」に、毎年参加していた小学生の女児が参加できなかったことが分かった。主催者側に日本相撲協会から直前に「女の子は遠慮してほしい」と連絡があった。京都府舞鶴市の巡業での場内アナウンス問題で「女人禁制」への議論が再燃する中、県内の相撲関係者は「地方の巡業ぐらい土俵に上がってもいいのでは」と困惑している。

 富士山静岡場所は前身を含め二〇一三年から毎年開催。少なくとも昨年までの三年間は、ちびっこ相撲で女子児童が土俵に上がっていた。今年は静岡市と焼津市の相撲クラブの女児五人程度が参加する予定だった。

 主催した実行委員会の幹部によると、静岡場所を担当する日本相撲協会の荒磯親方(元幕内玉飛鳥)から四日に電話があり、ちびっこ相撲に女児を参加させないよう要請された。ちびっこ相撲には結局、焼津市と静岡市の相撲クラブの男子のみ約二十人が参加した。

 女児三人が参加予定だった「やいづ少年相撲クラブ」(焼津市)のコーチは「三月ごろに県相撲連盟から参加の打診があった。地方の巡業ぐらい女の子も土俵に上げてほしかった」と残念がる。

 協会広報部によると、三月の大相撲春場所中に巡業部長名で「年齢にかかわらず女性を土俵に上げないように」との通達が出された。広報部の担当者は本紙の取材に「(通達は)春巡業から適用している」と説明。この時期に通達を出した理由については「巡業部長が交代したことが一つ」と新巡業部長の意向を示唆し、「相撲の伝統は本来そういうものだから」と話した。巡業部長は貴乃花親方(元横綱)が昨年十二月に冬巡業に不参加の後、春日野親方(元関脇栃乃和歌)が代役を務め、春場所終了後に正式に就任した。

 四日にあった舞鶴市での巡業では、土俵上であいさつをしていた多々見良三市長が突然倒れ、看護師の女性らが駆け寄り、救命処置をした。その最中に行司が「女性の方は土俵から下りてください」と数回、場内アナウンスで促した。

◆「土俵に上がりたかった」 焼津の女児がっかり

富士山静岡場所のちびっこ相撲に参加できなかったが、土俵の上で稽古する平口幸芽さん(左)と青木菜南さん=11日、焼津市営相撲場で

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 静岡市で八日にあった大相撲春巡業「富士山静岡場所」の土俵で、女の子が好きな力士の胸を借りる夢はかなわなかった。参加できなかった小学生の女児たちは十一日、悔しさをかみしめながらも「強くなりたい」と稽古に励んだ。日本相撲協会はあらためて伝統を重視する姿勢を打ち出し、角界を巡る「女人禁制」は今後も議論を呼びそうだ。

 「土俵に上がりたかった」。八日の富士山静岡場所のちびっこ相撲に参加できなかった「やいづ少年相撲クラブ」(焼津市)の平口幸芽(こうめ)さん(10)=焼津東小五年=は十一日も普段練習する焼津市営相撲場の土俵で稽古に励んだ。

 小学二年から始めた相撲。夢は世界大会で優勝すること。過去二回、静岡場所の土俵に上がっており、好きな力士の阿炎(あび)に稽古を付けてもらうことを夢見ていた。今回コーチからちびっこ相撲に参加できないと聞いて「どうしようもなく仕方ないと思った」と寂しそうに笑った。

 場所当日は会場に行ったが、同じクラブの男子が土俵に上がるのを見て「私もやりたかった」という気持ちがこみ上げた。今はクラブの先輩みたいに強くなりたいと気持ちを切り替えている。

 同じクラブの青木菜南(ななみ)さん(7つ)=焼津市・大富小二年=は兄と弟がちびっこ相撲に参加した。「ずるいと思った。私も上がって、力士と稽古したかった」と悔しさをにじませた。

 女性が土俵に上がれないことがテレビで話題になっていることは知っているが、正直よく分からない。「相撲は好き。やるだけ強くなれるし、これからも続ける」と前を向いた。

◆女児参加、今まで黙認

 女性が土俵に上がることを認めないことについて、日本相撲協会は、伝統継承の観点から理解を求めている。一九九〇年に幕内優勝力士に総理大臣杯を渡す意欲を見せた森山真弓官房長官(当時)が土俵に上がるのを日本相撲協会が拒否したほか、二〇〇〇年には知事賞を手渡そうとした太田房江大阪府知事(当時)も土俵に上がれなかった。

 ただ、女児が土俵に上がることについてはあまり議論されていなかった。静岡県相撲連盟の下村勝彦会長は、昨年まで女児が土俵に参加できていたことについて「全国各地から女児を土俵に上げさせてくれとの声が上がり、日本相撲協会側が許可してくれたのではないか」と説明する。今年は一転、協会から女児の参加辞退を伝えられ「急に言われて『何で』という気持ちだ。巡業が終わったらゆっくり話し合いたい」と話す。女児の土俵参加が続いていたことについて、日本相撲協会広報部の担当者は「事実上、黙認してきた」と説明した。

 スポーツライターの玉木正之さんは「大相撲の女人禁制は『血は穢(けが)れ』であるとする神道に結び付いているとされるが、女児の土俵参加は問題ない。協会は女人禁制の本来の意味を分かっていない」と批判する。

(沢田佳孝、福島未来)

 

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