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静岡連載

袴田さん再審判断 残る再収監の可能性

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 一九六六年に清水市(現静岡市清水区)で一家四人が殺害された強盗殺人事件で死刑確定後、静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌さん(82)=浜松市中区=の即時抗告審で、十一日の東京高裁の判断次第では袴田さんが再び収監される可能性がある。四年前の地裁決定が仮に覆れば、釈放の根拠は消滅するとみられるためだ。一方、法律上は収監しない選択肢もあり、専門家の間でも見解が分かれている。

 二〇一四年三月、地裁は袴田さんの再審開始を決めた際、「耐え難いほど正義に反する」として、拘置の執行停止も決定。袴田さんは即日釈放された。戦後、確定死刑囚が再審無罪となったのは、免田、財田川、島田、松山の四事件だが、いずれも再審開始決定の段階では釈放されておらず、袴田さんのケースは前例がない。

 加藤克佳・専修大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「拘置していなければ死刑は執行できない。地裁の判断はこの二つを一体と考えた結果」と説明。「四事件と比べた場合、同時に釈放された袴田さんのケースがむしろ普通」とみる。

 高裁は再審開始決定を覆す場合、拘置停止の取り消しにも触れるのか。この二つが別の独立した決定と考えれば、高裁は拘置停止に言及しない可能性もある。しかし、加藤教授は「決定が覆れば、釈放の前提を欠くことになる。再収監の可能性はある」と解説する。元裁判官で、弁護団の秋山賢三弁護士も「拘置の執行停止は地裁決定の核。高裁も触れざるを得ない」とみている。

袴田巌さんが2014年3月まで収監されていた東京拘置所=東京都葛飾区で

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 一方、拘置の執行停止の判断が覆っても、検察が釈放状態を維持する可能性は残る。刑事訴訟法は、再審請求審の間は検察官が刑の執行を停止することができるとしているためだ。検察幹部は「執行停止の効力が失われれば、原則に従い再収監する」と語るものの、別の検察幹部は「(収監を求めるのは)再審開始の可能性がなくなったとき」と打ち明ける。今回、地裁決定が覆っても、弁護団の特別抗告で袴田さんの審理は続くとみられ、袴田さんはあいまいな状態が続くのが理由という。

 また、地裁決定は釈放の理由について「高齢で精神状態も万全ではない」とも言及した。袴田さんは長年の拘束がもたらした拘禁症の影響下にあり、心臓病や糖尿病などの持病を抱えている。しかし、精神鑑定の経験が豊富で、被告人の訴訟能力などに詳しい精神科医野田正彰さん(74)は「緊急手術が必要といったケースを除き、収監は拒めないのが通例。高齢も理由にはならない」と説明する。

 袴田さんを長年支えてきた姉秀子さん(85)は「もし再収監されるなら、代わりに行くつもりでいる」と周囲に漏らしている。弁護団は再審開始決定が取り消された場合、高検と最高検に再収監しないように要請する予定だ。

(西田直晃、沢田佳孝、蜘手美鶴、山田雄之)

 <旧清水市一家四人強殺事件> 1966年6月30日未明、清水市のみそ製造会社専務宅から出火し、焼け跡から一家4人の他殺体が見つかった。県警は同年8月、強盗殺人容疑などで、元プロボクサーで住み込み従業員の袴田さんを逮捕した。袴田さんは公判で関与を否定したが、80年に最高裁で死刑が確定。翌年から始まった第1次再審請求では、最高裁が2008年に特別抗告を棄却した。だが、同年4月に姉秀子さん(85)が申し立てた第2次再審請求審で、静岡地裁が14年3月に再審開始と釈放を決定した。

 <拘置> 刑の言い渡しを受けた者を刑務所や拘置所など刑事施設に収容し、身柄を拘束すること。袴田さんは静岡地裁の再審開始決定が出るまで、東京拘置所に収容されていた。

 

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