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静岡連載

袴田さん再審判断 DNA鑑定の有効性争点

◆本田教授「血痕、袴田さんと不一致」、鈴木教授「検出は少量手法不適切」

犯行着衣とされた白半袖シャツ。右肩部分の血痕を「袴田さんのものではない」とした本田鑑定の有効性が争点となっている

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 一九六六年に清水市(現静岡市清水区)で一家四人が殺害された強盗殺人事件の犯人とされ、死刑判決を受けた袴田巌さん(82)の再審開始を巡る即時抗告審で、東京高裁は十一日、再審開始の可否を決定する。静岡地裁の再審開始決定の根拠になったDNA型鑑定の有効性が最大の争点となった。犯行着衣とされた「五点の衣類」を地裁が「捏造(ねつぞう)が疑われる」と断じて四年余。東京高裁の判断ではどう言及されるのか。

 鑑定は弁護団の依頼で、本田克也・筑波大教授が二〇一二年に実施。本田鑑定は事件の一年二カ月後に見つかった「五点の衣類」のうち、白半袖シャツ右肩の血痕のDNA型を「袴田さんのものではない」と認定した。地裁は鑑定を評価したが「細胞に損壊や状態変化が起きている場合、同様の効果が期待できるか明らかでない」と付け加えた。

 シャツは本田鑑定の四十五年前に見つかった。発見時はみそ漬けで、血痕は第三者の唾液や皮膚片、みその成分などに汚染されている恐れも。このため、本田鑑定は血液細胞に反応する「レクチン」という試薬を使用し、血痕から血液に由来するDNA型だけを取り出す「選択的抽出法」という手法を採用していた。

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 検察側は「独自の手法で信用できない」と反発し、高裁は一五年、検察側推薦の鈴木広一・大阪医科大教授に検証実験を委託。鈴木教授は「レクチンにDNAを分解する酵素が含まれ、DNA型の検出量が格段に少なくなる」として不適切と指摘。「細胞膜があればDNAは守られるが、血液は血痕になる過程で細胞膜が破壊されてしまう」とも証言し、検察側は実験の結果から「地裁決定の誤りは明らか」と主張する。

 一方、弁護団は「信ぴょう性は明らか」と検証実験に反対し、別の法医学者を推薦しなかった。本田教授は中日新聞の取材に「検証とは本来、同じシャツの布片の再鑑定のはず。鑑定の再現性や手法を、他の対象物を用いた実験で批判されるのは困る」と説明した。さらに、実験の手順や使用器具が異なるとして「異なった独自の鑑定」と強調。鈴木教授の指摘にも「細胞膜や核膜に守られたDNAにレクチンが作用することはない。私の鑑定では検出された」と反論している。

 弁護団は「検証実験ではDNA型は極めて少数だったとしても検出された」と主張し、角替清美弁護士は「裁判所の依頼にすら答えておらず、実験は信用性の判断に役立たない無意味なものだった」と言い切る。

(西田直晃)

◆両教授「足利事件」でも鑑定人

 袴田さんの再審開始を巡る即時抗告審で、DNA型鑑定を巡って相対する本田克也・筑波大教授と鈴木広一・大阪医科大教授は、ともに一九九〇年に女児が殺害された「足利事件」で犯人とされた菅家利和さん(71)の再審請求審でもDNA型の鑑定人を務めた。

 足利事件の再審請求審で東京高裁は再鑑定の実施を決め、弁護側が本田教授を、検察側が鈴木教授をそれぞれ推薦。両教授は菅家さんの犯人性を否定する再鑑定書を提出した。無罪を言い渡した再審判決では鈴木教授の鑑定結果のみが採用された。

 再審請求された事件でのDNA型鑑定は、本田教授が、福岡県飯塚市で九二年に女子児童二人が誘拐・殺害された「飯塚事件」で実施。鈴木教授は九七年の東京電力女性社員殺害事件で、検察側の依頼を受けて鑑定し、犯人性を否定する鑑定書を提出。二〇一二年の再審判決で鑑定結果が採用され、無罪が確定した。

 多くの事件でDNA型鑑定を手掛けている押田茂実・日本大名誉教授(法医学)は本田教授の鑑定について「試料は相当古いもので難しい部分は残る」と説明。一方、鈴木教授の検証実験には「裁判所に依頼された通りの検証をしておらず、評価は厳しい」と述べた。

(沢田佳孝)

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