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静岡連載

重い扉 袴田さん再審開始取り消し(上)

◆重ねた証拠 訴え届かず

再審開始を認めない決定に「不当決定」の旗を掲げる弁護士=11日午後、東京・霞が関で

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 費やした四年の歳月は、二行の主文で崩れた。

 「原決定を取り消す。本件再審請求を棄却する」

 会見した西嶋勝彦弁護団長が決定書をめくりながら、怒った。「いったい四年間、何をやってきたのか」

 静岡地裁が再審開始決定を出したのは二〇一四年三月。検察が即時抗告した直後、小川秀世事務局長は会見で「短期間で棄却されるはず。何年もかかるとは考えにくい」と期待した。

 当初は、証拠開示で進展がみられた。

 弁護団はたびたび、東京高裁に対し、検察側に証拠を開示させるよう申し立てた。一四年七月、検察側が「存在しない」と説明していた五点の衣類のカラー写真のネガが見つかり、検察側が謝罪。翌年一月には、県警の倉庫で見つかったという取り調べの録音テープ二十数本を開示。「やらねぇものはやらん」「俺は潔白だ」という袴田巌さんの声もあり、生々しい取り調べの様子が明かされた。

 ただ、その後は証拠開示は進まず、静岡地裁の再審開始決定の鍵になったDNA型鑑定の検証実験に焦点が移った。

 それでも弁護団は「違法な取り調べがあった」として、既に開示された証拠から、再審開始につながるヒントを模索した。

 開始決定の指摘した、捜査機関による犯行着衣「五点の衣類」の捏造(ねつぞう)の疑いもそうだ。弁護団は自ら、五点の衣類に似た服をみそに漬ける再現実験を実施し、色合いの変化を検証した。

 一六年三月には、二人の証人尋問を求めた。どちらも事件当時捜査に関わった静岡県警の元警察官だ。

 一人は、五点の衣類が見つかったとされるみそタンクを捜索したが「何も出なかった」と話したという。もう一人は、袴田さんの実家を捜索し、布の切れ端を不自然な形で発見したといい、この切れ端が五点の衣類が袴田さんの持ち物と認められる要因になった。

 だが高裁は、捏造について「具体的な根拠に乏しく、抽象的な可能性にすぎない」と退け、証人尋問も認めなかった。西嶋団長は会見で「具体的に捏造の方法を特定できるならとっくに無罪になっている。(検察のような)権力と財力はない」と憤った。

 西嶋団長は会見の終盤、この裁判では捜査や再審制度の在り方も問われているとして「もっと広い土壌で戦いたい」と語気を強めた。だが高齢の袴田さんの身柄の話になると、こう漏らした。「あまり時間をかけて戦いたくない」

(鈴木凜平)

 

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