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静岡連載

清水・一家4人強殺 52年の道筋(下)

◆再審請求−現在

静岡地裁の再審開始決定により、東京拘置所を出る袴田巌さん(左)と姉秀子さん=2014年3月27日撮影

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 「偶然にしては出来過ぎている」

 弁護団事務局長の小川秀世弁護士(65)は、弁護団に加入した三十四年前、袴田巌さん(82)の確定判決の最重要証拠で、犯行時に着ていたとされる「五点の衣類」に疑念を抱いた。

◆5点の衣類「捏造」突く

 「五点の衣類」はねずみ色スポーツシャツ、白半袖シャツ、鉄紺色ズボン、白ステテコ、緑ブリーフ。死刑確定前、東京高裁が行った実験で、袴田さんに衣類を着せたが、鉄紺色ズボンだけは小さくてはけなかった。他にも白半袖シャツと起訴段階で犯行着衣とされたパジャマの傷の付き方が奇妙に一致するなど不自然な点があった。「見れば見るほど、捏造(ねつぞう)としか考えられなかった」

 第一次再審請求の当初、捏造の主張には弁護団内に「軽々しく口にするべきではない」と異論もあった。同じ法曹界の検察が捏造の証拠を出すはずがないという前提からだ。

 議論の結果、再審請求から十数年を経て、弁護団は捏造の文言を意見書に盛り込んだ。再審に必要な「新規かつ明白な証拠」として、袴田さんが「五点の衣類」を物理的にタンクに隠せなかったこと、鉄紺色ズボンをはけなかったことをあらためて主張した。

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 だが、二〇〇八年三月、最高裁は静岡地裁、東京高裁の棄却決定を追認。「五点の衣類は袴田さんのもの」「長期間みそ漬けにされたことが明らか」と請求を退けた。弁護団は捏造を証明する数種類の鑑定、虚偽自白を示す心理学者の分析など、さまざまな証拠を提示したが、最高裁の決定文はたった九ページ。新たな証拠とは認めず、二十七年に及ぶ一次再審はあっけなく終わりを告げた。

 転機となったのは、最高裁決定の約一カ月後に姉秀子さん(85)が申し立てた第二次再審請求だった。高裁も最高裁も「長期間みそ漬けにされた」と断じたが、根拠はない。そこを突き崩せば決定は覆る。攻めるべき新たなポイントだった。

 当時、弁護団とは別に支援者が衣類のみそ漬け実験に取り組んでいた。確定判決によれば、衣類は約一年二カ月間、みそに漬かっていた。しかし、支援者が同じ期間、白い衣類をみそに漬けると「五点の衣類」と色の染まり具合が異なった。一〇年九月には「五点の衣類」を撮った事件当時のカラー写真が検察から証拠開示され、血痕の赤みも含め、色の不自然さがより鮮明になった。

◆DNA型鑑定 決定覆す

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 二次請求のもう一つのポイントは、一一年に静岡地裁が実施を決定した「五点の衣類」のDNA型鑑定。一次請求でも行われたが、試料が古く、当時は「鑑定不能」だった。弁護団はDNA型鑑定で実績がある本田克也・筑波大教授に依頼。前年に再審無罪が確定した足利事件の鑑定人だった。本田鑑定は「白半袖シャツの血痕のDNA型は袴田さんとも、被害者とも一致しない」と断定した。

 みそ漬け実験と本田鑑定の二点を主な理由として、一四年三月、静岡地裁は再審開始と拘置の執行停止を決めた。その後、検察の即時抗告を経て、東京高裁はあらためて六月十一日に再審の可否を判断する。

 決定が迫った五月中旬、袴田さんを支えてきた秀子さんは、浜松市内の支援者の勉強会で宣言した。

 「決定に大いに期待している。絶対に勝てると私は思っている」

(この連載は西田直晃、角野峻也、鈴木凜平、福島未来が担当しました)

 

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