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静岡連載

浜松から平昌へ 伊藤亜由子<1> 集大成 みんなのため

 浜松からバンクーバー、ソチ、そして平昌へ。伊藤選手が「スケート人生の集大成」と位置付ける三度目の冬季五輪まで、あと九日に迫った。彼女を支えてきた人々の思いをつづっていく。

◆引退、復帰、不調乗り越え

昨年12月、ショートトラック全日本選手権の女子1000メートルで3位となった伊藤亜由子選手(手前)=名古屋市ガイシプラザで

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 昨年十二月十七日、名古屋市ガイシプラザであったスピードスケート・ショートトラックの全日本選手権。大会後、平昌(ピョンチャン)冬季五輪の代表選手が発表された。女子500メートルで二位、同1000メートルで三位に入った浜松市東区出身の伊藤亜由子選手(31)=トヨタ自動車=は、女子五人の最後に呼ばれ、氷上で涙を見せた。「今までで一番うれしかった」。三度目の五輪切符を手にするには、それだけの苦労があった。

 二〇一〇年のバンクーバー大会・3000メートルリレーで七位、一四年のソチ大会は同種目で五位に入賞するも、目標としてきたメダルを逃した。「これ以上続けても、メダルは取れない」と、直後に引退した。

 それでも悔いが残った。周囲に「もったいない」と言われ続け、数カ月後にはトヨタ自動車の監督に復帰を願い出た。一五年春に練習を再開すると、昨年三月の世界選手権では、3000メートルリレーで銅メダル獲得に貢献した。

 三大会連続の五輪代表入りへ−。周囲の期待は高まったが、代表選考三大会のうち、九月にあった二大会の成績は振るわなかった。代表五人の枠の四つはほぼ固まり、後がない状況になった。

 不調の原因は「これまでの五輪と同じことをしていても、同じ結果しか出せない」と思い、四月に靴を替えたことだった。同時にフォームの改造にも取り組んできたが、試合の駆け引きでは「思うように足が動かせなかった」と言う。

 その後の三カ月間は「スケート人生で最もつらい時期だった」。世界選手権で履いた靴に戻すことで、課題は克服したように思えたが、残る大会は全日本だけ。練習中も不安は常に付きまとい「もしダメだったらどうしよう」と家族に弱音を吐いたこともあった。

 それでも迎えた全日本では、リレーで必要不可欠なトップスピードや粘り強さを見せつけ、代表に滑り込んだ。

 スケートを始めたのは、与進小学校(浜松市東区)二年のとき。父親の伸吾さん(60)がアイスホッケーをやっていたこともあり、近くの浜松スポーツセンターのスケート教室に通い、インストラクターだった県スケート連盟顧問の斉藤三夫さん(64)=同区=らに教わった。夏場は、天竜川河川敷でインラインスケートに励んだが「当時はまだ遊んでいる気分だった」と振り返る。

天竜川河川敷でインラインスケートを履いて練習する小学時代の伊藤選手=斉藤三夫さん提供

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 転機は与進中学校に進んでから訪れた。二年生で、同区出身で元ショートトラック日本代表の滝口秀人さん(43)と出会い、ショートトラックを勧められた。練習してみると、大会で結果を出せるように。「五輪を目指せるかもしれない」。遊びが、本気になった。

 本場・名古屋のスケートリンクに週三回通い、技術を磨いた。当時からスプリント能力は群を抜いており、浜松工業高(同市北区)時代は、二年生ながら世界選手権に出場した。

 時は流れ、今大会では代表五人で、唯一の三十代になった。本人も「最後の五輪という思いでやる」と退路を断つ。長野での合宿を経て、二月四日に現地入りする。大会前、最後となった地元・浜松の壮行会で、こう決意を語った。「かなわなかったメダルを取りにいく。応援してくれている人たちのために」

 <ショートトラック> 複数の選手が同時にスタートして、一周111・12メートルの長円のコースを周回する。一周400メートルでタイムを競うスピードスケートと比べて、カーブがきつく、コース取りや抜き去るタイミングを巡って、選手同士が接触して転倒することもあり、駆け引きが勝負を分けるため、「氷上の競輪」とも呼ばれる。冬季五輪では、1992年のフランス・アルベールビル大会で正式種目に採用された。日本勢女子は、個人種目は98年の長野大会で当時19歳の勅使川原郁恵さんが1000メートルで5位入賞したのが最高順位。団体では3000メートルリレーで4位に3度入賞したのが最高。

(この連載は、鈴木凜平が担当します)

 

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