トップ > 静岡 > 地域特集 > 静岡連載 > 記事一覧 > 2016年の記事一覧 > 記事

ここから本文

静岡連載

東海地震説40年 予知信仰の崩壊<下>

◆想定外を想定し対策を ロバート・ゲラー教授に聞く

「地震予知は予算を引き出す打ち出の小づちだった」と話すロバート・ゲラー東大教授=東京都内で(小沢慧一撮影)

写真

 四十年前に「いつかは可能」とされた地震の直前予知は今、「困難」とみられている。「予知信仰」は、なぜ世間を席巻したのか。東京大のロバート・ゲラー教授(地球惑星科学専攻)に話を聞いた。

 −東海地震は百〜百五十年の周期に発生すると言われているが。

 確かに東海地震はいずれ起きるだろう。しかし、地球はそんなに単純ではない。一見、同じ場所で地震が起きているように思えても、プレートの割れ方など地震を引き起こすメカニズムは異なる。周期説が科学的に証明されたことは一度もない。南海トラフ巨大地震もまた、周期説に基づくシナリオの一つだ。

 −地震前の前兆現象で予知はできないのか。

 前兆現象はオカルトみたいなものだ。観測事例は大量にあるが、どれも発生後にさかのぼって集めたデータで、地震との因果関係が認められたケースはない。米国では一九七〇年代に予知の研究はほぼ行われなくなった。

 −日本ではなぜ続いた。

 一部の学者が国の予算を引き出す「打ち出の小づち」として「地震予知」という名目を使った。大地震もしばらく起きず、予知ができないことがばれなかった。だが、九五年に阪神大震災が発生し、ようやく予知信仰の化けの皮がはがれた。

 旧科学技術庁の「地震予知推進本部」は、予知の看板を下ろし「地震調査研究推進本部」に改名された。だが、予知を推し進めた学者の大半が残り、予知研究の総括はされなかった。

 −予知を前提とする大規模地震対策特別措置法(大震法)をどう考える。

 「前兆」を察知すると、首相が地震に備えて、数千億円の損失が出ると分かりながらも経済活動をストップさせる。まるでSFのような話だ。観測機やデータ解析の技術がはるかに進展した今でも、四十年前に国が「できる」と言った予知はまだ実現していない。うそだった。大震法を廃止して、けじめをつけるべきだ。

 −説が提唱され、県民の防災意識が高まった。

 静岡県が防災を進めたことは決して悪いことではない。大地震はいずれ起こり得る。

 東海地震にばかりに関心が集まることで、他の地域では地震への警戒心が薄くなってしまった。大地震が起きるたびに甚大な被害が出るのは、予知説が横行した一番の弊害だ。地震はいつ、どこで起きるか分からない。想定外を想定することしか、災害から身を守る方法はない。

 −防災と地震学の関係は今後どうあるべきか。

 地震学と防災は分けて考えた方がいい。これまで国は予知をスローガンに防災を進めた。その結果、学者は予知ができるとウソをつき続け、国民を勘違いさせてしまった。地震学に過剰な期待をしないでほしい。地震学者は予知よりも、地震が起きる仕組みの解明にいそしむべきだ。

(この連載は、小沢慧一が担当しました)

 <ロバート・ゲラー> 1952年米国ニューヨーク市生まれ。カリフォルニア工科大卒。理学博士。米スタンフォード大学助教授をへて、84年に東大理学部の助教授に。99年から現職。世界で権威ある科学雑誌「ネイチャー」や「サイエンス」で地震予知を批判する論文が取り上げられ、歯にきぬ着せぬ物言いに、テレビ番組でも人気が出ている。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

中日新聞しずおかの記事はこちら

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索