トップ > 静岡 > 地域特集 > 静岡連載 > 記事一覧 > 2016年の記事一覧 > 記事

ここから本文

静岡連載

「家庭的職場」いいら! ゆったり人物伝<3>

◆社長の新入社員宅訪問 社内の和が発展の力

社員と談笑する神谷紀彦さん(中央)。入社前の家庭訪問と数多い行事が社内の和と業績を後押しすると信じる=浜松市中区野口町のサカエで(山田英二撮影)

写真

 浜松市中区の工場設備機器商社「サカエ」には、新卒の学生を採用する際に欠かさぬ儀式がある。社長の神谷紀彦さん(43)が自宅を訪ねるのだ。

 直属の上司になる予定の管理職と人事担当の総務課長を連れて社用車の白いセダンに乗り込み、学生の実家へ。たいがいは玄関先で出迎えられ、居間に上がって親にあいさつする。

 「サカエの神谷です。本日は親御さんにも会社のことを理解していただこうと説明に参りました」

 会社案内のパンフレットを広げ、扱う商品である産業用ロボットの写真とともに若い社員たちの笑顔を披露する。営業に配属する予定なら「顧客企業を回って商品を販売し、修理などの相談に応じます」、総務の予定なら「パソコンを使った社内での事務です」と一から仕事を説く。

 いずれも「入社後に講習会をするので、今は知識がなくても大丈夫」と安心してもらうことも欠かさない。

 従業員六十八人の中小企業だ。家庭訪問の慣習は創業者で祖父の正平さん(故人)が昭和二十年代に始め、先代社長で父の竹彦さん(68)が引き継いだ。社会に出る若者とその家族を後押しするのが狙いだが、経営者も雇用の責任をあらためて自認できる、と思っている。

 企業でもプライバシーが重視される時代。上司は部下の家庭や休日に踏み込むべきではない、という風潮もある。

 それでも三代目の紀彦さんは、この家庭訪問をやめるつもりはない。春は花見、夏はビールパーティー、秋は京都への研修旅行で「祇園をどり」の見物と、もともと行事の多い会社。世界金融危機のあおりで業績が落ち込んだ二〇〇九年に社長に就任した際は、社員数人と自分が御殿場のホテルに一泊して旅の気分を味わいながら夢と思い出を語り合うグループ合宿もあえて始めた。

 「組織の中でふれ合うことが互いの成長につながる。会社はその環境づくりにできるだけ時間とお金を使いたい」

 最近は黒字経営が続いている。新卒者の採用は毎年二、三人。優秀な若者の採用に苦労する中小企業も多いが、サカエの会社見学会には学生四十〜五十人が集まる。

(西山輝一)

 <企業内の余暇活動の衰退> 産労総合研究所(東京)の2014年の調査では、社員の余暇活動を採り入れている企業のうち社員旅行をしているのは46%。1994年の88%に比べて激減した。この研究所の担当者は「2008年の世界金融危機後に多くの企業が余暇活動を控えた。最近は旅行よりも手軽なバーベキューや昼食会などが目立つ」としている。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

中日新聞しずおかの記事はこちら

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索