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静岡連載

「山盛り」いいら! ゆったり人物伝<1>

 私たちは良いこと便利なことにこだわり過ぎていないか。腹八分に医者いらずだって、たまには目いっぱい食べるのも悪くない。スマートフォンはありがたいけれど、メッセージの着信を四六時中気にするのもなあ…。「もっとゆったり生きればいいら」。時代の流れに静かに抵抗する人たちがいる。

◆超ド級空揚げ弁当 思うがままの質感で

空揚げ弁当の特大ぶりを披露する大坪龍一さん。これが普通サイズ=浜松市西区入野町で(山田英二撮影)

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 ダイエットだのエステだのに励む軟派な坊やなら、きっと眉をひそめる。

 浜松市西区入野町の住宅街で売られている空揚げ弁当(六百九十円)は、極端な大盛りだ。「こんなに食えるか!」。インターネットのグルメ掲示板で、そんなツッコミが入る。

 よく揚がった鶏もも肉が五、六個、野球のグラブほどもある塊となって白飯の上にそびえる。数は普通だが、一個の大きさが尋常でない。そこらの空揚げがゴルフボール大なら、こちらはテニスボール。豪快にかみついても、一個を食べきるのに七口はかかる。

 「考え抜いたスタイルだからね」。この弁当を作る大坪龍一さん(51)は三重県鈴鹿市で弁当店を二十八年間営み、昨夏に浜松へ自宅と店を移したばかりだ。

 アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のリーダーで浜松出身の百田夏菜子さん(21)の熱烈なファン。彼女の名前と誕生日から店名を「夏菜子のからあげ1994・07・12」にしたほど物事にのめり込むたちで、空揚げの大きさにも信念がある。

 故郷の熊本を十八歳で離れ、鈴鹿市の自動車工場に就職した。先輩に連れて行かれた弁当店の空揚げが気に入り、ほぼ毎日、昼はその弁当ばかり食べた。

 一人暮らしの若者ならではの偏った食事だが、揚げたてがうれしかった。香ばしい衣と肉の量のバランスが良かったことも覚えている。いずれも空揚げ一個一個に圧倒的な質感があってこそだった。

 自分でもそんな空揚げを作りたくなった。四年間で工場を辞めて弁当の全国チェーンで修業し、独立した。「肉は大きく切った方がおいしさが伝わる」。肉厚だけれど形がふぞろいな材料を使えば単価を安く抑えられる。作り置きせず注文ごとに揚げなくては…。

 そんな流儀は、鈴鹿と同じものづくりの街である浜松でも変わらない。おなかをすかせた若い工員たちが「大きい。しっかりと肉の味がする」と喜んでくれる。「意外と脂っこくない」と感心する人もいる。

 そんな思いを込めた一人前の弁当を二、三人で分ける人がいる。三日かけて食べる人もいる。「選ぶのはお客さん」。それでも、ほかほかのうちに食べてもらえない。店の経営にも少々つらい。

 「ひと昔前は一・五人前を若いお兄さんたちが買ってくれたのに」と大坪さん。老若男女が体重計に乗って一喜一憂する時代だけれど、「たまには思うがままにうちの空揚げにかぶり付いて」と日々、思う。

(久下悠一郎)

 <ダイエットの流行> 厚生労働省の国民健康・栄養調査(2014年)によると身長の二乗で体重を割って求める体格指数(BMI)が25を超える「肥満」の割合は男性が28・7%、女性が21・3%で近年あまり変化していない。一方、指数が18・5未満の「やせ」は男性が5・0%、女性が10・4%で、女性は30年間でほぼ1・5倍に増えている。厚労省は肥満からの脱却を呼び掛けながら、極端なダイエットはストレスの蓄積や栄養不足に陥る恐れがあるとも指摘する。

 

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