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静岡連載

しずおかの学び2015 新たな挑戦<下>

◆異才発掘プロジェクト 変な自分も悪くない

 即興で絵を描く子がいれば、絶滅危惧種のオオイタサンショウウオの飼育実験の成果を生き生きと披露する子も。長泉町の中学三年小林令奈さん(15)は、動画や音楽も取り入れ、パワーポイントでグループ活動を振り返る緻密な資料を作成した。

 九月末、東京都目黒区の東京大先端科学技術研究センターであった「異才発掘プロジェクト」第一期生の個別発表会。小林さんは「他人と違うことを気にしなくていい、自分は変だけどそれも悪くないと思えるようになった」と語り拍手に包まれた。幼いころから興味ある事柄を突き詰めていく性格で、今関心があるのは再生医療。同世代とは話題が合わないが、無理をして合わせる時もある。

 学校の授業に物足りなさを感じていた時にプロジェクトを知り、「満足させてくれるものがあるかも」と応募した。幅広い事柄に興味があり専門を決められない自分とは逆に、絵や音楽、生物、コンピューターなど一つの対象に強くのめり込む仲間に出会い、驚いた。十五人中、女子は一人だけで初めは戸惑ったが、「自分よりもっと変」な人たちの中で、空気を読まなくて良い環境が楽になった。

 プロジェクトは今の学校教育を否定しない。突出した能力をつぶさないための試みだ。人間支援工学が専門のプロジェクトディレクター、中邑賢龍教授(59)は「今の社会は『アリの行列を眺めていたいから学校に行かない』と言う子は排除される。じっと見る時間がその子には必要なのに、要らぬちょっかいを出すからつぶれてしまう」と説明する。

 彼らの中には「自分は違う」と優越感もある。だから、一流を極める人の講義や一筋縄ではいかない活動で「君たちはすごくない」と挑発し、知的好奇心をさらに刺激する。小林さんのグループも、持ち手にシカの角を使ったナイフやフォークを作る活動で北海道に一週間滞在し、山に入るために乗る馬の世話に悪戦苦闘。最終日にやっと角拾いに行けた。

 発表会の翌日、第一期生への最後の授業で中邑さんは「物事を解決するにはいろんな道がある。うまくいかない体験でそう学んでほしかった」と伝えた。

 「学校を否定する子ほど『お手本はないの』と聞いてくる」と中邑さんは言う。プロジェクトが育てようとするのは、枠組みがなくても新たなものを生み出せるエジソンのような革新的な人材。学びの方法は一つでなく、お手本もないと知った子どもたちが、それぞれに秘めた能力を自ら伸ばして生きていける。そんな社会が理想だ。

(この連載は、神谷円香が担当しました)

 <異才発掘プロジェクト「ROCKET」> Room Of Children with Kokorozashi and Extraordinary Talents(志と突出した能力のある子どもたちの居場所)の略。能力はあっても伸ばせる十分な教育環境がない子に新しい学びの場を与えようと、日本財団と東京大先端科学技術研究センターが昨年末に立ち上げた。対象は小学3年〜中学3年で、第1期生には全国から601人が応募し15人が選ばれた。東大に月1回集まり、約1年にわたり講義を聴いたり、グループ活動をしたりする。毎年10人程度を選抜する。

 

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