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静岡連載

しずおかの学び2015 新たな挑戦<中>

◆特別支援学級 現状を知ってほしい

 大人数の集団は苦手だけど、ここなら伸び伸びと落ち着いて勉強できる。静岡市葵区の市立城内中学校にある自閉症・情緒障害の特別支援学級。一学級六人。二年生の田中冬馬(とうま)君(13)は、知的障害を伴わない自閉症の一つアスペルガー症候群と注意欠陥多動性障害(ADHD)があり、葵区の自宅から学区外の同校までバスで通っている。

 学ぶ内容は、普通学級と変わらない。十月中旬の理科の授業。担任の海野康仁教諭(58)は一人一人に電池と豆電球、アルミホイルを渡し「明かりをつけてみよう」と促した。電池にアルミホイルを巻いてみたり、振ってみたり。苦戦しながらも、回路を作るヒントをもらうと全員の豆電球がともった。「分かっちゃえば楽だよね」。田中君が納得した表情で笑った。

 城内中の特別支援学級の生徒は全校で二十三人。市内四十三中学校のうち、この学級があるのは七校だけで、最大規模の城内中に学区外から生徒が集まる。指導体制が充実した今は問題ないが、田中君が心配なのは卒業後の進路だ。

 進学希望だが、高校に特別支援学級はない。父親の孝佳さん(41)は「特別支援学校の高等部を、と周りに言われるが、知的や身体には問題がないので入れない。そもそも自閉症・情緒障害の学級で普通と同じ授業をしていると知られていないのでは」と話す。

 田中君は週二時間、集団での環境に慣れるため、普通学級の授業も受けている。だが普段一緒にいない人たちの中では落ち着かないし、うまく話せない。「自分でもどれくらい緊張しているか分からない。グループ学習もできなくはないし、だんだん慣れてはきた」。自分の学級に戻ると表情が和らぐ。

 県教委も「義務教育後も支援が必要な子は増えていく」と高校でも可能な個別支援はしている。

 しかし、対応する教育課程がない以上、単位認定や教員配置の予算をどうするかなど課題は多い。発達障害を知られたくなかったり、普通高校では皆と同じがいいと思っていたりする親もいて、単純な制度化は難しい。

 田中君のような生徒の選択肢は、全日制の普通高校が難しければ、自分のペースで通える単位制や定時制の高校に限られる。きめ細かな支援をうたう私立高校もあるが、費用がかかる。NPO法人「静岡県障害児教育の充実を願う会」の一員として、県や県教委に毎年、特別支援教育に関する要望をしている孝佳さんは自らに言い聞かすように話す。「こういう子もいると要望を聞いてもらっている。現状をすぐに変えられないのは十分承知している。まずは知ってもらうだけでも大きいんです」

 <自閉症・情緒障害特別支援学級> 情緒不安定のほか、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害で集団生活が難しい児童・生徒が通う。一クラス8人まで。発達障害の認知度が高まり在籍者が増え、6年前の文部科学省通知で、情緒障害のみだった名称が改められた。クラスの呼び名は各学校でさまざま。5月現在、国立・私立を含め県内小中学校での設置は273校、在籍者は1437人。

 

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