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静岡連載

走れ 大井川鉄道<下> 地域と共に

◆再出発 後押し必要

フェイスブックに開設された「大井川で逢いましょう」ではトーマス号や観光情報が満載だ=島田市湯日で

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 インターネットの交流サイト、フェイスブックで、大井川鉄道の蒸気機関車(SL)やきかんしゃトーマスの詳しい情報を掲載したページがある。その名も「大井川で逢(あ)いましょう」。昨年開設され、沿線の味覚や風景、観光情報などを紹介している。

 大鉄が運営したり、管理を委託しているわけではない。管理しているのは島田市で広告業などを営む「丸紅」。担当の常泉和臣さん(39)は「地域の人口が減る中、人を集める何か新しいことをしたかった」と話す。

 同社によると、閲覧数は通常一日一万五千回で、多い日には十五万回を数える。閲覧は国内からが九割で、残りの大半は台湾から。大鉄によると、四〜八月のSL乗客数十四万一千人のうち千四百人は少なくとも台湾からの観光客だった。

 台湾や中国、韓国との国際便も発着する静岡空港からSLが出発する新金谷駅までは車で十五分。常泉さんは「近くにある空港と大鉄とをもっとつなげる仕組みをつくるべきだ」と、空港からの誘客の必要性を強調する。

 島田市の主婦高城和子さん(36)は八月のお盆休みにトーマスに乗車した観光客を喜ばせようと、沿線で手を振る活動に取り組んだ。参加を呼び掛けるちらしをつくり、有志三十人が手を振った。川根本町青部で生まれ育った高城さんは故郷の人口減や衰退が心苦しい。「観光客は川根本町にとって大事なお客さん。気持ち良くもう一度来てもらいたいから、手を振りました」。高校まで通学で使った大鉄にも愛着は強い。

 地元には大鉄にあまり関心を寄せない住民もいる。大鉄は旧金谷町や旧川根町などを走る鉄道と受け止める住民も多く、特に合併前の旧島田市民に当事者意識が薄いためだ。

 大鉄と地元自治体の信頼関係が揺らいだこともある。大鉄は昨年二月、経営合理化策として、電車を十四往復から九往復に削減する三月からのダイヤ改正を発表した。沿線の島田市と川根本町に経営支援などを求める協議会の開催を要請したが、両市町はダイヤ案発表も支援要請も事前の相談がなかったと反発。昨年五月の第二回協議後、休止状態だった。

 北海道新ひだか町のホテル運営会社、エクリプス日高が新スポンサーに決まったのを受け、協議会は十月一日に再開する。大鉄の前田忍社長(44)から今後の経営方針を聞き、支援の方向性などを検討する。

 前田社長は、ホームでの地元産品販売や、沿線の茶畑での茶摘み体験など地元と連携した企画を打ち出している。島田市観光協会の松田茂和事務局長は「かつては金谷町の鉄道。今は合併し、島田市になった。市全体で考えるべきだ」と話す。大鉄の再出発に向け、地域全体での後押しが求められる。

 帝京平成大観光経営学科の寺前秀一教授(観光学)は「温泉などは多くの場所にあり、珍しくない。観光である限り、ほかにはない個性も必要。運営会社はその個性を考え出すことが必要になるだろう」と指摘する。

(この連載は池田知之が担当しました)

 

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