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静岡連載

走れ 大井川鉄道<中> 地域の足

◆本数減で乗客離れ

地域の足として期待されるも、電車の利用者は少ない=島田市の家山駅で

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 旧川根町の中心部に当たる島田市川根町家山地区にある大井川鉄道家山駅に千頭発金谷行きの電車が滑り込んできた。昼下がりのホームに降り立ったのは、勤務する温泉施設から帰宅途中の女性(35)一人だけ。車の運転ができないという女性は「電車の本数が減っているので出社や退社に合わせるのが大変」とぼやいた。乗客が少ないため運行本数を増やせず、ますます客が使いづらくなる。観光客以外がふだん使う大鉄の電車は、悪循環から抜け出せないでいる。

 大鉄の沿線は過疎地で、少子高齢化が進む地区が多い。運賃収入は観光客が乗る蒸気機関車(SL)が九割で、地元住民らが通勤通学などに使う電車による収入は一割にすぎない。経営合理化の対象となり昨年三月、電車の本数は十四往復から九往復に削減された。

 家山駅前の茶販売店長、朝比奈久代さん(68)は市中心部などへ向かう時、すぐ目の前の駅を使わず自動車を使う。とはいえ、運転免許を持たない高齢者や学生たちの移動手段も気になる。「電車の本数は増やしてほしいけど、大鉄にとっては費用対効果もあるから。難しい問題だね」と漏らす。

 朝比奈さんら家山地区の住民によると、昨年のダイヤ改正で始発の時間が遅くなり、高校生が朝の部活動に参加できなくなったり、浜松市の専門学校の始業時間に間に合わなかったりするようになった。家族らが車でJR島田駅近くまで送ることも増えた。

 島田市の北に位置する川根本町では交通問題はさらに深刻さを増す。同町の女性(64)は「車がないと自由に動けず、生活できない」と嘆く。同町の鈴木敏夫町長は「町民全員が車を持っているわけではない。大鉄には観光で収益を上げてもらい、電車の運行も続けてもらいたい」と要望。島田市の染谷絹代市長も「どんな支援ができるか考えたい」と話す。

 両市町は補助金などで直接の経営支援はしていないが、大鉄を利用する住民の運賃を補助する制度を設けている。一方で、コミュニティバスも走らせており、このバスが大鉄と競合する区間も。例えば、大鉄家山駅からJR島田駅まで鉄道を使うと運賃は千十円。一方、市が運営する無料バスとコミュニティバスを乗り継げばわずか二百円で行ける。住民サービス向上が結果的に大鉄の経営を圧迫してしまっている。

 こうした実情を踏まえ、観光だけの鉄道に特化してしまう考えも出てきている。観光学が専門の帝京平成大観光経営学科の寺前秀一教授は「運行は休日などに限定し、保守整備にも観光特例を認めてもらうなど徹底したコスト削減を考えるべきだ」と提言する。

 新たに大鉄のかじ取りを担う前田忍社長(44)は電車運行は取りやめない考えを示している。ダイヤ編成については、従業員や乗客に要望を聞き取るなどして再考中。「車の運転ができず電車に頼る人は多い。収益が黒字にならないのは事実だが、運行する責任がある」と地元の公共交通機関しての責務を強調する。

 

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