トップ > 静岡 > 地域特集 > 静岡連載 > 記事一覧 > 2015年の記事一覧 > 記事

ここから本文

静岡連載

走れ 大井川鉄道<上> 観光振興策

 蒸気機関車(SL)を定期便として走らせた国内でも先駆けの鉄道会社・大井川鉄道(大鉄、本社島田市)。ツアー客や沿線人口の減少による経営不振から脱却するため、ホテル運営会社「エクリプス日高」(北海道新ひだか町)が八月末、経営に参画した。収益改善に向け、地域と手を携えて走りだした新生・大鉄の再生への道筋と復活への課題を探った。

◆集客 トーマス頼み

トーマス号と写真を撮る人や、乗り込む人であふれる駅構内の通路=島田市の新金谷駅で(立浪基博撮影)

写真

 九月半ばの土曜日。大井川鉄道新金谷駅(島田市金谷東)のホームは観光客であふれていた。昨年度運行を始めたSL「きかんしゃトーマス号」が汽笛を鳴らし煙を吐くと、子どもたちが興奮気味に歓声を上げた。東京から長男(6つ)と初めて訪れた会社員の男性(36)は「とてもかわいいSL。子どもだけでなく、大人も楽しめそう」。駐車場には関東方面や名古屋、大阪ナンバーの車もあった。

 露天風呂から鉄橋を渡るSLを望める島田市川根町の温浴施設「川根温泉ふれあいの泉」はトーマスのおかげで利用客が増えた。鉄橋そばでは鉄道ファンが盛んにカメラのシャッターを切っている。

 トーマス効果に沸いているように見えるが、地元の島田市や川根本町への経済波及効果は今のところ限定的だ。新金谷駅と千頭駅(川根本町)を往復するだけの客が目立つ。島田市には、SL目当ての観光客が足を伸ばして立ち寄るほどの名所は多くない。川根本町でもにぎわっているのは千頭駅周辺の土産物店や飲食店などに限られる。

 島田市や島田商工会議所などは七〜八月、世界最長の木造歩道橋「蓬莱(ほうらい)橋」など、市内の周遊を提案しようと、スタンプラリーを大鉄の利用者ら向けに実施。新金谷駅の売店や市内コンビニ店でパンフレット一万部を配った。四カ所を回る企画で、ホテル宿泊券やSLグッズを看板にしたが、応募は百九十二人で、うち市外は七十九人にとどまった。市観光課の担当者は「予想より応募は少なかった」と話す。

写真

 大鉄の乗客数のピークは一九六七(昭和四十二)年度で三百八十三万五千人を数えた。沿線の過疎や自家用車の普及で次第に減少。経営改善策として七六年にSLの運行を始めると、鉄道ファンや観光客らの注目を集めるようになった。

 全体の乗客数減が進む中、SLの運賃収入が収益の九割を占めるようになっていった。二〇一〇年度は乗客数八十万七千人のうち、SLの乗客が二十六万一千人だった。東日本大震災の影響で一一年度はSLの乗客が二十二万五千人に落ち込んで赤字に陥ったものの、一四年度はトーマス効果で二十七万二千人と盛り返し、四年ぶりの黒字に転じた。

 英国の企業が持つトーマスのライセンスは一六年度まで。エクリプス日高から就任した前田忍社長(44)は「相手側とは継続的な関係を構築したい」と決意を語る。同時に「経営も見直し、トーマスに頼らないようにする」とも強調し「沿線に多い茶畑での茶摘み体験など、地域の良さを体験できるツアー作りを地域住民と連携して進めたい」と話す。観光鉄道を強化しつつ、経営再建を図れるか。新たな事業展開が再生の鍵を握る。

(この連載は池田知之が担当します)

 <大井川鉄道> 1925(大正14)年の設立で、静岡県中部の大井川に沿って運行する。本線は金谷−千頭(せんず)間の39・5キロ、井川線は千頭−井川間の25・5キロ。今年3月末時点の有利子負債は約35億円。年間約8000万円の利払いが大きな負担となり、政府系の地域経済活性化支援機構(東京)から支援を受け、静岡銀行などの金融機関に債務免除を求めて経営再建を図る。8月末、筆頭株主だった名古屋鉄道が経営から撤退し、エクリプス日高が新スポンサーになった。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

中日新聞しずおかの記事はこちら

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索