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[河野しんぶん]御前崎クエ 食べなきゃ損

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◆こわもてでも歯応え、うま味満点の白身

脂が乗ったクエの姿造り=御前崎市池新田の荒磯で

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 御前崎市の海でかつてよくとれた「家老」と呼ばれるクエ。高級魚ゆえ、家老ぐらいの格でないと口に入らないからとか、こわもてのためとか、由来は諸説あるそうだ。全国で初めて孵化(ふか)から育成までの完全養殖に成功し、地域ブランド「御前崎クエ」として売り出されて十年ほど。近年は成長が遅くなって数が出回らないとか。市特産の味覚・クエ養殖の現場を訪ねてみた。

◆提供は11〜3月

 まず磯料理店「荒磯」(同市池新田)で五千五百円のクエづくしコースを注文した。姿造りに鍋、えらのから揚げ、肝豆腐と次々並んだ。肉厚で歯応えのある白身はうま味たっぷり。いずれも納得の味わいで大いに満足した。

 御前崎クエ料理組合長で店主の大石勇さん(67)は「クエは鍋にするとおいしいから、提供時季を十一月から三月にしている。御前崎クエを食べたいと、県外からも人が来てくれる」と話してくれた。

◆完全養殖に成功

 御前崎クエ料理組合によると、天然物の漁獲量はこの二十年で十分の一ほどに急減したが、県温水利用研究センター(同市佐倉)が二〇〇五年に完全養殖に成功したのを機に、市と市商工会などが研究を重ね、「天然物と遜色ない」と市特産の味覚として売り出すようになった。一キロ一万円前後とされる天然物に比べ、養殖は価格を抑えられ、料理組合に加盟する十店ほどが提供している。

 研究センターは、隣接する中部電力浜岡原発の温排水を利用してクエを養殖してきた。温排水は原発でタービンを回した蒸気の冷却に使った海水。周辺の海水より七度ほど高いため、卵から稚魚を育て、成長した親魚から卵を採るサイクルを確立させた。

◆原発停止が影響

養殖しているクエを手にする石原進介さん=御前崎市の県温水利用研究センターで

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 センターの渥美敏所長と生産担当主任の石原進介さんは「養殖が非常に難しい魚」と語る。病気になりやすく稚魚のうちに大量に死んでしまう。本来はみな雌で、重さ二〇キロを超すと、一部が性転換して雄になり、群れのリーダーとしてハーレムをつくる。その雄の確保も困難だという。

 二年間ほど育てて、重さ一キロに達したクエを料理組合に出荷してきたが、状況が一変したのが一一年五月だった。政府の要請で原発が全炉停止し、毎日一万五千トン届いた温排水が止まり、育成に欠かせない水温の調整ができなくなった。クエの成長が遅くなり、出荷までに三年かかるようになった。

 料理組合には毎年、八百匹を提供する約束だったが、この三年ほどは七百匹にとどまっている。飼育量を増やそうにも、水槽の容量に限度があり、これ以上は無理だという。

◆供給安定道半ば

 ただ、光明も見えてきた。石原さんは「温排水がない状態で育てるノウハウが少しずつ分かってきた」と語る。クエに与えるストレスを減らすために魚体に触れる回数を少なくしたり水槽に身を隠す岩を入れたりして試行錯誤し、養殖環境を改善しているという。

 料理組合事務局を兼ねる市観光協会の小野木邦治事務局長は「課題は安定供給。旅行会社に売り込んでも、売り切れでは申し訳ない。地域ブランドを途絶えさせないために、その方法を考えていかなくては」と新たな一手を思案している。

 クエの提供は三月三十一日まで。(問)料理組合=0548(63)2001

 <クエ> 大物は体長1メートル、重さ50キロを超えるハタ科の海水魚。温かい海を好み、主産地は四国や九州など南日本。かつては水族館の主役で、水槽の底にどんと構える姿を見られた。地域によってアラやモロコなどと呼ばれる。

 河野貴子(こうの・たかこ) 菊川・御前崎通信部勤務。静岡おでんや森町のトウモロコシと柿、袋井のたまごふわふわなど、勤務地ごとに名物を堪能してきた。御前崎産のクエを共に味わった計六人のうち、五人が初体験だった。こんな美味を知らないなんて、もったいない。

 

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