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名前しんぶん

[末松しんぶん]官房長官を追及する本紙記者

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 最近、担当している浜松市役所の職員に「望月さんって知っている?」とよく聞かれる。そう、菅義偉官房長官に粘り強く質問する姿がテレビやインターネットで広まり、一躍有名となった東京新聞社会部の望月衣塑子記者だ。筆者は初任地の千葉支局で、一年先に赴任していた望月記者と県警回りをともにした。そんな縁からこちらにご登場を願った。

 −官房長官の会見に出るようになったきっかけは。

 望月 第一次安倍政権による二〇〇六年の教育基本法改正は、愛国心や道徳を重視し、ナショナリズムを前面に押し出す形に変わった。一四年には武器輸出を原則禁じていた「武器輸出三原則」を撤廃し、輸出促進にかじを切った。国の形が大きく変わる危機感を抱いた。

 そこに、政権による不公平な行政手続きがあったのではないかという、森友学園や加計学園の疑惑が出てきた。政権の不正は夜討ち朝駆けの取材で関係者の声を拾って暴く方法もある。しかし今は子育てをしており、そういう仕事のやり方はできない。それなら正面切って政権のスポークスマンに、取材で感じた疑問の答えを聞き出そうと思った。

 −官房長官に「問題ない」「指摘はあたらない」などとかわされる場面も多いが。

 望月 同じ答えを繰り返し、何も答えない政府の姿勢を国民に見せることが必要だと思う。政治部の記者は「問題ない」と言われると、慣れと諦めで引き下がるかもしれない。けれど社会部の記者は答えを聞くまで、手を替え品を替えて追及する習慣が身についている。ようやく、ここまで聞いていいのかという雰囲気ができつつある。

「政権への怒りが原動力」と話す望月衣塑子記者。手前は筆者=東京都千代田区の中日新聞東京本社で

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 −質問が長いとの批判的な意見もある。

 望月 初めて質問を聞く人を想定している。記者も含め誰が聞いても質問の意図が分かるよう、経緯などを補足して質問している。でも謙虚に受け止めて、短くするよう工夫したい。

 −同じ記者だから分かるが、相手を敵に回すような質問はエネルギーがいる。ネット上で中傷する書き込みもある。その原動力は。

 望月 怒りですかね。社会部の記者は疑惑を取材していると「何でこうなるんだ」と怒りを膨らませていく。菅さんが「文書がない」と言っても、あることは分かっている。「日本は法治国家ですから」と口癖のように言うが、文書がないのが法治国家かと言いたい。

 四月にがんで急逝した母の影響もあるかもしれない。国家権力に批判的な目を向けていた母の怨霊が私の背中を押してくれている感じがする。同業他社で働く夫のアドバイスや励ましも、踏ん張れるひとつ。自分の疑問が解けるまで質問を続ける。

 もちづき・いそこ 社内で「モッチー」の愛称で親しまれる。千葉などの県警、東京地検特捜部を担当し、主に事件、裁判を取材してきた。現在は軍学共同、加計学園疑惑に関心を持つ。2人の子どもと遊ぶのが至福の時。著書に「武器輸出と日本企業」「武器輸出大国ニッポンでいいのか」がある。東京生まれ、42歳。

◆編集後記

 他社の記者も含めて知る限り、望月記者はナンバーワンの特ダネ記者だ。取材先に食い込んで得る情報が並外れている。だから仕事への貪欲さは計り知れないが、どこか憎めないチャーミングな一面がある。

 今回も「加計や森友問題を追う記者仲間に官房長官の会見に行こうよと誘っているけど、誰も来てくれない。私ってどこかねじが外れているんだよね、きっと」と笑って話す姿が印象に残った。

 末松茂永(すえまつ・しげなが) 大学卒業後、保険会社に就職するも間もなく退社。大学まで続けたラグビーを忘れられず、ニュージーランドへ渡り、現地のクラブで2年間プレーする。帰国後に記者となり、事件取材を長く担当してきた。余暇は磯釣りにスキー、最近はゴルフと経験者の妻に教わりながら卓球を楽しむ。

 

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