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[林しんぶん]浜松の給食だけ? ジサンベーハン

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◆導入理由は謎 約40年続く

色とりどりの容器に詰めて家から持ってきたご飯を手に「いただきまーす」と大声であいさつする児童たち=浜松市北区の初生小で

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 「ジサンベーハン」ってご存じですか? 私は初めてこの言葉を聞いたとき、何かの呪文かと思いました。実は漢字で「持参米飯」と書きます。「なーんだ」と納得した方。これ、浜松だけの常識ってこともご存じですか?

 浜松市内の小中学校では、週三回ある米飯給食のうち、一回は家庭で炊いたご飯を持ってくることになっている。これが持参米飯。もっとも「市内」といっても、合併前の旧浜松、浜北市、そして雄踏町の学校だけの仕組みだ。

 浜松市教育委員会によると、旧浜松市で持参米飯が始まったのは一九七八(昭和五十三)年。食の多様化で余りがちになったコメの消費を増やそうと、国が学校給食に米飯を位置付けたのが七六年だから、ほぼ当初から続いていることになる。

 なぜ家から持ってくることにしたのか。担当者は「ちゃんと食べたかどうかを見て、家庭が子どもの健康状態を把握できる」「子どもが家族への感謝の気持ちや、食への関心を持つようになる」などと狙いを説明する。でも、どれも後付けのようだ。三十九年前の導入当時の理由は「今となっては分からない」と首を振る。

◆食べ残し少なく

 現場を見ようと、浜松市北区の初生(はつおい)小学校を訪ねた。こちらは毎週火曜日が持参米飯の日だ。給食の時間になると、児童がロッカーや手提げ袋から大小色とりどりの容器を取り出してきた。中には白いご飯。ギュウギュウ詰めの子から、三口ほどしかない子まで、量もさまざまだ。

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 学校栄養職員の間渕典子さんが意外な話を教えてくれた。「持参の日はおかずを残す子が少ないんですよ」

 ほかの米飯の日は、学年別に決まった量のご飯が一人分ずつ出されるため、食べきれない子がご飯やおかずをよく残すのだという。

 効果の一端は分かった。でも、給食費を払っているのに、家庭でご飯を用意することに疑問の声はないのだろうか。

 市教委の担当者にぶつけると「ほとんど聞かない」という答えが返ってきた。今の親世代が持参米飯の経験者のため、当たり前に受け止める人が多いようだという。

 また、給食費は「持参の有無で差をつけている」と明かす。詳細は表の通りだが、米飯を業者から調達する「委託炊飯」の地域でも、持参米飯のある地域は、ない地域より安い。

 一方、学校や給食センターでご飯を炊く「自校炊飯」の地域は、委託コストがない分、さらに安い。

◆磐田市の豊岡地域も実施

 他に持参米飯をしている市町はあるのだろうか。県教委は「把握していない」というので、片っ端から電話してみた。結果、磐田市の豊岡地域の小中学校でも実施していることが分かった。しかも、週三回すべてだ。

 磐田市教委によると、旧豊岡村では米飯給食が制度化された七六年、当時の村長が「親子の愛情を育てるのに最適」と、村単独で持参米飯を始めた。熱々のご飯がお昼も食べられるようにと、各校に保温庫まで備わっているという。

 それ以外の市町は、全て自前で炊飯するか、業者から調達していた。浜松の持参方式を伝えると「知らなかった」「そんなのあるんですか」という反応だった。やはり、珍しいことは間違いないようだ。

◆パン派には負担

 実際のところ、ご飯を持たせる親の側の意識はどうか。旧浜北市出身で、小学四年の子どもがいる東区の女性は「自分が子どもの頃からあったので、当たり前だと思ってきた。でも、負担といえば負担よね」と話す。

 中学三年と一年の子を持つ兵庫県出身の西区の女性は「カルチャーショックだった」と振り返り、「家では朝は大体パンだから、今でもご飯を炊くのを忘れるときがある。給食費が多少高くても、学校で出してくれた方がいい」と本音を漏らす。

 浜松だけのジサンベーハン。ユニークな伝統ではあるが、必要な理由や狙いを再度、市民に問い掛ける必要がありそうだ。

 林知孝(はやし・ともたか) 健康のために家では玄米を食べることが多い46歳。最近はお得な玄米が見つからず、白米を買って食べているが、持参米飯の日に子どもが「きょう白米? やった!」と喜ぶのを見ると複雑な気分になる。

 

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