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名前しんぶん

[古檜山しんぶん]箱根の山、なめてました

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◆憧れの駅伝・5区走る

芦之湯付近を走る。既に歩くようなペースになっている(自転車で通りがかった人に撮影してもらった)=神奈川県箱根町で

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 縁もゆかりもないけれど、箱根駅伝が大好きだ。選手の懸命に走る姿や仲間を思う心に感動する。風光明媚(めいび)なコースや区間配置の駆け引きなど、他の駅伝にない魅力もたまらない。でも「選手のつらさを知らずしてファンを語れるのか」。そんな思いと、コースを走ってみたいという憧れに駆られ、大型連休の五月初旬、五区のスタート地点の小田原中継所(神奈川県小田原市)に立った。

 五区は二〇・八キロの山道のコース。選手らの平均タイムが最も遅く、攻略が難しいとされる。しかし、どうせ走るなら駅伝の象徴の山に挑みたい。そう心に決めていた。

 大学卒業以降、運動はしていないが、持久走は苦手ではなかった。今年の区間賞が1時間12分強だったことを考えると、倍くらいのタイムで走りたいと、二時間半を目標に定めた。リュックにカメラや水などを詰め込み、午後一時に中継所をスタートした。「山の神に、俺はなる」

 走りだして一キロにも達しないうちに、その困難さを知った。日ごろの運動不足がたたって足が重たい。休まず走り続けたいと思っていたが、軌道修正した。完走を優先し、歩きを交えながら進んだ。

 中継所から二十二分で、最初の定点ポイントである箱根湯本駅に着いた。選手たちは中継所からここまで、八分ほどで到達する。速すぎる。

国道1号最高地点を示す看板。ここから芦ノ湖畔までは高低差約150メートルを下る=神奈川県箱根町で

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 観光客が多く、とても走れる状況になかった。これ幸いにと歩いて体力を温存し、箱根湯本を抜けると再び走り出した。本格的な上りが始まり、いよいよ勾配がきつくなった。民家がほぼなくなり、青々とした新緑の木々に囲まれた峠道を駆けた。

 函嶺洞門(かんれいどうもん)を通過し、次の定点ポイントの大平台のヘアピンカーブを目指した。徐々に歩きの頻度が増えてきた。歩道がない所が多く、車が横を通り過ぎるときは走りにくかった。

 大平台に到着したときには既に一時間が経過し、大幅に設定タイムより遅れた。選手たちは中継所からここまで、二十分強でたどり着く。一時間といえば、もうフィニッシュ近くまでたどり着いている計算になる。恐るべしだ。

◆空耳の声援励みに「完走」

 再び走り始め、宮ノ下の温泉街に差しかかった。ここは選手が通過する際、沿道から学校名でなく選手一人一人の個人名で熱い声援が送られる地点だ。「こひやま、こひやま」と聞こえた気がしたが空耳だった。

自動車が迫ると走りにくく、交通整理をする人のありがたみが分かる=神奈川県箱根町で

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 次の目標は小涌(こわき)園。この辺りの勾配が最もきつく、ほとんど徒歩になった。上っても上っても坂が続いた。それでも歩を進め、国道1号の最高地点のある芦之湯に着いた。東洋大卒の元山の神・柏原竜二さんにイメージを重ねながら給水した。

 一転下りに入ると、スピードが乗って楽しかったが、疲れ切った脚には一歩一歩の着地の衝撃がずしっと響いた。程なくして、眼前には芦ノ湖が広がった。

 湖畔の元箱根に着くとゴールは目前。何とかフィニッシュ地点にたどり着くと、思わずガッツポーズが出た。既にスタートから三時間半がたとうとしていた。

 道中、何度も「途中棄権」の四文字が脳裏をよぎったが、駅伝の名シーンを思い出し、自分に重ねながら進んだ。テレビで見るスポットを通るたびに力をもらい、何とか完走できた。タイムは遅いが、充実感は何とも言えないものだった。来年の大会が待ち遠しい。

 魅力あふれる駅伝だけに、静岡をはじめ全国の大学にも門戸を開いてほしい。

 <箱根駅伝> 正式名称は、東京箱根間往復大学駅伝競走。関東地方の大学が参加し、一九二〇年から戦時中を除いて毎年開かれ、二〇一七年で九十三回を数える。東海道に沿うように、東京・大手町−神奈川県箱根町・芦ノ湖を二日間で往復する。一月二日が往路、三日が復路。計十区間217・1キロで、一つの区間が二十キロ超とハーフマラソンとほぼ同距離。中でも往路の五区は、小田原から芦ノ湖まで国道1号をたどり、標高差八四〇メートルを一気に駆け上がる通称「山上り」で、エース区間の「花の二区」と並ぶ看板区間。多くの逆転劇が繰り広げられ、ここで劇的な活躍を見せた選手は「山の神」と呼ばれることがある。

 古檜山祥伍(こひやま・しょうご) 大学まで愛知県で過ごした入社4年目の25歳。箱根駅伝とつながりはないが、子どものころから正月はテレビにかじりついてきた。今は録画もする。これを見ないと1年が始まらない。ランナーの一生懸命な姿に、時々もらい泣きをする。

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