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名前しんぶん

[鎌倉しんぶん]「聖地巡礼」 ファン熱く

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◆沼津舞台 ラブライブ!サンシャイン!!

JR沼津駅から内浦地区方面へ出発する、アニメのイラストがあしらわれたラッピングバス=JR沼津駅前で

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 アニメ作品の舞台となった地域をファンが実際に訪れる「聖地巡礼」。その舞台の一つ、沼津市の内浦地区が今多くの若者でにぎわっている。彼らを突き動かすものは何なのか。いまひとつ理解できないでいたが、それならばと、現地に乗り込んで魅力を探ってみた。

◆押し寄せる若者

 大型連休が始まった四月下旬、JR沼津駅前で路線バスを待った。現れたのは車体に「萌(も)え絵」の女の子が描かれたラッピングバス。カメラを持った若者が続々と乗り込んでいく。「これに乗るのか…」と少し気恥ずかしかったが「ええい、ままよ」と飛び乗った。

 駿河湾の最奥部に面した内浦地区が主な舞台の作品「ラブライブ!サンシャイン!!」。統廃合が危ぶまれる架空の女子校「浦の星女学院」に通う九人が、アイドルグループ「Aqours(アクア)」を結成し、学校や町を盛り上げる物語だ。昨年七〜九月にテレビ放映され、今秋にも続編が始まる予定だ。

◆国境をも越えて

神社の境内に飾られている、アニメファンたちが奉納した絵馬=沼津市内浦重寺の淡島神社で

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 バスが市街地を抜けると、車窓に美しい海岸線が見えてきた。三十分ほどかかって着いたのは、岸辺の目と鼻の先に浮かぶ淡島(あわしま)。水族館やレストランなどがあるが、ファンの狙いは作品の中でメンバーがトレーニングをする場所として描かれる淡島神社だ。

 連絡船で島に渡って神社までの山道を息を弾ませて登り、約二十分かけて境内に着くと、アニメのイラストが描かれた絵馬が大量に飾られていた。

 そこで出会った韓国・釜山(ぷさん)から来たというヨ・サンヒョンさん(22)は「韓国でもラブライブ!は大人気。絵馬には『アニメの続編おめでとう』と記しました」と流ちょうな日本語で話してくれた。なんでも、作品をきっかけに日本語を勉強したとか。「どうしてそこまで」と驚いたが、ヨさんはお構いなしに作品について熱く語り続けた。ファンの思いは国境を越えるのだ。

◆太宰もびっくり

 次に向かったのは海辺にたたずむ「安田屋旅館」。太宰治が小説「斜陽」を執筆した宿として知られるが、作品の主人公・高海千歌(たかみちか)の実家のモデルにもなっており、放映以降、宿泊客数が倍増中。まさか太宰もこののどかな旅館が将来、アニメのファンでにぎわうことになるとは思っていなかっただろう。おかみの安田麻紀さんは「スタッフみんなで作品を見て勉強しています」とノリノリだった。

外国から来たアニメファンが、自身の住まいに印を付けることができる張り紙=沼津市内浦長浜の三の浦総合案内所で

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 そこから歩いて二十分ほどの「三の浦総合案内所」。放映前までは一カ月に数百人が訪れるだけの観光案内所だったが、今は五千人以上が押しかける集会所と化していた。ポスターやフィギュアなどが飾られ、壁には「どちらからいらっしゃいましたか」という文言とともに、ファンらが自分の住所地にシールを貼ることができる日本地図や国旗のマーク集が掲げられていた。そこには、沖縄から北海道までシールが満遍なく貼られ、ロシアや中国、英国から訪れた人もいることがうかがえた。

◆「体験」を求めて

 作品では、内浦地区の美しい景観をはじめ、海岸沿いに並ぶ店舗や、道路標識までもが細かく忠実に描かれている。

 ドラマや映画のロケ地めぐりと同じように、アニメのファン文化も以前からあったが、ここ数年で注目を浴びるようになったのは、デジタル技術の発達とともに、実際の景観を模写したような背景画が描かれたり、実在する地域をモデルにしたりする作品が増えてきたからだ。内浦地区で出会った若者からも、モデル地への強いあこがれが感じられた。

 そんな体験型の消費志向は、現代の若者の特徴ともいえそうだ。スマートフォンを片手に会員制交流サイト(SNS)に写真や動画を投稿するファンの姿は、自動車や時計などの「モノ」には疎いが、趣味の合う仲間と共有できる思い出や感情などの「コト」に出費を惜しまない傾向が表れている。

 帰り道の三津(みと)海水浴場で、写真を撮影していた神戸市の大学生、斉藤美桜里さん(19)が「海の美しさや人の温かさは、実際に来てみるとアニメ以上だった」と話した。「アニメなんて虚構の世界」と考える人もいるだろうが、ファンたちは聖地巡礼でしっかりと「本物」に出会っていた。穏やかな駿河湾を眺めながら、そう感じた。

 鎌倉優太(かまくら・ゆうた) 南国・宮崎県日南市生まれの記者二年目、二十四歳。今回の取材にあたり、「ラブライブ!サンシャイン!!」を鑑賞し、一夜漬けで勉強しました。取材中、沼津市内浦地区の美しい海岸線を見て、故郷の日南海岸を思い出し、ノスタルジーを感じました。

 

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