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名前しんぶん

[松野しんぶん]お茶摘み 甘くない

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◆本場静岡で体験ツアー参加

もえぎ色の茶畑で茶摘みを体験する記者(右)=静岡市葵区牧ケ谷で

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 「茶摘み、やってみたら?」。このコーナーの締め切りが迫り困っていると、上司が助け舟を出してくれた。手渡されたのは、以前からファンだった茶菓子店「雅正庵(がしょうあん)」(静岡市駿河区)が主催する茶摘みツアーのチラシ。あわよくば、好物の「お茶生さぶれ」がもらえるかも! 不純な期待を胸に人生初の茶摘みに挑戦した。

◆イッシンニヨウ

 突然ですが、「イッシンニヨウ」ってご存じですか? 妖怪の名前みたいだけれど、実はこれ、新茶摘みの基本。漢字で書くと「一芯二葉」。先端のまだ開いていない「芯」とその下の若葉二枚だけを摘むため、柔らかな甘みが引き立つお茶になるそうだ。

 静岡市葵区の茶畑で、籠を持って畝間に入ると、気分はすっかり茶摘み娘。指の腹で茎をつまんでそっと前に引くと、プチッという感触があった。「簡単やん!」と調子に乗ったのもつかの間。中腰で採り続けること二十分余、籠の中の茶葉の量に比例し、腰の痛みが…。今年の初取引で史上最高値の一キロ百八万円を記録した高級茶は、全て手摘み。信じられない額だけど、値段の裏にある苦労に少しだけ触れられた気がした。

◆大型機械の工場

茶葉の加工について参加者に説明する森良之さん=静岡市葵区小瀬戸で

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 続いて案内されたのは、近くの茶農家森良之さん(72)の荒茶工場。摘み取った茶葉を蒸したりもんだりして加工する所だ。今年は春先の気温が例年より低く茶の収穫が遅れており、まだ稼働していなかったが、大型の機械が何台も並ぶ様子は圧巻だった。

 森さんは二代目。約一ヘクタールの茶畑を自ら開拓し、父親から受け継いだ茶工場を一億円以上かけて大型化したという。「ベンツが十台は買えるね」と誇らしげに話してくれた。

 その表情が曇ったのは、後継ぎの話に及んだ時。「俺の代で終わりだな。やれるだけやるけど、今の茶の値段ではとても持たない」

 二〇一一年三月の福島第一原発事故の後、茶葉の価格が暴落し、今も戻らないそうだ。「一度下がった値はなかなか戻らない。娘も東京に嫁いだし、しょうがないね」。声に、寂しさがにじんでいた。

◆零下25度

零下25度の冷凍庫に入って凍えるツアー参加者ら=静岡市駿河区向敷地で

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 ツアー終盤に案内されたのは、雅正庵を営む製茶問屋「小柳津清一商店」の大型冷凍庫。「どうぞ」と促されるが、寒さで足が進まない。マイナス二五度の世界。「さむ〜い」と凍える参加者を撮影しようとカメラを構えたが、手が震えてぶれてしまった。

 「お茶は摘んだ後も生きています」と説明してくれたのは、案内役の日本茶インストラクター石川茜さん(34)。常温では水が染み出るなどして質が落ちるため、茶葉は冷凍庫保管が最適という。

 私が摘んだ茶葉も、ツアー終了まで冷凍庫で保管してくれていた。出来たての新茶と大好きなお茶生さぶれをお土産でもらい、大満足のツアーだった。

 ペットボトル茶の普及などで、茶葉の消費量は落ち込みが続いている。でも、石川さんが急須で淹(い)れてくれた新茶は、ペットボトルでは味わえない香りや甘みがあった。

 小柳津清一商店ではお茶のおいしさを知ってもらおうと、新茶摘み体験ツアーを随時受け付けている。六月三十日まで、日祝は休み。希望日の十日前までに五人以上で申し込みを。

 問い合わせは、商店=電054(259)6775=へ。

 松野穂波(まつの・ほなみ) 大阪市出身の27歳。記者6年目。自宅にたこ焼き器はあるが、急須はない。静岡総局に来てから頂いた茶葉がたまっており、さすがに購入を検討している。帰省する際のお土産は「お茶生さぶれ」と「うなぎパイ」。

 

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