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イチ推し

若手「海保女子」が奮闘 下田海保の佐々木さん

◆火災事故、密漁監視、解剖補助…経験積む

巡視船の係留ロープを手に取る佐々木七海さん(左)=下田市の下田港で

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 下田海上保安部(下田市)に、はつらつとした若手女性海上保安官がいるという評判をキャッチした。入庁三年目の佐々木七海(ななみ)さん(21)は宮城県名取市出身で、二〇一一年三月の東日本大震災で被災した経験から海保の仕事を志したという。話を聞くと、一般の人にあまり知られていない海保の仕事や奮闘ぶりが伝わってきた。

 佐々木さんが「海保女子」を目指したきっかけは、中学二年の時の東日本大震災だった。名取市の自宅や家族は無事だったが、友人が亡くなったり、家が津波で流されたりした。その時、海上保安庁や自衛隊の職員が被災地に赴き、支援してくれた姿に感謝と憧れを抱いた。「震災で自分は何もできなかった。人の役に立つ仕事をして恩返ししたい」と思うようになった。

 高校時代は理系の大学進学を目指したが、受験に不合格で浪人するか悩んだ末に大学を諦め、海上保安庁を目指して公務員試験の勉強を始めた。採用試験に合格後、海上保安学校(京都府舞鶴市)に入校。寮生活で刑法や逮捕術、銃の扱いなどを一年間学んだ後、一七年四月に下田海保に配属された。現在は巡視船「かの」の航海士補を務める。

 巡視船では見張りや操船などを担う。四月に西伊豆町の港で発生した加山雄三さん所有のクルーザー「光進丸」の火災事故でも深夜に緊急出動し、港沖に停泊した巡視船から小型搭載艇に乗り込み、炎上中の光進丸に接近して現場写真を撮影した。

 若手に経験を積ませる海保の方針のもと、海上に限らず多くの業務に携わる。管内の海岸でイセエビやアワビなどの密漁の取り締まりに当たることも。佐々木さんは密漁者に物腰柔らかく冷静に職務質問を重ねて行為を認めさせ、同行した先輩職員を感心させた。

 海上で見つかった遺体の司法解剖では、警察のように医療機関に全面的に委ねるのではなく、海保には解剖を補助する業務がある。七月中旬に下田管内で行われた解剖に立ち会う若手を募ったところ、佐々木さんは真っ先に手を挙げて周囲を驚かせた。初体験で動揺したが、記録用の写真撮影の任務をやり遂げた。

 佐々木さんは「子どものころから負けず嫌いで、何でもやってみたいという思いが強い」と話す。制服の胸ポケットに忍ばせたメモ帳には先輩からの助言が細かく書き込まれてある。下田海保幹部は「女性で体力的な差はあるが、前向きに知識を吸収して戦力になっている」と目を細める。

 七海の名は「海が好きな両親が太平洋、大西洋、地中海など『世界の七つの海』にちなんで付けてくれた」と佐々木さん。将来の夢は「国際捜査官になりたい」と目を輝かせる。ロシア、韓国、中国語などを駆使して海上での外国人犯罪を捜査するスペシャリストだ。その名の通り、国際的な活躍を思い描いて日々の任務に当たる。

◆全国に982人 10年前の2倍

 海上保安庁によると、1979年から女子学生の採用を開始。今年4月時点で、全国の海上保安官約1万4000人のうち、女性は育児休暇中の64人を含む982人。約7%だが10年前の2倍で増加傾向にあるという。船舶の乗組員や国際捜査官、パイロットのほか、女性保安部長や巡視船の船長も誕生している。

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中谷秀樹記者(熱海通信局)

 前任地の三重県鳥羽市も鳥羽海上保安部があり、海保に縁がある44歳。ほんわかした印象がある佐々木さんだが、高校時代に陸上部の長距離で頑張ってきたといい“男前”の一面もある。ハキハキした話しぶりで、海上保安官の仕事の中身が伝わってきた。

 

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